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協同組合運動に勇気と示唆を与える8氏を表彰
第22回農協人文化賞表彰式開催される


 昭和53年に農協法公布30周年を記念して(社)農協協会と 「農協協同組合新聞」 が、農協運動・農協事業に多年にわたって献身的に尽力されてこられた功績者を顕彰することを目的に制定した 「農協人文化賞」 の第22回表彰式が、6月2日に東京・JAビルで開催された。

 今回は、すでに本紙で報じているように、経済事業・共済事業・信用事業および一般文化の4部門各2名、合計8名の方が受賞された。これで、前回までの受賞者157名と合わせて165名の方が同賞を受賞されたことになる。




受賞者の信念と心をもって後継者の育成を

受賞者のみなさん
経済事業部門
 元山口県経済連専務理事  田中 博 氏
 北海道元由仁町農協組合長  馬場 良武 氏
共済事業部門
 前愛知県共済連代表理事専務  日比野 照 氏
 前高知県共済連常務理事  松田 幹夫 氏
信用事業部門
 長野県前北信州みゆき農協組合長  阿部 雄治 氏
 群馬県甘楽富岡農協会長理事  黒澤 映一 氏
一般文化部門
 東京都女性協会長・東京あおば農協理事  保戸塚節子 氏
 元島根県中央会共通役員室長  若槻 耕三 氏


【表彰式】

 表彰式は、加藤源蔵JA全中副会長をはじめ約100名が出席して、盛大にそして厳粛に開催された。
 表彰式はまず、佐藤喜作(社)農協協会会長代行が主催者を代表して挨拶を行った。そのなかで、佐藤会長代行は、産業組合法が制定されて100年経ち21世紀を間近に迎えようとしているが、人類は深刻な問題を抱えている。これは 「天変地異によるものではなく」 人間がつくりだしたものであり、これを 「修復できるのは人間しかない。そしてその役割を担えるのは、人間の集団である協同組合であり、協同組合の存在意義と責任がそこにある。受賞者の功績は、21世紀に向かっての協同組合運動に大きな勇気と示唆を与えてくれる」 と述べた。

 次いで同賞推薦委員会を代表して榊春夫氏が挨拶した。榊氏は 「あちらこちらで農地が荒廃をして、農地があっても農業利用度がどんどん低下している。一方で、農地がありながら耕作をする人がいないという悲しい事実」 ある。それを打開するためには 「農協が、第一線の農家の人たち心、消費者の心を心として、生活を守るためにどうするのか、ともに苦しみ、ともに打開策を求めていくという地道な運動を積み上げていかなければいけない」。そうした 「底辺からの運動を再出発させるために、受賞者のみなさんとともに、協同組合運動振興のために邁進していきたい」 と述べた。

 その後、8名の受賞者に表彰状と記念の楯が贈られ、来賓を代表して加藤源蔵JA全中副会長が祝辞を述べた。そして、受賞者の農業・農協運動への熱い思いを込めた体験発表(詳細は本紙1787号掲載)を聞き、「多年の間、ひたすらに農業、農協の業務に突き進んでこられた受賞者の信念、心を引継ぎ、後進を育て、運動の後継者を増やしていくために、互いに協力しあっていこう」という、中川敞行(社)農協協会顧問の閉会の挨拶の言葉を出席者が胸に刻み閉会した。


受賞祈念パーティーに各界から200名が出席

 表彰式後の 「農協人文化賞受賞記念パーティー」 には、梶井功東京農工大学長、白石正彦東京農大教授、北出俊昭明治大教授など学界の方々。

 中村祐三・今尾和実JA全中常務、前田千尋JA共済連専務、上原寿宰・佐々木功JA共済連常務、藤村征夫JA全農常任監事、尾崎進農林年金理事長、田中恒久協同住宅ローン社長(元農林中金副理事長)など、多数のJAグループ関係者。

 徳島秀一日産化学工業渇長をはじめとする肥料・農薬・農業機械など生産資材会社の関係者。農協界OBなど約200名が出席し、華やかに、そして温かい雰囲気のなかで開催された。

 会場のあちらこちらに、受賞者を中心にいくつもの懇談の輪ができ、受賞者の体験報告やこれからの協同組合運動など、つきぬ話題が語られていた。

◆「農」 に端を発する文化を後代に
   尾崎進農林年金理事長

 パーティーでは、佐藤農協協会会長代行と、推薦委員会を代表した榊氏の挨拶の後、尾崎進理事長が乾杯の音頭をとった。
 尾崎理事長は乾杯に先立ち、「(いまの社会的なをみると)日本の文化・伝統が堅実に継承されていくの確信がもてません。100年後にもし、心ある人たちが日本文化復興運動を起こしたとしても、伝承されない文化に復興はないと思います。細々なりとも、私たちの手で、日本の農業に端を発したこの伝統文化を後代に伝えて」いきたい。今回の受賞者は 「そうした心を持つ人たちであり、心からお祝いもうしあげたい」 と述べた。

◆21世紀の農業はJAの取組みいかんに
  梶井功東京農工大学長

 梶井功東京農工大学長は、新しい基本法に基づく 「食料・農業・農村基本計画」 に触れながら要旨次ぎのような祝辞を述べた。

 基本計画が発表されたが、そのなかで 「一番重要なのは食糧自給率を同引き上げていく」 かであり、「その要になっているのが、水田本作としての麦・大豆・飼料作物をどう定着させることができるか」 にある。
 そして 「この課題を達成するためには、地域でいかに生産組織をつくるか」 というような 「地域的・組織的な対応をしていかなければ無理だと思う。基本計画の成否、21世紀の日本農業はJAの取り組みいかんかかっているといって過言ではないと思う」。

 しかし、基本計画全体を貫くトーンは、農協のそうした取組みに期待していないように思える。「この矛盾を克服し、欠陥を埋めていくために、私はそれぞれのJAの活動に期待せざるを得ないと考えています。そのために、受賞者の活動をJAのみなさんがどれくらい噛締めて自分のものとして身につけてやっていけるかが大事だと考えています」。

◆共済事業の誇り
  前田千尋JA共済連専務

 前田千尋JA共済連専務は 「共済事業部門で受賞されたお二人は、この4月に実現した県共連と全共連の組織統合の功労者でもあり、率先垂範しながら全体のリーダー役を努めていただきました。そういう意味でも、今回受賞されたことは嬉しい限りですし、誇りに思っています」 と挨拶した。

◆組合員・地域に根ざした強みを活かすとき
  田中恒久協同住宅ローン社長(元農林中金副理事長)

 また、田中恒久協同住宅ローン社長は 「系統の原点は、組合員・地域に根ざして業務を展開していくことにあります。いま銀行が統合・合併をしていますが、リテール部門をどう強化するかがその戦略の焦点になっています。歴史的にも、組織の上でも、地域に根ざし、組合員との結びつきのなかで発展をしてきた系統組織は、ますますその組織の強みを活かしていくことが大事です。受賞者の方々は日ごろからそうした意味での活動をされており、今後の全体の運動の良き模範として、さらに広がっていくことを期待したい」 と挨拶した。

◆日本農業の前途に光あれ
  徳島秀一日産化学工業会長

 農薬工業会会長や化成肥料協会会長などを歴任した徳島秀一会長は 「受賞者の話に感激しました。長い間の現場でのご苦労がなければこういうお話はできないと痛感しました。日本農業の前途に光あれと心から祈念いたします」 と、産業界を代表して祝辞を述べた。


 受賞者を中心に和やかに続けられていた歓談は、午後7時過ぎ中川敞行農協協会顧問による 「これからの日本農業と農協運動の発展を願う思いを込めた」 万歳三唱で幕を閉じ、21世紀最初の年である来年もまた、農協人文化賞の会場での再会を誓いあい、散会した。  

 

注:中川敞行農協協会顧問の「敞」のへんの部分は、正確には「尚」となりますが書体の都合により「敞」とさせていただきました。

 

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