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シリーズ 生協―21世紀の経営構造改革−−6 

北東京生活クラブ生協理事長・松村裕子氏に聞く

自らの生協を一人ひとりの道具にして、
運動・事業の一層の深化を


インタビュアー:協同組合経営研究所元研究員 今野聰

 東京都23区の北ブロック(北豊島、板橋、練馬、中野、杉並、新宿区)を対象に、生活クラブ生協・東京グループの一角を形成する。生活クラブ生協は1968年の創立。その後1994年、合併ではなく生協分割方針によって新法人として設立された。今年3月末、組合員1万4198名、総利用高49億円。東京のグループ合計供給高179億円の中核となっている。運動と事業の最先端組織は一体どのようなものか。更に経営改革の方向を語ってもらった。(今野)

「個人の思い」にこだわる

(まつむら ひろこ)富山県出身。昭和56年生活クラブ生協加入。平成7年北東京生活クラブ生協理事、9年同生協副理事長、11年同理事長就任、現在に至る。

 今野 まず昨年決定した5カ年計画(2000〜2004年)の「個人の思いや意志の結集」という考えを説明して欲しい。どうもこれに深い意味があるように思えるので。

 松村 現在の生協が設立された1994年以来、やろうと決意したことは変わっていません。今回組織改革をしようとして、一層進めて5カ年計画になった。生協としては個人の思い、それをもっとも大事にする。そういう人達が先々を創っていくんだということ、そのことを改めて強調して文書化したのです。

 今野 「個人からの発信」に対比する言葉は「班からの発信」でしょうか。

 松村 そうです。生活クラブは班を基礎にしてそもそもスタートしたので、班を構成する個人を発信源にする。但し決議は班単位で1票としました。こうすると個人が班で捉まえられないこともある。今回の組織改革は配達の形にかかわらず一人ひとりの発信を受け止め、登場する場を広げることをめざしています。

 今野 94年当時、全体の方針は自治・分権・分割でしたね。東京1つを分割する。分割すればヒト細胞と同じで限りなく伸びる、大きくなる。そういうイメージがあったと思う。その時、どうして「個別配送」を同時スタートにしなかったのですか。

 松村 戸別配送はスタートさせました。しかし、戸別配送組合員も班を構成するという班というものにあくまでもこだわったのです。それで班の中で個人を受け止めていくこうというスタートだったのです。

 今野 他の生協、民間の有機専門事業体などは、すでに個配という形で始まっていたのですが、皆さんの場合、供給の形態としては班形態。だから個人は戸別配送としてスタートした。ようやく去年の長期計画での個人の全面前進化となってきたという理解で良いのですか。

 松村 そうです。

 今野 そうすると、94年当時、戸別配送はあったのに、最重要視しなかったのですか。

 松村 その時も個人を班に縛るのではなく、個人を解き放して浮上されるのだという意見はありました。だが、まだ班にこだわる必要があるという意見の人が多かったのです。組織はそれくらい長い経過があるし、創ったら次のことを考えないといけないともいえるわけです。だから時期的に遅れたということもあるかも知れない。

 今野 なるほど。組織拡大に使う膨大な時間との関係はどうなりますか。

 松村 だから今もそんなに大変だと意識していないのです。当時、拡大は伸びていなかったけれど「個と班」スレスレの議論をしていた訳ではなかった。


生協はみんなの道具、だから使う

 今野 「生活クラブを道具にする」という意味も教えて下さい。

 松村 個人からの発想というのは、例えば自分だけが安心する産直事業じゃない。そこを越えてまちづくりなのです。消費材を作って結集した共同購入というのは、結局循環しているはず。それぞれが決めて、集まる。自己決定する人の集まりです。
消費する人達がまちづくりをしていく。人の組織である生活クラブが人を大事にして、そういう人達が集まって生活クラブを使いこなす。自己実現をどうするかということです。一人で頑張るんじゃなくて、せっかく多くの人がいるのだから、生活クラブを大いに使おうじゃないかとなる。現にそれを使って、例えばワーカーズコレクテブ(女性の自己決定する協同組合的仕事組織)であったり、他にもいろいろできてきたと思います。

 今野 別の表現にするとどうなりますか。

 松村 自分の生活を豊かにするという時に、生活クラブという組織がある。それを使って、産直の安全食品であれ、介護、子育てであれ、実現に努力すれば、個人だけの幸せではないでしょう。道具として使ったことで、より幸せとなる。道具って、使いこなせなければ仕方ないでしょう。包丁だってそうで、使い手によって変わると思う。その自己実現のところで生活クラブを目一杯使いこなすということです。

 今野 全国の生協でも特異ですね。皆さんの協同財産である消費材のSマークはその象徴ですか。

 松村 活動をしてきたプロセスの象徴ではありますね。でも、絶対的なものではありません。

 今野 これからは不景気続きの予想。生活クラブという道具を経営改革にどう生かされますか。

 松村 景気不景気にかかわらず一定の経営安定が前提ですが、道具だということを認識する人が集まる。夫から生活クラブに使われているじゃないか、時給100円じゃないかという批判があってもです。

 今野 なるほどね。

 松村 それに対して生活クラブとは、私たちそのものなのよって言う。そういう人を増やしていきたい。


今住むところでまちづくりを

 今野 「まちづくり生活自治体」という方針があります。それは皆さんの生活者ネットワークなどいくつかの別団体の活動に重なるのですか。

 松村 生活者ネットはもう有名になりました。都生協連幹部からも、頑張れと言われる。だからそんなに異質ではありません。要するに、私たちが生活者ネットワークという時は、住んでいるところでまちづくりを一緒にやる、その運動です。それがキーポイントだと思う。

 今野 生協事業とは不離一体?任務分担しているのですか。

 松村 不離一体ではないから、協議機関もある。練馬生活者ネットとは協議もする。そういう関係です。それぞれの役割を明確にした上だからこそ連携ができるのです。


秋から事業展開を急ピッチで上げる

 今野 今年10月からの経営構造改革の進み具合はいかがですか。

 松村 おおむね予想以上です。組合員は戸別配送組合員を含めて純増だし、11月単月でも前年比5%ぐらい伸びています。

 今野 じゃ、戸別配送組合員は支持されて、伸びているということですね。我慢の結果?

 松村 それもあります。ただ、野菜は個人ピッキングでなく、班に野菜が来て、みんなで分けている。新宿で戸別配送導入と同時に野菜を取り組み始めたんです。結果はいい。でも野菜に対する評価は様々です。かつて東京の地場野菜の時は即日配送だったのが、今やD2(2日後)。それに関しての苦情もあります。夏場の蓄冷材使用とか、袋のリサイクル問題とか課題山積です。

 今野 京野菜のように練馬野菜を掘り出したらいいのに。

 松村 遺伝子組み換え型野菜種子が増えれば、地場野菜はどんどん追いやられる。昨年までは在来種という視点で取り組んできた経過もありますが、それが現在に生きていなんです。


連合会とは自立と連合で進む

 今野 グループの事業連合会との関係は。

 松村 運動は全国的にやる。事業連合の力を生かす。連合に地場とか顔が見える関係が生かし切れていない難点はあります。悩ましいところです。しかし、自分で決めるわけだから、自己決定も時間使用も大変ねと言われたって、世間とは相当違う組織と事業だ、と割り切って。

 今野 単協総代会はすごい議論で、連合会はそうならない。どう改善しますか。

 松村 議論になることだってあります。テーマ次第でしょう。今年の東京は相当論議ななりましたよ。


練馬の生産者に一層近づきたい

 今野 最後に練馬農業、日本農業について。

 松村 練馬のJAとは事業方針案で、何回か話し合いました。金融事業中心というのが現状ですね。多くの課題が問題意識の段階で止まっている感じです。例えば学校給食で使う地場野菜の問題があります。だがとてもJAとまちづくりという考えでは重なっていかない。地元が大事なのに。練馬区の農家とはいろいろ関係があるのですから、もっと話し合えるはずです。東京の生産者のために、日本の農業のために、優良な土地・農家を残して欲しいですね。





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