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「米の需給と価格安定の実現めざして
緊急米対策の確実な実施を
JAグループが足並みそろえた米の集荷・販売を
JA全農米穀販売部長に聞く


JA全農米穀販売部長 水野 文雄
聞き手: 明治大学教授 北出 俊昭 氏
 9月末に決まった「緊急総合米対策」では米の需給改善と稲作経営の安定を図る観点から、生産調整の緊急拡大や特別調整保管などの諸対策を決定した。この目的を達成するためには、今後へJAグループが足並みをそろえて取り組むことが大切になる。では、どこがポイントになるのか。今回の対策の要点と今後のJAグループの米穀事業の方向などについてJA全農米穀販売部・水野文雄部長に聞いた。聞き手は北出俊昭・明治大学教授。

「平成12年度緊急総合米対策」後の需給量の考え方  「平成12年緊急総合米対策」で目指す方向

  まずは集荷に全力を上げることが重要

(みずの・ふみお) 昭和20年愛知県生まれ。名古屋大学農学部卒業。昭和44年JA全農入会、平成6年本所米穀販売部集荷対策課長、7年東京支所次長、9年本所米穀販売部次長を経て、11年現職。 

 北出 最初に12年産米の集荷状況からお聞かせいただけますか。

 水野 集荷見込みはまだまとまっていませんが検査数量実績では10月末時点で400万トンです。昨年の同時期は379万トンでしたから前年対比で105%ということになります。
 今年は作柄もよく出回りも早いということで、それを受けた集荷状況になってきていると思います。

 北出 このところ米価の下落が続いていますが、こうした状況では生産者も独自販売は難しく、やはりJAに出荷するという傾向もみられるのでしょうか。

 水野 その点はなかなか数字としては把握できませんが、各地の経済連担当者の話を聞くと、計画外流通米として販売していた生産者が計画流通米としての出荷に切り替えることが増えてきたということは聞きます。その理由は、米価の低迷もありますが、やはり代金回収がなかなか難しいという面もあるようですね。
 ただ、現在は集荷の途中ですから気を抜かないようにしなければいけません。今、呼びかけているのは集荷の最盛期にある地域はもちろん庭先集荷など基本に忠実に集荷に取り組まなければなりませんが、最盛期を過ぎた地域でも出荷状況をみて追加集荷に取り組んでほしいということですね。

 北出 9月には米の需給と稲作経営の安定をはかるため「緊急総合米対策」が決定されましたが、とくに調整保管など米の販売方針に関わる点について改めて解説していただけますか。

  市場隔離効果高い「調整保管」の実施

 水野 今回の「緊急総合米対策」は、今年10月末に計画を60万トンも上回るような在庫が積み増すと見通されたこと、12米穀年度の政府米の販売は20トン程度と見込まれ、備蓄運営ルールからすると12年産米の政府買い入れはゼロとなる可能性があること、また、11年産自主流通米の20万トン程度の販売残も見込まれることなどの状況を受けて、とにかく米の需給を均衡させなくてはならないということから検討が開始されたわけです。

 そのためには、生産調整を拡大しなければなりません。しかし、これ以上の生産調整面積の拡大については限界感がありますから、拡大するなら、緊急に来年一年間だけの拡大とし、しかもその部分については今まで以上のメリットをつけます、という対策になったわけですね。その拡大分は25万トン分、5万ヘクタール程度となりました。
 しかし、この生産調整面積の緊急拡大による効果は、来年以降にしか出ません。したがって、緊急拡大の効果を前倒しするために、政府による買い入れを要請したわけですね。
 それが実現して、12年産の生産オーバー分のうち飼料用として処理する15万トンと、生産調整面積の緊急拡大に伴う25万トン、合わせて40万トンを政府が買い入ることになりました。

 ただし、これだけでは不十分で、さらに一定量を市場隔離するために調整保管を行うということになったわけです。しかしながら、調整保管という需給調整の方法はこれまでにも行っていて、それは翌年に市場に出回るという形でしたから市場隔離効果としては薄かった。したがって、今回は、米穀年度当初から24万トンを調整保管し来年の10月末に同量の政府古米と差し替えるという方法になったわけです。

 北出 その方法はこれまでにないことですね。

 水野 そうです。緊急対策では“隔離効果の高い自主流通法人による一元的な調整保管”と書かれていますが、この調整保管分は、言ってみれば自主流通米ではなく最初から政府米であって、これまでのように市場に出ることはないということなんです。  

  「ここで米価を守る」という気持を持つ事

 北出 販売については、政府米との協調販売は継続していくのですか。協調販売を中止するとの報道もありましたが。

 水野 政府米と自主流通米では類似の銘柄もありましたから、その部分についてはこれまで政府米の販売を控えてもらうという協調販売を行ってきました。
 ただし、海外援助用として7年産米の在庫はゼロになり8年産についてもかなり減ると聞いています。したがって、政府米の状況もかなり変わってきますから、昨年までと同じような協調販売を続けるかどうかという問題はあると思いますが、協調販売そのものを中止するということではありません。お互いにきちんと販売できるような条件は考えていくということです。

 北出 つまり、13米穀年度になる前にも、さまざまな需給調整を行っていくことがポイントだ、ということですね。

 水野 昨年も17万トンの生産オーバー分を飼料用に処理することで単年度の需給はこれで均衡するはずだと考えられていました。均衡すれば米価も下がり続けることはないだろうということでしたが、実際には流通在庫がずいぶん影響していることが分かったわけです。そうしたわれわれの想定のつかないことで売れ残ることは十分あり得ることです。
 ただ、そうした不安があると、結局産地は取り残されないようにと売り急ぐことになります。ですから、今回は売れ残った場合の対策をきちんと立てて産地が売り急ぐ必要がない対策を考えたわけです。

 また、この調整保管の量は当面24万トンとしていますが、かりに売れ残りがさらに増えるようなら同じ仕組みで処理することも検討しています。
 したがって、無理な売り方をする必要はないわけで、それをどの産地にも認識してもらいたいと思っています。そこを変えていかないと結局、いつまで経っても値引き合戦から脱し切れないということです。まさに、みんながここで米価を守るんだという気持ちにならないと流れは変わらないと思います。  

  求められる適切な品質競争への転換

 北出 最近の米流通業界ではとくに卸の再編が進行していますが、この傾向についてはどうお考えですか。

 水野 やはり卸会社の数が多いために、量販店など小売りに対しての競争も品質競争ではなく、価格競争になってしまっていると思います。
 今は、品質などに関係なく価格が決められている状況があると思いますが、結局、その価格に合わせるような米を探すということになってしまい、中身が何なのか分からないということも起きてくる。生産者が努力してつくった米が消費者にきちんと届くということになっていない面を生んでいますね。

 したがって、業界が再編され信用のある大手の卸業者が生まれれば、適切な品質競争ができるのでしょうし、業界もそれをめざしているのだと思います。

 北出 JAグループの組織統合も進んでいますが、米穀事業の方向はどうなるのでしょうか。

 水野 米穀事業でいえば、全農は自主流通法人ですから統合すれば県本部も自主流通法人になるわけです。ただ、自主流通法人は小売りに直接販売することはできないので、県本部の卸業務については別会社にするしかないという問題がでてきました。
 しかし、別会社にするといっても各県に一社ずつでは早晩立ち行かなくなるのではないかと考えられます。というのも、流通再編によって、どんどんマス流通がすすみ、1県だけの米を扱っている会社では企画提案は難しくなると考えられるからです。

 ですから、買い手側の広域化・大規模化に対応することが求められるわけで、当面、東西2社体制で広域卸体制をつくることにして、来年の4月から、東日本では、東京パールライスが核となった広域卸会社がスタートし、西日本も経済連卸の間で調整が進んでいます。
 やはり自分たちが生産したものは自分たちで販売するという農協本来の取り組みを進めていかなくてはならないと思いますね。  

  産地・JAも情報の取捨選択が重要に

 北出 非常に大きな変化のなかにあると思いますが、今後のJAグループの米穀事業にとって大切なことを改めてお聞かせください。

 水野 今後とも米は市場で評価されることは変わらないと思います。その市場での評価をいかに生産にいかしていくかということが産地としては大事になると思います。
 一部の有名銘柄ばかり生産するのではなく、たとえば量販店のPB商品ではさまざまな銘柄が使われるようになっていますよね。
 その場合、情報というものの捉え方が大事になると思います。今、産地は大体、卸業者から情報を得ていますが、その卸業者はどこから情報を得るのかといえば、量販店です。その量販店はどう価格を決めているかといえば、需給に関係なく決めているわけですね。競合他社との競争で少しでも安く売りたいということでしょう。だから、結局、価格情報しかなくて何を生産したらいいかという情報は十分得られないことになるわけですね。情報というものをどう取捨選択するかということも必要だと思います。

 また、今後も全体の需給調整や販売調整は全農の大きな仕事だろうと思いますし、経済連等は県単位の生産指導、JAも生産指導と生産者の要望に応えるように集荷していくことが大切だと思います。このようなそれぞれの役割分担を明確にしていく必要があると思いますし、それがいちばん生産者にメリットを還元できることになると思います。
 今回の対策は、いままでと違って、米の需給と価格安定の実現には相当効果があるだろうと思っています。そのためにはJAグループが足並みをそろえて取り組む必要があることを訴えたいと思います。

 北出 どうもありがとうございました。



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