農業協同組合新聞 JACOM
   

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論壇
主体性の欠如から脱皮し、責任ある対応を


◆小泉経済失政と丸投げ方式の幣

 りそな銀行への公的資金2兆円投入をめぐって、政府当局ならびに自民党は“銀行再生・金融不安予防措置”と責任回避に大童である。公的資金投入の直接的なきっかけである資本不足が明らかになったのは、監査法人が然るべき対応をしたからに他ならない。繰り延べ税金資産の算入算定を適正・厳密に行った結果とのことである。この件をめぐっての銀行と監査法人とのやりとりの経過は、テレビ報道で裏話的に明らかにされた。監査法人の対応次第では、適正資本として3月期決算を乗り切ったとも、十分に考えられる。恐ろしいことである。皮肉なことには“竹中効果”である反面、“小泉経済失政”の暴露そのものである。他のメガバンクにも厳正なメスを入れ、ただすべきは正さねばなるまい。
 小泉内閣になってから、内閣府の中に○○審議会・委員会と称する民間委員を動員し、一見民意尊重の組織が乱設されている。内閣府ホームページをみると、例の道路関係4公団民営化推進委員会など、おおよそ20の多きを数えている。「農協のあり方についての研究会」などは省庁レベルであり、この中には含まれていない。これらが十分に機能していればいいのであるが、実情は道路関係委員会のように空中分解するとか、あるいは官僚主義の隠れ蓑とされているとも伝えられる。何のことはない小泉内閣の得意技“丸投げ”そのもの。責任回避、議論すれども実行せずで、内閣のこの姿勢が、経済失政度をさらに高めているといえよう。
 
◆農協界の主体性欠如と丸投げ方式

 丸投げといえば、農協中央の最近の動きを見ると丸投げ方式そのもの、主体性欠如を強く感じてならない。
 まず、農水省の設置した「農協のあり方についての研究会」である。「経済財政諮問会議」と「総合規制改革会議」の流れから、設置そのものに抵抗すべきであっただろう。設置そのことは行政としての動きで、やむを得ぬとしても、4人の農協関係委員の参加を容認したことは、まったく理解し難いところであった。
 次いで、この研究会の報告書「農協改革の基本方向」への対応である。本年3月下旬の報告書に対し、全中としての見解は示されたのであろうか。全中等のホームページを見る限り、それを見出すことはできない。報告書の性格・内容から農協中央としての正式な見解の公表は不可欠だと思うのだが。第三者は農協の意思・考えをどこに求め、どう判断すればいいのだろうか。見解が凛として存在し、筆者の目にのみ触れていないことを、強く願っている。
 加えて、本年10月開催予定の第23回JA全国大会組織協議案との関係も不可解である。4月3日付の全中名で出された協議案の概要によると、“本年3月には農林水産省「農協のあり方についての研究会」で、「農協改革の基本方向」が取りまとめられましたが、特に緊急的に取り組む課題である経済事業改革を中心に、今回のJA大会議案にその内容を盛り込み、…以下省略…”としている。これだけである。どう読んでも農水省の報告書を容認、これに従うとの印象をぬぐうことができない。そう解していいのだろうか。以上の流れを見るとき、組織的主体性欠如そのままに、小泉内閣の丸投げ手法が、そっくり農協界に持ち込まれたとしか考えられない。農協陣営の主体性回復を願うや切である。
 
◆大会議案への注文

 さらに追加しておきたい。報告書の最後の章で、行政と農協の関係が触れられている。行政サイドの反省として“農政の遂行に農協系統を安易に活用してきた面がある…”としている。関連した提起や叙述が数カ所見受けられる。これを農協陣営としてそのまま受け取るのか、また、どう解するのか、大きな問題点である。ぜひとも第23回JA大会の主要課題として論議いただきたいものである。 (2003.6.12)


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