農業協同組合新聞 JACOM
 
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論壇
単純でない耕作放棄と転用問題


 農業従事者の高齢化や農業後継者難とともに遊休農地の増加が問題視されているが、青森県の場合、1990年の農業センサスと2000年のそれを比較すると、耕地面積が山間・中間・都市の三地域の平均値で、1990年の100(指数)に対し2000年に79.8、最も落ちこみが目立つ山間地域となると69.9となっている。兼業機会が比較的少ない「農業県」でさえこのようになっているのだから、食料の自給率問題と結びつけて考えるとこれは一つの県の農業問題にとどまるものではない。
 去る7月18日付の日経紙で元米通商代表部代表で農務長官だったクレイトン・ヤイター氏が日本の農業改革を論じ、そのなかで「日本の農民の多くが比較的高齢なことから、引退を支援するようなプログラムを導入する良い機会が巡ってくるかもしれない。これにより日本の農地の一部を都市型の利用に換えたり、芝生や森林など環境面での利益をもたらす用途に転換したりする機会が生じるかもしれない」と提案しているが、いったい、このような施策を実行した場合、わが国におけるいわゆる国民生活の安定・安心になるものかどうか。大いに議論すべきことである。
 先日、青森県内の某新聞の論説委員が同紙のコラムに「県内の遊休農地がこの10年間に倍増している」と嘆き「農協の真価が問われる」とハッパをかけている。農協は営農指導にもっと積極的であれ、という昨今の霞ヶ関の“報告書”がだいぶ頭に入っていての筆であるようだ。
 農地あっての農業・農家、農業・農家あっての農協であるから、農地の減少を等閑視すれば農協はやがて「砂上の楼閣」か「根なし草」になるおそれがある。
 したがって農協はただ生産された物を扱う、売った農産物のカネをうんぬんするだけでなく、もっと営農の前面に進出する必要がある。
 しかし遊休農地及び農地の転用増加などを農協の怠慢などと片付けることなどは現地、現状を知らない“机上観測論”である。
 耕作放棄地はどういう所であるか。山寄りの所では水田の場合、トラクターも田植機もコンバインも入っていけないし、農道もないような「条件不利地」が多いから耕作の受託者もない。以前なら米価が「元気薬」になって、少し腰が曲がった老農でも小型機械を使って頑張っていたが、卸値で一俵(60キロ)1万800円(むつほまれ、東京、7月入札)という時代になってきてその元気も湧かないという。
 片や平坦地あるいは都市近郊地であるが、いわゆる“虫喰い”的な農地の転用(住宅、工場、近年は量販店の増加)で、用水路が中断されたり、水が流れてきてもドロドロした汚水であったり−−−で、とても水田としての保持が困難だという。
 加えて土地ブローカーの働きかけである。市町村議会から選出される農業委員が意外に希望者が多く、その人たちはたいてい不動産業や建設業につながり(←傍点)があるのだそうだ。
 農地の転用、それに対し市町村長が遺憾に思っているかというとそうでもない。口には出さないが、農地のままであることと、転用された場合とでは固定資産税が断然違うからであって、ここに市町村自治体の財政問題が伏在している。 (2003.8.19)


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