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特集: 安全防除優良JA拡大運動

インタビュー
JA全農肥料農薬部農薬技術普及課 近藤俊夫課長に聞く

 「生産者・農産物・環境」の安全確保を掲げて安全防除運動に取組んでいる全農は、平成10年から防除日誌記帳を核とした安全な農産物づくりの運動を生産現場からの自発的運動とするために「安全防除優良JA拡大運動」を立ち上げた。そこで12年度のこの運動の成果と課題を近藤全農農薬技術普及課長に聞くとともに、優秀JAとして表彰されたJA須高に取材した。また、試験所認定の国際規格ISO/TEC17025を国内初取得した全農農産物・食品検査室にも取材した。

◆3つの安全を柱に安全な農産物づくりを推進

  ――   まずはじめに、JAグループの安全防除運動に取り組む基本的な考え方をお聞かせください。

  近藤   農産物の安全性や環境保全に対する消費者の関心は年々高まっていますが、農薬の安全性そのものの問題はもとより、農産物の残留農薬から農薬空容器処理にいたるまで農薬の取り扱いについてきめ細かな配慮が求められています。また、残留農薬基準値の追加設定など、農薬に関する規制が強化されるとともに、新農業基本法のもと「持続性の高い農業生産方式の導入の促進に関する法律」も施行されました。  こうした状況に対して、JAグループとしては従来から進めてきている「農家・農産物・環境」の3つの安全を柱とした安全防除運動を生産現場に定着させ、安全な農産物を提供するとともに、環境に配慮した防除の実践にも取り組んでいます。また、これらの取組みについて一般消費者に広く理解を求めていくことが重要だと考えています。

  ――   運動の柱は…。

  近藤   1つは「安全な農産物づくりの推進」です。登録のある農薬の使用はもちろんのこと使用濃度や使用回数、使用前の日数など、農薬の安全使用基準を守り、消費者に安全な農産物を供給することです。  具体的には、JA・作物部会ぐるみで基準どおり正しく防除した記録を防除日誌として記帳し、農薬の適正使用を徹底することです。そしてこの運動の定着をめざして「安全防除優良JA拡大運動」を推進しています。  安全防除優良JA拡大運動の実施にあたっては「全農安心システム」など販売事業との連携によって運動の生産現場での定着もはかっています。  また、「安全な農産物づくり講習会」を開き、現場での実践的指導者の育成に取り組むとともに運動に参加する産地をバックアップするために農産物の残留農薬分析の実施や現場レベルで取組める残留農薬の簡易分析法(イムノアッセイ)の確立と普及などにも取組んでいます。

◆環境に配慮した防除技術の開発と普及

  近藤   2つ目は、病害虫・雑草防除の省力・低コスト化をはかるとともに、環境負荷を軽減する防除技術の開発・普及に取組む「環境に配慮した防除の推進」です。  具体的には、フェロモン剤の利用や在来天敵に影響の少ない薬剤の選択など環境に配慮した総合的病害虫管理(IMP)体系の確立と普及など、生産現場での持続的農業生産の取組みを積極的に支援していきます。そのほか、環境に配慮した農薬の施用技術の開発・普及、臭化メチル削減・代替対策の積極的な推進、プラボトルなど農薬空容器の産業廃棄物としての処理定着などにも取組んでいます。  3つ目が、農薬の正しい使用方法、危被害防止対策などをJA・農家に周知徹底し、農薬に起因する事故の発生を未然に防止する「農薬の安全使用対策」です。  また、農薬安全使用基準の遵守をJA・農家に徹底するとともに、マスコミ関係者や一般消費者に対して防除の必要性と使用基準を遵守した農産物の安全性についての正しい理解、JAグループの取組みなどについて積極的に広報活動を展開することも大切だと考えています。

◆運動の取組み内容を消費者にも情報開示

  ――   安全防除優良JA拡大運動は、12年度で3回目になりますが、どのような成果があったとお考えですか。

  近藤   12年度は8JAが参加し、そのうち4JAが表彰されました。全体的にみた成果としては、研修会の実施や総合防除の取組み、防除日誌の記帳などに産地ぐるみで取り組むことにより、安全防除に対する意識の向上がはかられたことがあげられます。  それから、一部のJAではありますが、防除指導面からの取組みだけではなく、販売事業戦略として取組んでいる「安心野菜」の取り組みと連携することで、農家が主体的に取組める運動として評価されています。今全農が進めている農産物の認証システム「全農安心システム」との連携は、今後この運動を拡大していく方策のひとつとして期待できると思います。  また、防除暦点検、防除日誌記帳・点検、残留農薬分析という一連の活動によって、使用基準を守って生産した農産物の安全性について自ら確認・実証することができたことは、大きな成果ではないでしょうか。中には自らの取組み内容を生協などを通じて消費者に積極的に開示し、理解を得る活動に取組んだ事例もありました。こうした取り組みも今後の運動にとって大事なことだと考えています。

◆着実に進んでいる安全な農産物づくりの取組み

  ――   安全防除優良JA拡大運動では取組み結果を防除暦の評価、防除日誌の評価、安全使用基準の遵守、残留分析、総合評価としてまとめられていますが、それぞれの項目で12年度目立ったものはありましたか。

  近藤   防除暦は各JAとも安全使用基準にそって適正に作成されていました。また、無駄を省いた分かりやすい防除暦で適正使用、ローテーション防除の指導に活用できるよう配慮されたものなど、それぞれ工夫のあとが見られました。  防除日誌でも記帳しやすいよう工夫しているJAが複数ありました。記帳も全体的には適正に記帳されていましたが、ごく一部の農家で必要事項の記載漏れもありました。日誌記帳時に間違いや記帳漏れがおきないよう、日誌そのものに工夫をした例もあり、他のJAの参考になりました。  安全使用基準の遵守についても、ほとんどの農家で防除暦にもとづいて適正に使用されていました。また水稲では育苗箱施用剤の普及によって本田散布が低減し、防除の合理化が進んでいるのが目立ちました。ただ、使用回数や使用濃度にまちがいがあるケースもみられ、さらに取組み強化が必要だとの反省の声もありました。

  ――   残留農薬分析の結果はどうでしたか。

  近藤   農薬を適正に使用した農産物の安全性について、現場レベルで実証することができたのは大きな成果だと考えています。  農薬はそれぞれについて人が一生涯食べつづけても安全である量が決められ、それをもとに農産物ごとに残留基準が決められていますが、今回の防除日誌に記載のあった542の農薬すべてについて分析した結果93%が「検出せず」でした。わずかに検出された事例も基準値に比較してはるかに小さい値でした。あらためて、具体的数字として安全性が確認できたわけです。

  ――   その他とくに目に付いた活動はありましたか。

  近藤   水稲ですが、農家の高齢化が進む中で防除の省力化・合理化に努めながら安全使用基準の徹底指導がはかられているJAがありました。また、果樹ではIPMに取組むとともに農薬の空袋、空ボトルの回収など環境問題にも積極的に取組んでいるJAもありました。ごく一部に記帳漏れや使用方法の誤りもありましたが表彰されなかったJAも含めて、熱心な指導がされ安全な農産物づくりの取り組みは着実に進んでいるというのが12年度結果を見ての感想です。  さらに取り組みの拡大をめざして努力していきたいと思います。


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