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生産者・消費者から信頼される組織確立をめざして
特集 新全農がめざすもの、期待するもの

生産者と消費者の「もっと近くに。」
―― 新たな事業価値の創造へ挑戦する新全農

JA全農は、今年3月に21府県連と統合し27県本部体制の「新全農」となり、さらに来年4月合併を基本とした第3次統合を予定している。本格的な統合連合をスタートさせた新全農は、統合効果を速やかに発揮できる組織・事業体制を整備し、事業環境の変化に迅速に対応するために向こう5年間の戦略と施策を明らかにした「中期事業構想」を策定し、その実現に取組んでいる。
 「中期事業構想」がめざすものは、事業価値の創造と信頼される組織の確立だが、その具体的内容は多岐にわたっている。その中から、生産者と消費者の「もっと近くに。」という新全農のメッセージの内容をもっともよく表していると思われる事業に取材するとともに、改めて「中期事業構想」のポイントを紹介する。

より農家に接近し地域に根ざした事業を展開
―― 地域別飼料会社の組成

◆平成3年に提起、統合が追い風に

 輸入畜産物の増加などによる価格の低迷、生産者の高齢化と後継者不足などによって国内畜産生産基盤は年々縮小してきている。この生産基盤を維持・造成するために、ハイコープSPF豚100万頭生産体制の構築やETセンターに牛受精卵供給機能の強化などさまざまな取組みが行われている。こうした生産基盤対策と併行して取組まれているのが、飼料事業の競争力強化だ。
 JAグループの飼料事業は、海外での飼料原料の集荷・保管から輸送、国内での保管・生産から農家への配送まで、一貫した物流・生産体制をもっており、これは商社などにはない機能だといえる。こうした機能をさらに発揮するために、地域別飼料会社化が進められている。
 地域別飼料会社の組成は、すでに平成3年度に策定された「3か年計画」で提起されていたが、全農と県連の統合が追風となり平成10年10月に北日本くみあい飼料が最初の地域別飼料会社として立ち上がり、この4月には東海、西日本、四国の3つの地域別飼料会社が誕生。さらに来年4月を目途に北九州地域の飼料会社設立の準備が進められている(地図参照)。

◆現場第1主義で農家の信頼を

 地域別飼料会社組成の目的は、まず、現在は、飼料会社・県連(県本部)・全農(全国本部)の3段階で分担している機能のうち、生産・物流・営業(推進)機能を地域別会社に一体化することで、合理的事業方式を確立し、競争力のある飼料価格の実現をめざすことにある。機能の移行にあたっては、県本部や全国本部の担当者も地域別会社に移り(出向)仕事をすることになる。
 もう一つの大きな目的は、生産者・農家により接近した推進体制を構築し、農家の経営安定をはかることだ。つまり、営業(推進)機能を地域別会社がもち、人もそこに移ることで、直接、農家を訪問し農家の要求や不満を聞いたり、農家が困っていることの相談にのるなど、顔が見える関係をつくることで、農家の信頼をえるという現場第一主義を徹底しようということだ。

◆地域別会社と全農の機能

 地域別会社の組成によって、全農(全国本部、県本部)と地域別会社の機能分担がどうなるのかを整理すると次ぎのようになる。
 全農全国本部は、飼料原料の供給、飼料畜産中央研究所などを中心とする商品開発、価格改訂の政策的判断、基金や制度の問題、畜産事業の全国的な戦略策定や生産基盤対策、JACCネットなどによる情報提供、畜種別技術者の育成、飼料事業担当人材の育成と研修・講習、家畜衛生研究所などによるクリニックなど安全対策など、全国的な視野での対応機能。
 全農県本部は、県域での行政との調整、地域における生産基盤の育成、などの機能。
 地域別会社は、配合飼料の設計・製造・供給、品質管理、農家への推進、銘柄別価格設定、配送機能。また、単味飼料についても、配合飼料とセットで動くので、供給・推進機能が地域別会社に移行する。そして地域に応じた政策的判断も重要な地域別会社の機能となる。
 このことで、地域別会社は、商系に負けない効率化合理性を追求できるだけではなく、県本部と一体となって、地域に根ざした迅速で的確な意思決定を行うことができるようになり、生産者へのサービス向上がはかられていくものと期待されている。

◆共通の目標・目的で進む意識改革

 すでに、10年10月にスタートしている北日本くみあい飼料では、「同じ経営になった」ということで、会社として共通した目的・目標に向かって一体化して取組んできているので、宮城を中心に実績を伸ばしてきている。
 また、6つの工場が北日本にはあるが、各工場から人を出して工場を点検する「工場間診断」でも、従来は別会社であるために遠慮があり率直に意見交換することが難しかったが、一つの会社になったことで、率直に忌憚のない意見交換が行えるなど、大きく意識が変わってきている。
 全農全国本部や県本部から地域別会社にきた人と、従来から工場で仕事をしてきた人が協同組合の飼料事業として、より生産者に接近した事業展開をするという共通の目的・目標をもつことで、意識改革が進んで「勝てる体質に変わりつつある」といえる。
 飼料事業における地域別会社の組成は、新全農の生産者の「より近くに。」というメッセージを具体的に実践している事例といえる。

大規模農家・生産法人のニーズをつかむために
―― 担い手対応室活動

◆1年間にプロ経営者200人と直接面談

 大規模農家や農業生産法人は「地域農業の将来を支える担い手」とされているが、生産から販売まで一貫して行う自己完結志向が強く、栽培方法・商品・販売方法にこだわりが強い。そのため、JAの共販に対しては農家の努力が反映しない、価格が決められない、マーケティング情報がつかめない、システムとして拒否反応が強く、加えてJAの担当者が来ないうえに大口需要者のスケールメリットが不十分なことなどが原因となり、「JA離れ」が起きているといわれている。
 全農では昨年1月に、耕種部門の大規模農家・農業生産法人への対応強化とJAグループ利用率向上を目的に、総合企画部内に「大規模農家・農業生産法人を対象とした専門推進チーム」(通称DASHチーム)を設置(今年1月の機構改革で、営農総合対策部担い手対応室に組織変更)。1.大規模農家・法人の経営実態とニーズの把握、2.JA、県連現業部門等との協議によるスポット事業化の提案、3.ニーズに対応した新たな購買・販売事業方式の検討、などに取組んできた。

◆JAグループへ期待するものは

 DASHチームは昨年1年間に約200の大規模農家・生産法人を訪れ直接面談し、経営実態やJAグループへのニーズの把握を行ってきた。そこでJAグループへの要望としてもっとも多く聞かれたのは次ぎの4点だった。
 1.農地集積による規模拡大を進めたいので、農地集積の調整推進、農地賃貸借・作業受委託などの仲介などJAの機能発揮を期待する。
 2.安定した販売先の開拓・確保を進め、確実に販売代金の回収をはかりたい。特に、代金回収でのJA機能は魅力である。
 3.生産コストの低減を進めたいので、安い生産資材の提供を待っている。大口利用メリットの価格反映を求めている。
 4.制度資金を含めた融通の利く中長期・短期資金の融資制度を求めている。JAがもっと迅速な審査、経営面を重視した融資事業を行うことを求めている。

◆県版担い手対応室の設置を――宮城ではすでに実践

 現在、担い手対応室ではこうしたニーズをベースに、県本部・県連に対して、県版の担い手対応室を設置し、県内に1つでも2つでもモデルJAをつくり、地域のプロ農業経営者と面談してニーズの把握とノウハウの蓄積を行い、地域に根ざした県版対応方策の策定を提案している。
 すでに宮城県本部では、県内耕種部門110の生産法人の内55ヵ所で直接面談調査を行い、JAと県本部で分析し、県本部方策を策定しJAに対して生産法人への巡回活動を提案している。
 担い手対応室としては、JAグループ全体で、全国1500法人との新たな事業取引実現を目標としているが、「一定の部分だけでもパートナーとしてJAグループとやっていきませんか」という提案を行っている。
 「平等か、公平か」はここ数年、JAグループにとって大きなテーマとなっている課題だ。担い手対応室の取組みは、JAグループにおいて「事業の公平性を重視した運営への転換」をはかるための意識向上を促進する活動だといえる。そのことで、5年後、10年後の日本農業を担うであろう大規模農家や生産法人などに「信頼される組織」としてのJAグループ確立を実現しようとしている。

◆各部門スペシャリストがチームを組み専業農家へ――JAそお鹿児島

 すでに、平成10年から担い手対応室と同様な発想で取組んでいるJAがある。それはJAそお鹿児島の「農家対策特別班(TAF=トータル・アドバイザー・ふれあいを意味する)」だ。
 JAそお鹿児島は、鹿児島県曽於郡の7町を管内に平成5年に誕生した広域JAだ。合併によって販売・購買の両面で総合的な効果を発揮できるようになった反面、地域に密着した細かな対応不足から、力のある組合員のJA離れという問題が生じてきた。JAでは、「職員・JAのためのJAになりつつある傾向に歯止めをかけ、組合員のためのJAを取り戻すために」「組合員の要望・意見に迅速的確に応えることを通じて、JA事業に対する理解と利活用を進めようという趣旨」でTAFを参事直轄で発足した。
 TAFのスタッフは30歳代中心の一般職員8名だが、それぞれが購買・金融・指導員など各部門のスペシャリストでもある。1人あたり専業農家を中心に150軒ほどを受け持ち、毎日、農家の庭先や圃場へ生産者を訪ねて要望や意見を聞いて回っているが「けして物売り(推進)はしない」。また、各部会の総会や検討会、認定農業者審査会などにも出向き、生産者と膝を突き合わせた話し合いも行っている。
 スタッフは毎日のミーティングで、個々の農家の購買・販売・税務・資材などの悩みや相談に、互いに助言しあって対応すると同時に、JAではTAFスタフが集めたJAに対する要望を事業の方向性を模索するときの指針として活用している。
 TAFの活動によって、営農指導員がTAFスタッフと一緒に巡回する機会も増え、必要に応じて普及所や経済連・全農職員も同行し、農家の疑問や問題の解決に取り組んでいる。その結果、系統外利用者のJAへの求心力が高まるなどJA事業の利活用に確実に結びついてきている。

生産者・消費者・地球に安心を
―― 全農安心システム

◆輸入農産物にどう対抗するのか

 食料自給率の向上がいわれる中で、国内の農業生産基盤は、輸入農畜産物の増大と量販店による価格支配、生産者の高齢化と後継者不足などにより、年々縮小する傾向にある。そうした状況のなかで、国内生産基盤を維持・発展していくためには何をしなければいけないのかが、いま問われている。輸入野菜に対しては特定の品目について200日間だけのセーフガードが発動された。本格発動されても4年後の対策がなければまた元の木阿弥になってしまうこともありうる。
 生産・流通での低コスト化は必要不可欠だが、現時点での為替レートや海外産地の人件費を考えれば、価格や品質で対抗できるとは考えにくい。安全面でも、国内産品と同等の安全性は確保されており、これも対抗策になるとはいい難い。
 それでは、国内生産者が消費者の支持をえるためにはどうしたらいいのだろうか。その有力な一つの答えが「全農安心システム」の考え方だといえる。

◆産地と消費者が協議して「個別基準」を策定

 「安心システム」はJASの有機認証などと同様に格付け・差別化をするものだと誤解されているむきもあるが、まったく違う考え方にたったものだ。国内農業が存亡の危機にあるともいえるこの時代に、差別化して一部の生産者だけが生き残れたとしても、農業にとってどれだけの意味があるのかは疑問だ。そうではなく、地域全体の農業をもう一度考え、消費者と一体となって食と農の距離を縮めようというのが「安心システム」の基本的な考え方だ。
 具体的には、産地と生協や量販店など取引先(消費者)が、個別品目ごとに、商品コンセプト・生産方法・使用資材・再生産コストを尊重した販売条件・表示方法・検査方法など「個別基準」を協議・合意し、それに基づいて生産される。しかし、これは有機栽培とか減農薬減化学肥料栽培などに限定されているわけではない。あくまでも地域資源循環型農業など環境負荷の少ない農業をめざしながら、産地と消費サイドが合意して共同開発をするというものだ。

◆生産工程・品質検査を行い認証

 生産者は生産工程を所定の様式でパソコン入力し記帳し、その生産履歴情報は全農のデータベースを利用して開示される。生産資材の使用履歴を明確にするために資材はJA利用を原則とし、それ以外の場合は情報を開示しなければならない。さらに、全農主催の「生産工程管理者講習会」を受講した生産工程管理者が、生産工程をチェックし、状況の定期報告、出荷計画などを全農へ連絡する。
 産地と取引先で協議・合意された「個別基準」に照らし合わせて、圃場検査・生産工程検査が行われ、さらに必要に応じて残留農薬分析・栄養分析・食味分析などの品質検査が実施され、問題がなければ安心システムの「認証」が与えられる。

◆21世紀の生産・加工・流通・消費の基盤を創造

 この「安心システム」は生産者の安心、消費者の安心、そして地球の安心という3つの「安心」を実現することを目的に開発された。「生産者の安心」とは、輸入農畜産物に対抗し、自給率を向上させるために、消費者に支持される農業生産と加工・流通の仕組みをつくる。国内生産が持続できるように、消費者と連携した生産の仕組みをつくる。食品危害による風評被害を防ぐために、情報開示を行い消費者に支持してもらう仕組みをつくることだ。
 「消費者の安心」は、食品危害の対応策として生産履歴の遡及が可能な仕組みをつくる。消費者の食品への不安を取り除くために、食品にかかわるさまざまな情報を開示する仕組みをつくることで保障する。
 「地球の安心」は、耕種生産者と畜種生産者、消費者が連携した地域循環型農業の仕組みをつくる。生産者と消費者が共通の理解ができる環境監査の仕組みをつくることだ。
 そしてこれをベースに、21世紀に対応できる農畜産物の生産・加工・流通・消費の基盤を創造することが「安心システム」の目的だといえる。
 農業生産を生産者が一方的に行って作ったものを買ってもらう時代ではなく、生産者と消費者が互いに合意した共通の基盤にたって生産者が生産し、それを消費者が支持するという「信頼関係」によって国内農業を維持・発展させていくというのが、このシステムの思想だといえる。
 「安心システム」そのものは消費者団体との直販を前提にしているが、この思想を市場流通農畜産物にも敷衍し、消費者に産地としてきちんと伝えることができれば、価格では輸入農産物に対抗できなくても消費者の支持を得ることはできるのではないだろうか。「安心システム」の思想は、これからの日本農業を考えるうえで重要な役割を担っていくものだといえる。そのためにも、この事業化は成功させなければならないといえる。(安心システムの基本概念図

広域一体化でさらなる競争力を
―― 全国Aコープチェーン

◆効果をあげてきている一体化県

 量販店、コンビニ、百貨店など小売業界は、消費者の買い上げ点数の減、必要量目の買い物に徹するなど節約指向の顕著なあらわれもあって、既存店売上高の大幅な減少を新規出店の上乗せでカバーする状態がここ数年続いている。
 組合員や地域住民の食生活を中心とする生活を支える拠点としての役割を担ってきたAコープも、こうした流れに対して例外ではありえない。第22回JA全国大会の決議では、赤字が1/2を占める生活関連施設の抜本的対策が必要だとされた。
 昭和47年に結成された全国Aコープチェーンは、平成元年から組合員、地域住民の食生活の中心を担う事業として「農協らしさ」の発揮による特色ある店舗運営の強化と、チェーン一体化(レギュラーチェーン化)による抜本的経営改善と事業の効率化を進めてきた。その結果、12年度末には全国Aコープチェーン加盟41県1ブロックの半数を超える24県で一体化が組成され、チェーン売り上げの約35%の店舗が一体化に参加することになった。
 一体化県では個別店舗の経営改善に効果をあげてきており、店舗規模も加盟条件の見直しと新規店舗の大型化によって拡大してきている。

◆食品スーパーに業態特化

 一体化の運営形態は、運営委託・受委託・経営一体化とさまざまな段階にあるが、13年度からの3カ年計画では、県経営一体化をさらにすすめ、ブロック別広域会社(広域一体化)の設立により、さらに効率的で競争力のあるチェーン体制の確立をめざしていくことにしている。すでにいくつかのブロックで、広域一体化会社へのむけての協議がすすめられているという。
 また、広域一体化会社発足時にはその商品部となる広域商品部は、現在、東北・関東・北陸・近畿・中国・九州に設立されてるが、今後も、取扱商品の標準化、統一化をさらにおしすすめて、県単位の仕入業務を広域商品部に一本化し、いっそうの規模メリット追求していく。
 今後のAコープチェーンの業態としては、衣料など非食品分野はテナント方式への変更か閉鎖を含めた軌道修正を行い「食品スーパマーケットに徹する」ことで、系統農畜産物の有力な販売チャネルとするとしている。
 店舗コンセプトとしても、Aコープ店舗を生産者組織として国内農畜産物販売の戦略拠点として位置づけ、生産者コーナーを設けるなど地場の農産物必ず取り扱うなど、生鮮食品に圧倒的な強さを発揮することを掲げた。また「農協らしさ」の発揮はAコープ店舗の最重要課題だが、そのために組合員利用者の意見反映ができる「店舗利用者懇談会」を全店で設置する。

◆加盟店舗総点検運動で経営方向を確認

 こうした施策を実行する一方で、赤字店舗を計画的になくしていくために「加盟店舗総点検運動」を実施していく。この総点検運動は、チェーン加盟1248店舗と未加盟だが県本部が経営状況を把握している273店舗(県チェーン加盟店)の全店舗で実施される〔これ以外の未加盟店舗は全中主催の再構築検討委員会(仮称)が実施〕。
 そして、1)黒字基調店舗と現状は赤字だが経営改善により黒字化が可能となり存続できる店舗、2)赤字店舗で業態転換をする店舗、3)閉鎖する店舗に区分し、今後の経営方向を確認する。
 この総点検運動の実施期間は15年度末までだが、13年度上期には点検を終え、その後JAと協議しながら、業態転換(高齢者介護、葬祭事業などの拠点)、閉鎖を行っていく考えだ。
 このことはかなり厳しい選択を迫られることではあるが、Aコープが組合員利用者の食生活のよりどころであり、地産地消を自ら実践し生産者の営農を支援する販売拠点となるためには必要なことだといえる。自らの経営がたちいかなくては、組合員利用者の要望に応えていくことはできない相談なのだから。

あるべき姿を数値化し決意を明確に表明
―― 新全農「中期事業構想」のポイント

 新全農が策定した「中期事業構想」の特徴は、新全農の役割・使命として、地域農業の振興支援、販売力・商品開発力の強化、生産資材コストの低減、安心・快適な地域社会の創造、JAグループ経済事業の再構築と収支確立の5つを掲げ、それぞれの重点施策を明確にし、それを実践する行動計画で、各項目ごとに年度別目標数字を明らかにして、この構想の最終年度である17年度の「めざす姿(数値目標・行動目標)」を明示していることだ。
 例えば、今回の特集で取り上げた「担い手対応力の強化」では、15年度には県域での専任対応体制を構築し、17年度にはJAへの専任担当者の設置促進(80%設置達成)と連合会推進体制の拡充がめざす姿となっている。そしてそのことで、大規模農家・農業生産法人との取引実現を15年度500、17年度1500としている。
 また「安心システム」では、検査員の養成人数を13年度80人、15年度140人とし、認証される産地・取引先数は、13年度五十、15年度200、17年度400とし、17年度には認証を第3者機関化して事業の定着化をはかるとしている。
 その他、肥料農薬などの農家配送拠点については、継続的整備により最終的には全国約300ヶ所に拠点集約する。さらに「低コスト資材を対象重点品目とし、これにJAグループ全体を通じた業務・物流改革によるコスト削減および大口ロット対策を積み上げ」生産資材コストを「最大で20%」削減するとしている。
 こうした目標の数値化は、従来の抽象的表現とは異なり、生産者・組合員に新全農のめざすものとその行動を明確に示すものとして好感をもたれるだろう。その反面で、具体的な数字を実現するための新全農の責任は重いともいえる。
 その重い責任を果たすために「中期構想」は、事業改革・業務改革・物流改革・組織改革そして意識改革の5大改革を実践するとしている。ここに21世紀を迎えて、新たな事業価値を創造しようとする新全農のなみなみならぬ決意が読み取れるのではないだろうか。


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