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特集:2003 おんなたちのPOWERで「変革」の風を
    −第48回JA全国女性大会特集−

座談会
女性たちのパワーで元気な町づくり・村づくり
使命感と自覚を持って。リーダー育成が大きな課題
出席者
峰島歌子氏 JA全国女性組織協議会会長
石田正人氏 JA北信州みゆき代表理事組合長
森澤重雄氏 JA全中営農地域振興部長


「女性協は大きな組織だから夢も大きく持ちたい」と女性協の峰島会長は語る。地域づくりについて女性としてはJA参画にとどまらず、広く「社会参画も展望して進みたい」とのことだ。そのためには社会的な知識を身につける学習の積み重ねが必要とした。JA北信州みゆきの石田組合長は「女性の正組合員を3000人に、総代を3割にしたい」と意気込む。女性リーダー育成のために保育園つきの女性大学校を開設するなど同JAの女性部支援は積極的だ。組合長は、女性でなければ果たせない役割と使命感に対する自覚を強調した。JA全中営農地域振興部の森澤部長は、食の安全・安心に向けた生産工程管理・記帳運動の取り組み事例やファーマーズマーケットの全国的な現状などを紹介しながら女性部活動に関わる鼎談の論点を多彩に発展させた。地産地消、子供の農業体験学習、そして農村文化と話題はつきなかった。


◆社会参画も展望
  大きな夢を持って

峰島歌子氏
みねしま・うたこ 昭和63年長生農協婦人部長、平成元年千葉県農協婦人部協議会理事、8年JA千葉女性部協議会副会長、10年同会長、11年JA関東甲信越地区女性組織連絡協議会副会長、12年同会長、13年JA全国女性組織協議会副会長、14年同会長。

 森澤 女性のみなさんのパワーを引き出すようなねらいで、ざっくばらんにお話いただきたいと思います。現状は食の安全安心の問題1つをとってもJAをめぐる環境は厳しく、一方、地域社会の少子高齢化はJAの組織基盤と活力の面でも課題です。そうした中で、女性は地域農業の6割を担い、その活動は地域社会の発展にとって非常に重要になっています。そこで峰島会長から、まずJA女性部活動の現状についてお話いただければと思います。

 峰島 私が昨年、会長に就任して初めての仕事が全農チキンフーズ事件への対応でした。それから無登録農薬問題があり、最近は「八女茶」問題です。
 全農という組織の大きさにも問題があるんじゃないかと思いますが、私たちはただ騒ぎ立てるのではなく、安全・安心な農畜産物を供給するために自分たちでやれることは何なんだということを落ち着いて、よく考えて取り組まないといけないと思います。そのことを改めて女性組織全体に呼びかけます。
 今、私たちができることは、自分も消費者であることから、地域を住みやすくし、家庭と個人のためにもなる地産地消の取り組みが1つあります。
 女性の細やかな感性が重視されていますが、合わせて世の中がどうなっているのかをよく見詰め、考え、学ばなければ、よい活動ができないので学習も必要です。そこで、いろんなセミナーを女性組織で開催しています。社会的知識を身につければすばらしいJA参画ができるのではないかと考えています。
 女性であればいいというのではなく、物事を自分で正しく判断できるように学習を積み重ねて社会参画まで展望し、JAが批判を招かないような方向へ持っていければいいと思っています。私たちの組織は大きいので、やはり大きな夢と希望を持って進んでいこうということです。
 とりわけ私たちの健康を守るための安全・安心と、地産地消に留意して学習しています。

◆女性正組合員と総代を3割に

石田正人氏
いしだ・まさと 昭和39年飯山市常盤農協入所、飯山市農協生活課長、生活部長、生産部長を経て、62年参事、平成3年いいやまみゆき農協参事、専務理事を経て、10年代表理事副組合長、11年北信州みゆき農協代表理事組合長、13年長野県農協中央会理事、信連・厚生連経営管理委員、全農長野県本部・全共連長野県本部運営委員。

 森澤 JA北信州みゆきの管内は中山間地帯や観光地も抱える中で、JAは農業振興や地域起こしなど様々な先進的取り組みを行っていますが、女性に視点を置いた取り組みの現状と特徴はいかがでしょうか。

 石田 農山村の急速な高齢化で、おやじたちだけの力では農業も農村も農協運動もだめになっちゃうぞという状況です。女性のみなさんに担ってもらわなければどうにもならないといった現実の中で、女性の正組合員を3000人にしようと昨年から積極的に取り組んでいます。
 今年はちょうど総代改選の年なので、550人のうち少なくとも、その3割は女性総代にしてしまえと今、候補者の名前が挙がってきており、150人くらいは女性になりそうです。
 建前論で女性参画社会だ、女性の理事とか参与をつくろうといっても形だけではだめです。その底辺にしっかりと女性の正組合員と総代がいて、総代会で絶えず女性の声が出てくるような体制をつくらない限りどうにもなりません。そういう総代会になれば、峰島会長が今いわれたようなことが農協運動の大きなテーマとして、どんどん出てくるだろうと期待しています。
 2100人の女性部員がいますが、そこを卒業したみなさんはエルダーとして再度、役割を果たしてもらいます。
 失礼ながら女性のリーダーはまだ育っていません。育っているじゃないかとの反論もありますが、JA合併で大きくなった管内や地域社会の変化にふさわしい女性リーダーを何が何でもつくり上げていこうと一昨年からJA女性大学を設けました。
 月2回ほどの学習で、今年10月には2年の課程を経た卒業生が巣立ちますが、さらに2年の研修課程を設けて計4年間学習してもらう計画もあります。こうして農業や女性の役割を明確に認識してもらえば、かなりいい女性運動として農村をリードできる力になると思います。
 卒業生たちが5年後に立派な女性リーダーに育つことを期待していますが、現実には大変です。女性大学生は35歳が平均年齢でみな子供を抱えています。このため開講日はJA事務所の3階和室に保育園を開き、退職した保育士や女性部員に面倒を見てもらっています。
 これまでJAのことは女性の間の話題にならなかったのですが、大学生たちを通じて話題にのぼるようになっています。とにかくみな元気ですよ。農業も観光も。JAも女性を中心に元気にならなくちゃ。それから私は、女性参画でなく、もう「共有」の時代だよといつもいっています。JAを女性とともに共有していこうというわけです。

◆女性部活性化は若いパワーで

森澤重雄氏
もりさわ・しげお 昭和24年生まれ。茨城大学農学部畜産学科・農学研究科卒。昭和49年JA全中入会、水田農業課長、人事課長、広報課長、総合企画部次長を経て、平成10年組織対策部長、12年組織経営対策部長、13年監査部長、14年JA全国監査機構・全国監査部長、営農地域振興部長。

 森澤 峰島会長からは学習運動を通じて世の中との関係で女性部員のレベルアップをしていこう、また石田組合長からは組織の基盤は人であり、とにかくリーダーを育てていこうというお話がありました。そこでリーダー育成との関係で若いフレッシュミズたちへの期待は峰島会長、いかがですか。

 峰島 私たちのJA長生でもリーダー養成の活動として30歳代を対象に短期大学校を長年続けております。高度成長期に育った若い人たちは今になって苦しい時代の社会に対応しなければならず、これからは私たちの年代よりも、はるかに苦労するんじゃないかと思います。その人たちに新しい風を入れてもらい、いいリーダーに育ってもらって女性部を活性化していかなければと思っています。
 女性部員の年齢差が大きいため、3部制をとってニーズに応えた活動をしている県もありますが、まだまだ高齢の方が長期にわたって指揮を取っているところも多くて、そういうところのフレッシュミズさんからは「私たちの出番がないんです」という声も聞きます。これからは若い人たちに貢献してもらうような組織に切り替えていかなければならないなと思います。
 先だっての都道府県女性組織会長会議ではせめて全国女性協の理事だけでも就任時65歳以下という定年制をとることにし、今度の臨時総会に提案します。
 やはり人が変われば何かが変わりますし、時代の変化に従って若いパワーを取り入れなくては活性化につながりません。また未組織のところは、若い人たちのグループを、小さくてもよいからたくさんつくってほしいと思います。
 私の理想として、女性部は地域に貢献する大きな企業体ではないかと思います。うちの女性部でも地域起こしや社会を明るくするような活動が多く、それによって地域もJAも元気が出てくるという感じの展開です。若い人たちが、そこへ大いに参加してくれるような組織に変えていこうと考えています。

◆鋭敏な女性の農薬への感覚

 森澤 地域づくりと関係した女性部の活動は多いと思いますが、それを紹介して下さい。

 石田 どうもね、男には農薬問題や地産地消の運動がわかっていないように思います。市場出荷のために、いいものを作るには農薬がいるんだという長い間の考え方がしみついているようです。ところが母ちゃんたちの農薬に対する関心は非常に高く「お父ちゃん、この農薬はもう使えないのだよ」といった場面も現場にはあります。市場出荷を優先させる男の感覚は母ちゃんたちに変えてもらわないといけません。
 うちは4つの直売所を持っていますが、母ちゃんたちは、それぞれ商品に自分たち生産者の名前を入れてがんばっており、そんなところから男たちとは違った農薬に対する感覚が生まれているようです。
 うちは野沢菜の産地ですが、本物は鼈甲(べっこう)色で、漬物は昆布などを入れて作ります。ところが漬物は青くなくちゃいけないという通念から市場に出回っている野沢菜はみな着色で青い。そこでJAは本物に戻そうと取り組んでいます。また味噌づくりなど、いろいろな特産物を増やしています。
 威張るわけじゃないが、うちは小さな山間地のくせに日本一の産物がたくさんあります。グリーンアスパラはダントツです。それからズッキーニやブルーベリーなどです。そこで特産物の加工もやらなくてはと今年も加工場を1つ増やします。
 加工場は母ちゃんたちに預けて操業するため母ちゃんたちにもっと「使命感」を自覚してほしいと訴えています。安心安全な食料を作るのが私たちの任務だというわけです。男と女の使命感はごちゃごちゃになっていますが、きちんと整理する必要があります。そしてどんどん参画してきてほしいと思います。
 70歳や60歳を越した人が正組合員の半分を占めているような農協運動をやっていてはだめです。とにかく若い女性のパワーが発揮される運動に持っていけといっております。だから今年の総代会では女性が3分の1ほど並ぶのを楽しみにしています。
 そこで女性のみなさんにお願いしていることは、女性の使命感を持とうということです。男女共通の使命感も大事ですが、やはり女性が果たさなければいけない使命がありますから。
 それから自然は力だということも強調したい。自然は心の病いを癒すし、パワーも与えるしあらゆる力を持っています。その自然の中で育ち、培ったものがあるのだから、女性はそれをどんどん表現してほしいともいっています。我慢せずに女性の「志」を地域にアピールすることです。その代わり責任は持ってもらいます。
 消費者に向かっては無農薬栽培で多少は虫がついていても大丈夫です、食べられますよ、といった理解を求める努力をしてほしい。我がJAはグリーン・ツーリズムを通じて日本生協連と提携しており、話し合いでは、形が整って虫もつかないという農産物は農薬を使わないとできないといったことの勉強会をしてくれと呼びかけていますが、消費者の理解はまだまだです。そこを女性の力でドッキングさせてほしいと思っています。

◆市場出荷のロスで加工品をつくる

 

 森澤 ファーマーズマーケットは全中の調査によると、この約3年間に4倍ほどの伸びを見せて現在全国に約2000カ所あり、うち半分は女性部が運営しています。あとはJAの運営です。ファーマーズマーケットは消費者との関係が深いのですが、女性協としても地産地消ということで全国的に取り組んでいくキャンペーンを展開していると聞いています。そのへんを少し具体的にお聞かせ下さい。

 峰島 石田組合長から使命感のお話が出ましたが、本当に大事なことです。私もやらなければという使命感を持っているからこそ、やっていられるんだという気持ちです。全国の会長さんたちにもしっかりと使命感を持って進んでいただきたいと訴えたいと思います。
 地産地消の運動は大きな流通から見れば、そんなに大した金額にはならないと思いますが、しかし、こんな例もあります。
 うちのJAには大型の集出荷場があり、何でもよいから、そこに出荷しています。するとロスも出ます。そんなことではもったいないとの意見が出て、女性部はロスのトマトを引き受けてケチャップを作っています。
 そのうちに女性たちは出荷場を通じた販売代金の通帳を見て「これだけにしかならないのだったら、私がマーケットに持っていくわ。お父さん」とか、また「直接、都会へ売りに行く行商人に渡したほうがいいわよ」といい出し、その結果は経済的効果を主張する主婦の意見通りにする農家が増えています。
 また、虫がついたり形の悪い野菜でも安全安心のためにはいいんだということを国民みんなが理解できるように国や経済界がPRしてくれないと、私たちが一生懸命にやっていても、消費者はやはり安い輸入農産物に向かいます。この前は、そのことを農水省に要請しました。
 地産地消は地味な取り組みですが、全国キャンペーンで広げていきたいと考えます。子供たちにも食生活がもとでいろんな問題が起きています。精神的にも食生活が基本になることなども考えて使命感を持って運動を進めたいと思います。

 石田 正直いって地元で育った農村女性よりも都会から民宿などへ嫁にきた母ちゃんのほうが地元の食材を使った料理を真剣に勉強しています。そしてスキー場へきたお客に地産地消の郷土料理を出して、それが人気を呼んでいます。その点では都会育ちの若い嫁さんたちのパワーが地域起こし、農村起こしをやってくれている。その人たちが昔、地元にあった料理を復活させていると女性部にいったりするものだから私は部員たちの反発を買ったりもしています(笑)。

 峰島 確かに地元のものを使った料理を提供している店にはファンがついて、そのお客たちが店を盛り立ててくれます。

 石田 そうなんですよ。地産地消は飲食店などにもだいぶ浸透してきました。泥付きの大根などもかなり出回るようになりました。都会の人が安全安心をよく考えてくれるようになると農家だってうんと楽ですよ。水洗いだけではだめだと洗剤まで使って洗うようなコストも手間も省いて出荷できるんですからね。全国的に食を扱う消費者の母ちゃんたちの目覚めが必要だなと思います。産地だけが無農薬だ、地産地消だ、とがんばってもだめなんです。

 森澤 JAグループは生産工程の管理と記帳の運動を展開していますが、千葉県のあるJAでは、その学習会に父ちゃんと母ちゃんが必ず一緒に出席するようにしているとのことです。実際に記帳する面で女性に期待するところも大きいからです。父ちゃんは作業から帰ると一杯やって寝てしまうこともあります。食の安全・安心について女性の役割は非常に大きいから使命感を持って取り組んでもらおうというわけで、これは石田組合長のお考えと同じかなと思いました。

 石田 話はちょっと変わりますが、農業技術なら男のほうがいいかも知れないが、話題をまくのはだめです。これはやはり女性ですよ。マスコミの農村情報を作るのは女性の力を借りないとどうにもなりません。だから直売所は情報発信のもとだということで女性参画による話題づくりをどんどん進めてもらいたいと思います。農薬問題だって母ちゃんたちの話題としてやれば男たちはさっそく考え方を変えますよ。これまでの農村は男社会でしたが、母ちゃんたちの農村にしてもらえば、がらりと変わると期待しています。

◆家庭の和に貢献
  アグリスクール

 

 森澤 次に視点を変えまして、次世代に農業を理解してもらおうという取り組みが全国の女性部で幅広く行われていますが、北信州みゆきのアグリスクールと女性部の関わりについて、お話下さい。

 石田 一昨年、家の光文化賞をいただいたことを契機に、学校も週5日制になるのだからJA小学校をつくろうと計画しました。グリーン・ツーリズムで都会の子供はしょっちゅう体験学習にきますが、気がついてみたら、おらっちの子供には勉強しろ、塾へいけというだけで農業のことはさっぱり教えていないじゃないか、というわけで昨年、満員の107人を集めて開校しました。開校式にはお母ちゃんたちも参加してきました。
 雑談になりますが、JA職員たちに農業のことを教えられ、体験した子供たちは家庭で夕飯時に盛んに田植えや稲刈りのことなどを話します。すると、じいさん、ばあさんたちも、そうだ、そうだ、昔はこうしていたもんだなどと孫たちとのコミュニケーションがはずみます。それまでの家庭の話題は農業軽視でしたが、様変わりです。
 そうなると子供と一緒に参加した母ちゃんもしゃべり始め、3世代間の和ができてきます。アグリスクールには、そんな貢献もあって、みな大喜びです。こうして組合員とJAのパイプが強くなり、農協運動にも大きく貢献しています。
 家庭でも学校でもとにかくアグリスクールは大きな話題をつくり出し、接点を広げたと評価しています。開校は土曜日ですが、母ちゃんたちは餅つきとか料理でも協力してくれました。
 私の基本的な理念は、母ちゃんたちの間でも、子供の中でも老人会でも、あらゆる場で悪口でもいいから農協の話題を絶えず出せということです。それが農村の活性化となり、地域振興へと元気が出ることになると考えます。話題が出ないということは、旗が振れないということですからね。
 その中で地産地消や食の安全性も話題になってくれば自然にその意識が定着します。グリーン・ツーリズムで都会から年間5万人が管内にきていますが、その地域が食の安全でしっかりした運動をしているとなれば、そのことは都会の消費者にもつながっていきます。
 それとね。80歳、90歳の人たちが、あの昭和の激動時代を健康で生き抜いてきたことは、今のような飽食の時代でなかっただけに、長寿の原因をよく見詰めることも大切です。それは人間として必要なものを蓄え、ビタミンやカルシウムをちゃんと野菜の中で摂りながら地産地消で生きてきたからこそ、健康体がつくられたわけで、そのことをPRすべきです。
 そうなりゃ、もっと別の形で食生活が見直され、輸入農産物なんかは考えられなくなるはずですよ。自然な形で海外の農産物が入ってこれなくなるように持っていきたい。そういう状況を女性の力でつくってほしいとお願いしたい。それが使命ということではないでしょうか。

 森澤 アグリスクールは生産から収穫まで1年間を通したカリキュラムだということです。組合長は校長先生ですか。

◆農村文化を見直し次の世代に継承を

 森澤 では、子供の農業体験学習は地域の活性化にもつながっていきますし、次世代につなげるという視点で、峰島会長からもお話下さい。

 峰島 女性部は子供たちに農業のことを教えると同時に食べ物という観点から、一緒に料理教室をやったりしていますが、100人以上も集めて1年間も学習するという先進的なところは余りないと思います。田植えとか収穫の一時的な開設はたくさんあるのですけどね。
 今はでき合いの食料品がたくさん売られていますから、安くて楽でといった考え方の主婦が増えているようです。しかし、これからは手間暇をかけてでも安全なものを食べさせるような賢い主婦が育ってくれればいいなと私は思っています。
 さっきも話が出ましたが、都会の方々が田舎へ行きますと地産地消にこだわり、研究熱心で、いろいろないい知恵を与えて下さるという気がします。
 私は日本の良さを伝えていく必要もあると考えて、自分のできることからやろうと、子供たちと一緒の学習の場をつくったり、同年代の人々のためには茶道とか書道などの文化サークルをつくって活動をしました。
 そうした中で近所付き合いを考えました。今は隣は何をする人ぞといった感じですが、昔は隣組というものがあって助け合い、食べ物でも、ちょっと足りないと、お隣から都合をつけるという生活がありました。
 そこで今は地産地消をからめてJAが昔の近所付き合いというか地域連帯ができるような地域をつくるように力を注いだらいいんじゃないかと思います。 JAはすでに乳幼児の面倒を臨時にみたり、お年寄りの介護までトータルなサービス事業を全国各地で始めています。ヘルパーさんも何万人かいます。だから、そうした事業のつながりを活かして、昔のような人と人とのふれあいを大事にしていったら、JAも地域もよくなるんじゃないかと思います。
 今のJAは、どうも組織の上に何か重いものがあって、それが弊害となっているような気がします。いろいろなところに出ていって聞きますと、農業者がやっていることと、JAの上層部組織との間に、どこでどういう接点があるのだろうか、上層部のやっていることが農業者にわかっているのだろうかという疑問を持ちます。そこを上層部の方々にわかっていただきたいと、最近よく思います。

 石田 バブルと同時にJAが地域に果たすべき役割を見失ってきた、そのひずみが今、出てきているのですよ。その場の考えだけでつくり上げてきたということもあり、その当時を担ってきた者には責任があります。私も含めてです。
 それから、農村文化はJAが担わなくてはいけないと思います。それを次の世代に承継していくこともJAの大きな責任だなと思います。そうした面の役割を見失って、ただ経済的効果の追求を前面に押し出しちゃったから、若い人たちには物足りないわけです。
 だからJAの使命感を、ここでもう一度見直して女性のみなさんから大いに参加と協力をいただく中で新たなものをつくっていく必要があります。
 昨年つくった計画には農業・農村を「興せ」という字を使いました。それから農協は眠れる獅子ともいわれたりするので、その対策としては「起こせ」を使いました。さらに意識改革については「耕(おこ)せ」です。これはみんなで意識を深く耕して、意識を変えて地域を耕していこうという意味です。そこからすばらしい芽が出てくるぞと私は説いています。
 とにかく「おこせ」というのは私の以前からの持論で、女性大学もアグリスクールも、そして自然の条件を生かした日本一の特産物づくりも、みなこの考え方から進めました。

◆今やらなければやる時はない

 

 森澤 世の中全体がファストフードからスローフードへといわれるように社会の価値観が大きく変わって、昔の生き方とか伝統の中にこそ本物があるんじゃないかと見直される機運が強くなっています。
 その意味で農村地域にはたくさんの宝があります。その1つが地産地消です。これは本来当たり前のことですが、改めてそこに焦点が当たってきました。ほかにも宝が多いのですが、それを引き出すことが課題となります。組合長は、その使命感について、女性の役割が大きいと期待されます。
 さらには、それを運動の中でJAがきちんとサポートしていくことと、地域住民の主体的なパワーも大事だなと改めて感じました。
 さて最後に、第22回JA全国大会決議は、女性の理事や総代について数値目標を出しましたが、現在まだ女性理事は4JAに1人くらいしかいません。女性正組合員も目標は25%ですが、現状は14%ほどです。そこで、参画のスピードを上げるために峰島会長から全国のJA経営者に訴えたいひとことをお願いします。

 峰島 数値目標を出していただきましたことで現在241名の理事と、228名の参与が誕生しています。
 私たち女性部員はJA運動に真面目に取り組んでいますし、農業者の意識改革も徐々に進んできていると思われますので、改選時には必ず増加すると思っています。
 ぜひお願いしたいことは、正組合員になりやすい方策を考えていただきたいことです。全国で正組合員加入運動を進めているのですが、出資金とか一家庭に一人、正組合員がいるから・・・という声もあり、なかなか進展しにくい状況です。意識啓発も必要ですが、お力添えをお願いします。
 もう一つは人材の育成です。地域によっては女性大学校やリーダー養成講座を開催していますが、一層のご支援をいただきたいと思います。
 男も女も人格を認め合いながら、質の良い魅力あるJAにしていきたいと思います。

 森澤 先進JAとして組合長からもひとことお願いします。

 石田 平成17年には女性理事を3人つくることがきまっているのですが、今の状況なら枠をつくらなくても自然に出てきそうです。
 いずれにしても農水省も全中も女性参画に力を入れているのですから、今やらなければやる時はないと思います。
 地域の意識も変わってきているのですから、女性のみなさんにも意識を変えてもらって使命感と役割をしっかり持たなくてはならないんだという自覚を持って、どんどん参画を果たしていただきたいと思います。

座談会を終えて

 JA北信州みゆきは、石田組合長の強いリーダーシップのもとで、元気な地域社会づくりのため、女性大学校やあぐりスクールなど、先進的な取り組みを意欲的に行っている。女性のJA運営参画の面でも「参画」から「共有」を目標に、正組合員・総代の3割を女性とするような取り組みが進められている。
 また、JA全国女性協の峰島会長から、女性部の地産・地消運動の取り組みが、単に農産物の販売ばかりでなく、それを通し消費者との連携、地域との連携など、女性自身の意識・学習向上も含め、幅広い展開に結びつくお話をいただいた。まさに、「地域の元気は女性のパワーから」である。
 農村地域には多くの宝がある。世の中の価値観もそうした部分に着目する流れになっている。農村の宝を引き出し、地域の元気につなげる。その面で、女性の果たす役割が格段に大きくなっていることを改めて実感した。(森澤)



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