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「21世紀に向けて食料・農業・農村に新しい風を」

協同組合の原点に返って 21世紀の共済事業を構築
 
西村 博之 
JA共済連専務理事
聞き手:押尾 直志 明治大学商学部教授

  金融ビッグバンの急激な進行とそれにともなう市場競争の激化が進むなか、JA共済事業は歴史的な全国一斉統合をいち早く実現した。統合後半年の成果と21世紀へむけてのJA共済事業のあり方を西村JA共済連専務に聞いた。聞き手は共済・保険事業に詳しい押尾明治大学教授。

◆責任と権限をもった47の拠点体制ができあがる

 押尾 西村専務はかつて統合の目指すものとして、@より効率のよい組織で優れた保障を低価格で実現する、AJA・県間のサービス格差をなくし、全国統一のトータルサービスを提供するなど、契約者サービスをさらに充実する、B事業経営の健全性をはかることによって、万全な支払いを準備し、加入者の安全と信頼を確保する、という3点をあげられていました。統合後半年を迎え、事業および組織改革の進捗状況をお聞きしたいのですが。

(にしむら・ひろゆき) 昭和11年北海道生まれ。北海道大学農学部卒業。昭和34年全共連入会。融資部次長、名古屋支所長、不動産部長を歴任、平成3年参事、平成8年常務理事を経て平成11年専務理事就任。

 西村 実施の緒についたという段階です。統合は、21世紀への共済事業を考える場合の前提であり、目指していくものを実現するための条件整備だったわけです。統合によって普及推進面では地域的な多様性のある47の拠点に責任と権限を持つ体制ができあがりました。また、資金運用機能が全国本部に一元化されました。現実的にひとつの組織になったこととあわせてこれが統合前と後の組織の違いだと思います。
 半年たってどうかといえば、県の事業実施の状況をみますと、従来以上に活力を持って仕事をしていると、私は思います。

 押尾 重複していた機能や業務を一元化したことで、経費の節減や効率化の効果が現れているのではないかと思いますが。

 西村 県と全共連という関係でみると、従来から1社に近い関係で事業運営を行ってきましたから、県と全共連の機能はある程度分担が明確になっていました。資金運用については、おのおので運用していましたが、平成3年から県の積立部分を徐々に全共連に移管し、資金の一元的運用に向けて取り組んでいましたし、従来から経営改善運動を行ってきましたので、人員などもかなり縮小しています。

◆人と農協に対する信頼で伸びてきた共済事業

 押尾 これまでは、生損保の護送船団方式が、JA共済にとって追い風になっていたと思いますが、規制緩和の推進によって、共済事業の市場・領域にまで民間保険会社が進出してきています。しかもJA共済の場合は、総合事業としての農協組織に安住した事業運営を行ってきたことは否定できないと思います。そうした運営姿勢を転換して、事業の活性化をはかっていくことが、統合の課題の1つではなかったかと私は思いますが…。

 西村 JA共済は50年の歴史をもっておりますが、当初は農村部の人たちが必要性を感じて制度化してスタートしたわけです。それから、農村部の生活も徐々に核家族化し、自動車が入ってくるなどリスクが個別化し、さらに増大してくるなかで普及してきたわけです。
 当時は「加入してください」という前に、保険とは、共済とは、という説明を集落座談会で行うところからスタートしているわけです。つまり潜在化していた共済ニーズを啓蒙し顕在化させることから始めなければならなかったわけです。ですから人に対する信用とか農協に対する信頼で伸びてきたという側面があったと思います。

 今後どうするかということでは、1つは、事業実施時のときの人と人の結びつきをもう一度見直すことです。また、共済を提供する団体で、信用事業もやる経済事業もやるというところは他にありませんから、他の事業と提携して、人の結びつきを強化するような活動をやっていこうということが2つ目ですね。3つ目は、JA共済こそ、事業体としても保障内容も優れているし安全だと認識してもらうことが、基本だと考えています。あわせて、今後は地域社会に役立つ活動を強化していくことも、今後は大事だと考えています。

(おしお・ただゆき) 昭和24年千葉県生まれ。昭和52年明治大学大学院商学研究科博士課程修了。昭和62年明治大学商学部教授、平成5年日本協同組合学会常任理事、平成8年明治大学商学部二部主任、平成10年厚生省・「生協のあり方」検討会委員。

 押尾 協同組合は人の組織ですからね。共済事業は、相互扶助という協同組合らしい事業だと、生協などでも見直されてきていますね。

 西村 そうですね。

◆普及・審査・査定の特化で専門性が向上する県本部

 押尾 先ほど普及推進では47都道府県ごとの特徴があるといわれましたが、これを県本部の重要な機能である普及・審査・査定の責任体制は統合によって変わるのでしょうか。

 西村 普及推進では、全国本部はこういう手法で事業目標をつくったらどうかとか、こういう保障が不十分な組合員が多いという情報を提供しますが。これを県本部が地域の実態にあわせて目標設定し取り組んでいくということです。審査・査定には地域性がありませんから、全国一律の基準で行います。
 従来とどこが違うかというと、ほとんど変わりはありません。ただ、従来よりも普及・審査・査定に特化した事業体として県本部は存在しますから、専門性は向上すると思います。

◆研修体制をしっかりしないと死命を制する

 押尾 組合員ニーズが多様化し、共済の仕組みも複雑化してきていますし、審査・査定の迅速化も求められるなかで、生活全般にわたるコンサルタントとしてLA体制を2万人にするという構想があります。さらに県本部には6200名の職員がいますが、こうした人たちの研修や養成も大きな課題だと思いますが…。

 西村 いままでは別法人ですからそれぞれで行っていましたが、1つの法人になりましたので、一元的に研修体系を再構築し、いくつかの研修コースをつくり強化していきます。いま私たちには事業費を削減し、それを還元することが求められていますから、要員を拡大することは難しいわけです。そうなると質の向上が求められますから、研修体制をしっかりすることが事業の死命を制することになると思います。

◆JA共済事業の中でできている契約者保護制度

 押尾 生損保会社の破綻が今年だけで3社あり、保険業法を見直すなどの措置をとっていますが、JA共済は契約者保護をどうはかっていくお考えですか。

 西村 JAは共済契約の元受であり当事者でありますが、共済契約の責任すべてを全共連に再共済しているわけですから、共済事業を原因にしてJAが破綻することはありません。JA共済事業の中で契約者保護制度はできあがっています。また、全共連としては、経営の健全性なり経営基盤の強化など破綻しないような諸施策を策定し、万全の措置を講じております。

 今後は外部に対しても積極的にディスクローズを行っていきます。また、事業の透明性を高めるために、これまでも情報開示誌を全JA支所に設置し、簡略版を配布することによって事業内容や経営指標を組合員や契約者にディスクローズしてきましたが、さらに、事業の透明性を確保するためには、外部の監査法人を活用して、社会的な客観性を高めていくことも必要かと考え、今後検討していきたいと思っています。

 押尾 外部から人を入れての経営監視体制は不可能ですか。

 西村 その点については、事業実施体制の整備とか経営管理委員会制度の導入の検討などとの関係で整理する必要がありますね。

◆今後は共済思想の啓蒙活動が重要になる

 押尾 先ほど、人と人の結びつきを大事にしていくというお話がありましたが、共済思想や保障の仕組みなどについての啓蒙活動が重要ではないかと考えますが、その点はいかがですか。

 西村 優れた保障を安い価格で提供するためには、ボリュームが増ることが必要です。ボリュームを増やすためには、いろいろなやり方があります。
 では、協同組合の組合員はなぜ協同組合共済に入るかといえば、自分たちの力で、自分たちの契約を保護したり向上させて、より質の高いものに作り上げていこうという意識が、組合員自身にあるためだと思います。そういう意味では、優れた保障を安い価格で提供するということについて、積極的に意義づけをし、説明していかないとダメだろうと思います。

 私が入会した当時は「少しくらい無理してでも共済に入ってもらう。それがその人の将来にプラスになるという確信をもってやろう」といわれました。社会的な諸リスクに対して意識がなく無防備な人に、意識を顕在化してもらい、備えてもらうことに自信をもとうということでした。
 これを啓蒙活動というならば、現在はまだまだ不十分だなと感じます。

 押尾 今後、地域社会への取り組みを強化していくのであれば、消費者の保険知識はまだ乏しいので、全共連として啓蒙活動に力をいれていただき、地域の人に共済への理解を深めてもらいたいと期待をしています。どうもありがとうございました。


インタビューを終えて
 JA改革の先陣を切ってJA共済事業が統合を実現し、半年になる。組合員の総意にもとづいて、綿密な計画と用意周到な準備のうちにすすめられたとはいえ、民間企業のようにリストラと単に不採算事業部門の廃止を目的とするわけではない。したがって、JA共済事業における統合はJAのみの問題にとどまらず、広く協同組合・共済事業の先例となるべき重要な意味を持っている。統合に関して何よりも問われるのは、内向きの保守的な事業運営をいかに改革していくか、という点である。統合の初期の目的を達成するためには、組織基盤に安住し、民保に追随する安易な事業運営の姿勢を根本的に改める必要がある。また、JA共済事業は、コミュニティー形成の核となるべき役割・期待を担っている。このような問題意識をもって西村専務さんとのインタビューに臨んだ。インタビューを通して、役職員に対する教育・研修の促進と、とくに県本部の専門性の向上を図ることによって組合員・契約者等のいっそうの信頼を確保し、保障の充実を図っていくことや、地域社会との結びつきの強化など、JA共済事業改革に取り組む西村専務さんの熱意を強く印象づけられた。(押尾)




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