農業協同組合新聞 JACOM
 
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論壇
生ごみ堆肥化―議論から参加へ−


 生ごみの堆肥化は言うは易く、有効利用の実現と継続は難しい。食品破棄物の発生量は年間約2千万トンと言われ、そのうち家庭系生ごみは約1千万トン、事業系を含めてもリサイクルされるのはわずか0.3%、全国で5万トン程度ではないかと推定されている。
 平成13年度から「食品リサイクル法」の施行により市町村の責任で生ゴミは収集・処理されている。生ごみの99.7%は燃えるゴミとして、大型施設に持ち込まれ焼却される。正に水を運び水を税金で燃やしているようなものである。無駄である。
 生ゴミ発生抑制の試みはいろいろな形で実施されてはいる、各家庭での「水切り」や生ゴミ処理器の導入などにより、エネルギーの節約もある。しかし、それで充分な効果を上げているとは言えない。生ゴミを堆肥化するのであれば、タバコの吸殻など異物混入のない野菜くずや残飯のみの「分別の徹底」が必要だし、出す人皆が生ゴミは「食品の循環資源である」という意識を持てるかどうかである。
 生ゴミ堆肥を利用して欲しい側からの「需要先の確保」、即ち受け皿農家が経済的にも社会的にも納得できるかどうかも大切である。生ゴミを日常的に大量に出す都市住民と畑や田んぼを所有する農村との共生のコンセンサス確立が必要である。生ゴミの特徴として、80%の水分、腐敗しやすい、悪臭を放つ、公衆衛生上の配慮などがあり安易に農村に生ゴミを持ち込めば、農村はゴミ捨て場ではないと反発する。ある都市在住農家は「本当は生ゴミ堆肥は全く必要ではありません。はっきり言って邪魔者です。化学肥料と市販の有機物堆肥で畑は作れます。ただし、地域の消費者グループとの交流から、生ゴミ堆肥を試験的に畜産堆肥と混ぜて畑に入れています。今の所、生ゴミの量は少なく特に問題は発生しておりません」と発言している。
 生ゴミとは認識できなくとも産業破棄物が森林地帯に不法投棄され迷惑を受けている地域が沢山ある。産廃業者に安易にお金を払ってゴミ処理させているからである。生ゴミは国民全員が排出者であり、処理も全員で考えなければならない。一方、環境保全型農業は土つくりが基本であり、農業は自然リサイクル機能を持つ唯一の産業である。美味しい作物生産には、土に有機物の投入が効果的である。米や野菜や肉、卵を消費者に売れば、食べ残しや食品残渣としての生ゴミが毎日発生する。
 国内消費者の深い信頼を得るために、一歩前に進んで、JAグループと地域個々のJAに生ゴミの堆肥化を消費者や自治体と一緒になって検討することを提案したい。賞味期限を過ぎたコンビニ弁当など食べずに棄てられてゴミになる、事業系生ゴミの発生抑制も当然必要である。「JAが参加する」となれば強い。家庭系プラス事業系生ゴミ処理がJAグループの事業に成長する可能性もないとはいえない。安くて良い資材を農家に届けるのがJAの購買事業、農家の生産物を安心・安全な国産農産物として消費者に届けるのが販売事業であれば、生ゴミ処理への参加は、生産者・消費者両者の難題ソリューション事業である。
 生ゴミは堆肥化ばかりでなく有機肥料の原料やメタンガスとして使える。アグリビジネス関連メーカーもハイテクやバイオの応用として、事業化を目指せばJAグループに協力するメーカーも現れるだろう。そのような社会参加活動はJAのイメージを向上させるはずである。
 (2003.9.22)


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