農業協同組合新聞 JACOM
   

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論壇
総合性は維持できるか!?


 今年はJA全国大会が開催される。
 それに向けて全中を中心に検討がすすめられてきた組織討議原案が固まり、各県、各農協での議論が開始される段階に入った。
 偽装表示や無登録農薬使用など、食の安全・安心を揺るがす事件が発生し、農協をめぐる環境は厳しさを増している。そのような折から、何が全国大会での中心議題になるかが注目を集めている。
 組織討議原案は「JA改革の断行」を基本テーマとし、特に経済事業の抜本的な改革を大きな課題として掲げている。その問題意識は2つあるようである。
 ひとつは、経済事業の競争力の低下である。これは、農産物の販売市場や生産資材・生活関連事業などでの環境変化への対応に、農協が遅れをとったことによるものであり、それが農協離れや農協批判の一因となっているという。具体的に考えれば、競争力の低下とは組合員の利用が芳しくないということであり、他に競り負けしていることを意味する。
 もうひとつは収支問題である。
 金融環境の変化により、これまでのような信用・共済への収支依存が難しくなったため、経済事業の収支改善が必要になるという。また、これを行なわないと、総合事業体としての機能発揮が難しくなることもありうるという。これは、部門別損益上からは長年指摘されてきた問題であり、確かに経済事業は赤字部門となっている。
 
◆事業の相互寄与度をどうみるか

 これら2つの問題意識は、個別にはわかるものの、両者を統一的に理解することは難しい。というのは、経済事業が独立採算制を強めようとすればするほど、組合員の利用にとってマイナスとなりかねないからである。たとえば、収支をよくするために手数料率を上げれば利用それ自体が減るだろうし、赤字の事業や店舗を廃止したとたん、全体の赤字幅が拡大することもありうるからである。
 また、事業の相互寄与度をどのようにみるかという、古くからの問題に決着をつけることも必要となる。たとえば、農産物の販売代金が入ることが農協貯金の増加につながっている。その部分はコストがあまりかからない資金吸収手段になっている。したがって、それを販売事業の貢献部分として評価し、配分すべきである、という主張は成り立つ。
 逆に、信用事業からは、資金決済手段を提供していることが、販売事業の利用につながっている、という主張もありうる。実は、このような議論が何度となく繰り返されてきた。今回は、議論の時代は終わったと言っているようにもみえる。農協の経営にとって待ったなしの問題であるという危機感が、その背景にあろう。

◆大切にしたい「全体」への目配り

 今、問題となっているのは、農業の総合事業性が今後とも維持できるかどうか、であろう。「世界に冠たる」わが国の農協の事業面での特徴のひとつが総合事業性であることを否定する人はいない。世界に冠たるとは、信用事業を合わせて行なうという意味での総合事業性をもつ農協があるのは、わが国だけといってもよいからである。
 最近、総合性を考える際のひとつのヒントになる話を耳にした。それは、ファーマーズ・マーケットで大成功を収めた農協で聞いたことである。「正組合員だけでなく、奥さんやお嫁さんも商品を毎日出し、自分のコード番号も持ち、売上は自動的に自分の口座に入る。その通帳をみて、うれしそうにしている」
 これは古典的な意味での総合事業の原点のような話である。しかし、古くからある仕組みが、新たな色合いをもって評価されることがあるのは、よくあることである。
 論点を細分化して右か、左か、を問う議論も必要であろう。しかし、より重要なのは、全体としてどうか、である。事業別の論理だけでの議論にならないことを祈りたい。 (2003.4.15)



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