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WTO次期農業交渉 年末までに各国が提案提出
 ―市場アクセス、国内補助などのあり方が焦点


◆ 議長選出は先送り―日本の公使の副議長案も一時浮上

 WTO次期農業交渉は、3月23〜24日にジュネーブのWTO本部でWTO農業委員会特別会合が開催され、実質的に交渉が始まったことになる。
 農業交渉のための特別会合は、2月の一般理事会でWTO農業委員会のもとに議長と副議長を置き、議長が特別会合を担当、副議長が通常の農業委員会を担当することが決められた。通常の農業員会は、ウルグアイ・ラウンド農業合意の進捗状況を検証し、次期交渉の場は特別会合とされている。
 この方針が決まった後、日本は、玉沢大臣が東・前農林水産審議官を議長候補として推す姿勢を表明するなど議長選出が焦点になったが、主要国間での調整で議長候補にアモリム在ジュネーブ・ブラジル大使、副議長候補をジュネーブ日本代表部の鈴木庸一公使とする案が一時浮上したといわれている。

 しかし、ブラジルはケアンズ・グループ(輸出補助金や国内支持の撤廃を求める国の集まり)のためEUが猛反対してこの案はつぶれ、結局、議長選出をめぐっての調整はつかずじまい。
 このため今回の特別会合の限りファレル在ジュネーブ・ニュージーランド大使が暫定的な議長を務めることが一般理事会で決定した。ファレル大使は、農業委員会の上部機関に位置づけられている「物品の貿易に関する理事会」の議長を努めていることから選ばれた。なお、農業委員会議長選出のためのプロセスは今後も継続して行われる。


◆年末までに提案提出―市場アクセス、国内支持などのあり方

 特別会合での主要国のおもな発言は、次のようなものだったと海外の専門誌は伝えている。
 米国は、「WTOでは農業が今年の中心課題」と重視する姿勢を改めて主張し、貿易障壁を引き下げ国の支持政策を生産刺激的なものから区分けしていくことによって農産物貿易の市場志向を高めるべきと訴えた。
 また、ケアンズ・グループは農産物貿易の自由化とすべての補助の撤廃を急ぐべきであり「各国からの提案は10月に提出されるべきだ」などと交渉の進展を急ぐべきと主張した。

 これに対し、日本とEUは、「農業交渉は包括交渉の一部として行われるべき(新ラウンドの立ち上げ)」ことと「農業の多面的機能の重要性が尊重されるべき」とこれまでの考え方を強調。また、EUは交渉対象を「市場アクセス」、「輸出競争」、「国内支持」、「開発途上国への特別かつ異なる待遇」、「非貿易的関心事項」の5点とすべきとの主張もした。
 今回の会合での発言は、各国とも昨年のシアトル閣僚会議などでの主張と変わってはおらず、農産物貿易の在り方をめぐる対立は激しい。

 ただし、こうした対立がありながらも、今回の特別会合では次のステップに向けていくつかのいくつかの確認がなされた。
 ひとつは、交渉の提案を提出期限を年末とすること。この提案は、市場アクセス(国境措置)、国内支持、輸出競争など次期交渉で議論される項目それぞれについて、そのあり方を各国が提案することになる。昨年、わが国は食料安全保障や農業の多面的機能の重要性を主張した「日本提案」を提出しているが、今回はそれに基づいて、交渉課題ごとにより踏み込んだ主張を表明することになる。
 提案の提出期限は、年末までだが、提案の総括を行う2001年3月会合までの追加提案・再提案を行うことも可能とされている。

 また、特別会合開催の当面の日程も確認された。今年は、6月、9月、11月の農業委員会通常会合に合わせて開催することとし、必要に応じ来年1月に追加会合をする。次回は、6月29〜30日に開かれ、WTO事務局と関心国から提出された農業協定20条に記されている配慮事項について議論することになっている。

 このような日程からみても「品目別交渉のための提案は来年」(玉沢農相、5日の記者会見)となるため、当面、年末までに提出する提案の内容の詰めが課題となる。
 昨年の「日本提案」は新基本法の成立を背景に国民合意のもとでまとめられたとされる。現在は、新基本法下で初めての基本計画も定められ10年後の食料自給率を45%にまで引き上げるという目標を立て、生産と消費の両面からの取り組みを本格化させる段階にある。

 とくに生産現場では地域農業振興計画の策定が重要となるが、こうした時期に提案をまとめることになるだけに、その内容は現場に意欲を与えるようなものでありこそすれ、それをそぐようなものなってはならないことはいうまでもない。
 また、消費面での自給率向上策は食生活の見直しが課題であるとし、政府は国民的運動の展開などを重視するが、国境措置の確立もまた重要であることも見落としてはならない。そうした点もふまえ、たとえば、米のミニマム・アクセスのあり方も含めてしっかりした提案ができるよう、十分に開かれた議論が今後一層求められることになる。


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