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特集

JAグループ経済事業と生産法人
−経営状況とJAグループに対する意識調査


東京大学大学院 農学生命科学研究科 教授 八木 宏典
 これからの日本農業を考えるときに、農業を主たる職業とする大規模農家や生産法人の果たす役割を抜きに語ることはできない。しかし、その一方でこうした階層の人たちの「JA離れ」も大きな問題と指摘されている。そこで農協協会では今年2月に、全国の耕種部門生産法人500を対象に「大規模農家と農業生産法人の経営状況とJAグループに対する意識調査」を実施し、350法人(回収率70%)の回答を得ることができた。
 この調査結果をJAとの関係を中心に、八木宏典東大大学院教授に分析していただいた。

1.生産法人の経営概況

 今回アンケートに回答いただいた350の農業生産法人の平均売上げ額は8,390万円で、平均経営耕地面積は60.5haであった。また、経営部門別では稲作が34%、露地野菜が8%、施設野菜が11%、その他部門が38%の構成となっている。売上げ額の規模をみると、3千万円未満41%、3千万円〜5千万円17%、5千万円〜1億円21%、1億円〜3億円16%、3億円以上5%である。経営耕地面積では水稲で160ha、麦で110ha、大豆で100ha、露地野菜で90haを作付けする大規模経営もあるが、平均すると水稲27ha、麦24ha、大豆20ha、露地野菜18haである。
 従業員は平均して正職員7.9人(うち男性4.4人)、パート47.0人(うち男性12.7人)である。しかし、正職員のいない法人から正職員90人を擁する法人まで、その規模に幅がある。また、パートも1,2人から7,000人の雇用まで幅が大きい。
 なお、3年前に比べて売上げ額が増えたと答えた法人の割合が29%ある一方、売上げ額を減らしたと答えた法人の割合も23%あった。その中で、米価が低落基調にあったこの3年間に、米の売上げ額が減ったと答えた法人の割合が23%ある一方で、増えたと答えた法人が19%ある点が注目される。農産物価格の低迷や消費動向の変化など経営を取り巻く環境変化に対応した経営努力が必要とされているが、その違いがこのような数字にあらわれたものと考えられる。

2.生産資材の購入額と購入先

 法人の生産資材の購入額と購入先を聞いた結果が表1である。まず肥料については、1法人当たり購入額は337万円であるが、その52%はJAから、32%は地元業者から、15%は農業資材専門店から、1%はホームセンター・ディスカウントストアから購入されている。およそ肥料の半分がJAからの購入であるが、残りは他の業者から購入されている。農薬については、1法人当たり購入額は178万円、その48%がJAから、35%が地元業者、16%が専門店、1%がホームセンターなどである。農薬はJAからの購入が減り、地元業者や専門店からの購入が増えている。農業機械については、1法人当たりの購入額は381万円、その39%がJA、50%が地元業者、11%が専門店からの購入である。農業機械は、さすがにホームセンターなどからの購入はきわめて限られているが、しかし地元業者からの購入が半分に達するなど、JAとの立場が逆転している。農業用資材については、1法人当たり購入金は557万円、その41%がJA、33%が地元業者、24%が専門店、2%がホームセンターなどである。農業用資材は専門店やホームセンターなどからの購入割合が高くなっていることがわかる。以上のように、生産資材の購入額は合計して1法人当たり1,500万円近くに達するが、JAからの購入は肥料以外はいずれも半分を割っており、農業機械ではすでに4割を切っている。
(表2 JAから生産資材を購入する理由)
(表3 JAから生産資材を購入しない理由)

3.農産物の販売額と販売先

 生産法人の農産物販売額と販売(出荷)先を整理したものが表4である。法人によっては米や野菜だけの単一経営もあれば、米のほかに麦・大豆や野菜などを生産する複合経営もあるので、この作目別販売額と1法人当たり売上げ額とは必ずしも一致しない。
 まず、米を生産する法人の1法人当たり平均販売額は2,530万円であり、その販売(出荷)先別割合はJA45%、卸売業者等17%、直接市場へ1%、量販店・外食企業等6%、直営店舗2%、消費者へ直販29%である。JAを通じた販売はすでに半分を切っており、業者関係への販売が25%、消費者への直販が31%となっている。平成6年に新食糧法が制定されてからまだ10年も経たない間に、法人の米の販売チャネルの大きな変化と多様化が進んだことがわかる。
 麦・大豆の平均販売額はそれぞれ680万円と470万円であり、販売先はいずれも8割以上がJAである。業者への販売が10%ほどあり、消費者への直販も一部にはあるが、圧倒的多数はJAを通じた販売になっている。麦・大豆が転作によって新しく増加した作目であるためであろう。
 野菜は露地、施設ともに平均販売額は3千万円〜3千5百万円であり、そのうちJAへの出荷はおよそ3割である。いずれも量販店・外食企業への販売が2割、消費者への直販が2割ほどあり、量販店や外食企業等との直接取引きの割合が高い。残りについては露地野菜は卸売業者等への出荷が多く、施設野菜は直接市場への出荷が多いという特徴がある。
 その他部門には工芸農作物や果樹、花卉などが含まれているものと思われるが、平均販売額は9190万円、そのうちJAへの出荷は22%で他の作目に比べると少ない。また、販売チャネルも多岐にわたっている。
 以上のように、生産法人の農産物のJAへの出荷は、麦・大豆を除くと、いずれも半分を割っており、しかも販売先もきわめて多様である。しかも米においても、消費者への直販など多様な販売チャネルが模索されていることがわかる。

4.情報の入手先

 生産法人の新資材や新技術、そしてマーケットなどの情報の入手先を整理したものが表5である。まず生産資材情報の入手先で最も多いのが業者・メーカーの担当者であり、次いで農業関連情報誌、農業改良普及センター、JAの営農指導員、業者・メーカーのホームページ(HP)の順になっている。法人の30%がJAから情報を入手しているものの、その順位は第4位である。
 新技術などに関わる情報の入手先では、業者・メーカーの担当者、農業関連情報誌、農業改良普及センター、農業試験場など研究機関、JAの営農指導員、業者・メーカーのHPの順となっており、やはり業者・メーカーや情報誌からの情報入手の割合が高く、JAは第5位となっている。
 また、販売市場情報については、販売取引先、業者・メーカーの担当者、市場から、量販店や生協など消費者サイド、日本農業新聞、JAの営農指導員、有料ファクス通信、業者・メーカーのHPの順である。法人の農産物販売(出荷)先に占めるJAの割合がそれほど高くないこともあり、JAからの情報入手の割合も低い。しかも、生産資材情報では3割あったJAの割合が、販売市場情報では19%にまで落ちている。現在の法人経営の浮沈を決めるものはマーケティングあり、販売市場情報等の収集であるといっても過言ではない状況のもとで、情報の入手先としてのJAの割合の低さは問題であろう。

5.コメについてのJAへの期待

図1

 次に、米を生産している119の生産法人に限って、米の生産・販売についての意向を整理した。まず生産調整については、必要であるとした法人は50%で、不要である15%、必要だが自分自身はやれない13%の順になっている。半数の法人が米の生産調整は必要であると考えているものの、不要である、またはやれないという法人が3割近くもある。また、生産調整未実施者について( 図2 )は、タダ乗りであり問題であるとする法人が44%、個人の自由であり米価が下がってもやむをえないが10%、生産調整を止めて農家の自主判断に任せるが23%となっている。生産調整未実施を問題としている法人が多いものの、その一方で33%の法人がそれを容認している。

図3

 法人がJAに米を出荷する理由については、米の全体需給と価格安定のためが22%、代金回収等のリスクがないが18%であったが、JAが販売努力をしているはわずかに3%であった。また、JA以外に米を販売する理由については、最も多いのが消費者に直販したほうが手取りが良い43%、次いで固定的な販売ルートがある39%、量販店や消費者の評価を直接得たい29%、JAよりも業者に販売したほうが手取りが高い25%、JAが販売努力をしていない24%などである。いずれも手取りの高さや消費者情報の入手をその理由にあげている。さらに、米事業についてのJAへの期待( 図5 )は、高価格での販売が23%、弾力的な取り扱いや様々な販売努力が17%、こだわり米など個選共販体制が14%であった。全体として現在のJA米事業における営業努力を問題にしており、経営の効率化と小回りのきいた事業展開を期待している。

図4

6.生産法人がJAに期待すること

 最後に、生産法人がJAとどのように関わり、またJAにどんな期待を持っているかをまとめたものが表6である。まず、現在、法人がJAから支援を受けている内容は、事業に必要な資金の融資56%、生産資材での特典措置22%、販売面での優遇措置10%、情報の迅速な提供12%、農地の借地権・作業受託の斡旋14%、経営・税務の相談7%、他の生産法人との連携8%などである。法人設立時にJAから資金面や情報面で支援を受けた法人もあり、10〜20%の法人はかなりJAと親密な関係にある。そしてまた、56%の法人がJAから資金の融資を受けている。しかし、多くの法人がJAとの事業上の連携をとっていないのが現状である。しかし、法人がJAからの支援を期待している内容をみると、59%が資金の融資、50%が生産資材での特典措置、35%が販売面での優遇措置、30%が情報の迅速な提供である。先の現状と期待との差をみると、生産資材で28ポイント、販売面で25ポイント、情報で18ポイントもの違いがある。言いかえれば、多くの生産法人が生産資材、販売、情報の面でJAの支援を期待し、JAとの事業連携を望んでいるのである。そしてこのことは、JA側の事業効率の改善と営業努力のいかんによっては、かなりの生産法人との共存・共栄が可能であることを示唆している。

表6・表7


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