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地域における満足度・利用度No.1をめざして
21世紀に飛躍するJA共済事業

インタビュー
JA共済3か年計画について
JA共済連新井昌一会長に聞く
「農」を核とした事業展開へ
―― 契約者の信頼に応え、安全・安心・確実
掛金の安いJA共済をめざす
インタビュアー 東京農業大学教授 白石 正彦 氏

 保険業界の激しい競争の中で各社は多様な新商品を出しているが、契約者にとって、それらが「ほんとに役立つ保障なのかどうか」と新井JA共済連会長はポイントを指摘する。JA共済としては保障の厚さと掛金の安さなどを「よく考えた仕組みを提供しています。トータルでみれば有利です」と断言した。白石教授の質問は、会長の自信の裏づけを次々に具体的に引き出していった。

◆「農」がJAの経営や共済推進の中心に

  白石   昨年お話いただいた時にJA共済事業の原点として、魂は農にあるが、業務は近代的な感覚や知識に基づく『農魂商才』を力説された点が大変印象に残りました。早朝の農作業は今も続けておられますか。

  新井   いやぁ、今週は日曜日の草取りで腰を痛めましてね。この年になると我田引水じゃないけど、共済事業の有難さも、よくわかりますよ。家族のことも考え、自分に必要なものとしてもっとたくさんJA共済に入って保障をつけておけばよかったのにと、今になって、しみじみ実感しています。

  白石   JA共済は昨年4月、全都道府県一斉に連合会の統合をなし遂げ、今年度からは「JA共済3か年計画」に取り組んでいますが、現状や展望などをお聞かせ下さい。
(あらい・しょういち)
大正14年群馬県生まれ。
群馬県立旧制高崎中学校卒業。
昭和41年高崎市中川農協理事、
昭和44年同専務理事、
昭和47年同組合長、
昭和50年群馬県農協中央会理事、
昭和55年高崎市飼料利用農協連合会会長、
同年群馬県農協中央会・信連・
経済連・共済連・拓殖連・
厚生連代表監事、
昭和59年群馬県中央会・
拓殖連副会長、
群馬県信連・経済連・
共済連・厚生連理事、
平成8年群馬県七連会長、
平成11年全共連代表理事会長就任。
(しらいし まさひこ)
九州大学大学院修了。
農学博士、
東京農業大学国際食糧情報学部教授。
昭和53〜54年英国オックスフォード
大学農業経済研究所客員研究員、
平成5〜7年ICA新協同組合
原則検討委員会委員、
10年ドイツ・マールブルク大学
経済学部客員教授、
日本協同組合学会会長。

  新井   幸い役職員が統合という一つの考え方に立って、今のところ順調にきております。さらに、この統合組織をより強固なものにするにはどうすればよいかを考えますと、『農』がJA組合員の共通の哲学ですから、これで思想統一していくことが重要と考えます。そうでないとなかなか、この組織はまとまりません。
 また、そこが他の保険各社と違うのだということを、JAの経営なり共済推進の中に置かなければなりません。
 『農』とは何か。耕すことです。しかし、それには工夫がいります。気象の変化に対応するなどの知識や機敏性や創意工夫も必要だと考えます。
 具体的には、やはり職員の能力を耕すことですね。全国にいる7千人かの職員の質には、それぞれ地域の特色による地域差があります。そこで人事考課を的確にやりながら、連合会の職員が大いにやる気を出して頑張れる制度を確立し、地域の特色を生かしていきたいと思います。

◆関東大震災級の災害でもJA共済の支払能力は十分

  白石   JAの広域合併が進んでいますが、JAからの統合組織に対する要望はかなり多いと思いますが。

  新井   JAからの声で、まず一番多いのは「JA共済は大丈夫か」という問いかけです。なにしろ昨年だけでも生保5社が破たんし、ここ数年では7社が破たんしていますからね。共済掛金は血の出るような汗の結晶ですから組合員の心配は当然です。
 もう一つは「大災害があった時はどうするんだ?」ということです。JA共済の場合は自然災害に対する共済の種類がありますからね。
 これに対して「JA共済は大丈夫です」と答えています。ロイズをはじめ60数社に再保険をかけていますから関東大震災級の災害があっても今の体制で支払い能力は十分です。

  白石   去年は鳥取西部で地震がありました。対応はどうでしたか。

  新井   JA共済連の役員をはじめ、県本部からすぐにJAに出向き、現地の要望をストレートに聞きました。その反響がすばらしくよくて、JAからも礼状や電話をたくさんいただきました。これは共済の仕事の中で去年の最大の喜びでしたね。

  白石   統合で都道府県本部ができましたが、県域のニーズを汲み上げる努力や工夫はどうされていますか。

  新井   資金運用の集中で効率性はよくなったが、反面、地域産業への融資とか顧客へのサービスなどが手薄になるんじゃないかとの声もあります。しかしJA共済連としては統合で東京中心になったような印象を与えないように地域のニーズを汲み取る体制を整えています。例えばJA共済事業経営委員会の課題別委員会として新たに資金運用委員会を設置しました。これは各地区別代表の県本部長2人ずつと資金運用担当常務で構成し、この中で、情勢認識の共有化、資金運用面での課題解決などに努めています。

◆LA体制の強化は協同組合活動全般についてもプラス

  白石   次に普及推進ですが、ライフアドバイザー(LA)体制の強化と、役職員や集落組織が一体で取り組む一斉推進のあり方について、この1年の状況や論議はどうだったんですか。

  新井   ここ3年間、長期共済の新契約実績に占めるLAの実績シェアは確実に4%ずつ増えて12年度は41.4%となりました。LA2万人体制を目ざして確実に成果を挙げています。
 LAの活動は協同組合活動全般についてもプラスになっています。LAは毎日どこかを訪問していますからね。そこから組合員の生の声が聞こえてきます。共済以外のことでも「この事業のここがまずいじゃないか」とか「生産資材が高い」とか何とかね。LAは多くの人に接し、自然に情報を仕入れます。

  白石   保険の外務員と違って、組合員などから生の情報を聞き、それを他の部署の業務に生かし、総合JAとしての機能発揮につなげていくわけですね。また、年金で401Kのニーズなんかが広がってくるとLAの専門的な役割がますます重要になりますね。

  新井   もちろん貯金にもつながります。LAの教育研修では今後、組合員の資産管理が重要になるのではないでしょうか。
 私は、共済は最先端の事業だと思っています。だから、たゆまぬ教育研修が大事です。全国本部はもとより各県本部にも研修施設がありますからさらに教育に力を入れます。

  白石   一斉推進は、今の水準を維持して続けていくのですか。

  新井   これは今後とも必要だと思います。やはり全組織のフル活動がJAの特色ではないでしょうか。組合員との一体感、地域との一体感を持つには臨戦体制といった活動も必要です。

  白石   農家人口が減り、准組合員比率が高まっていく中で、今後の推進は地域全体に広げていくのでしょうね。

  新井   よく『員外』という言葉が使われますが、例えば火事で類焼の時にうちは組合員、隣家は員外で片づけられますか、被害は同じなのに。自然災害でも一緒のことです。やはり地域を一体とした推進の展開が必要です。
 監査などで、よく組合員比率がいわれますが、もっと地域の実情を理解してほしいと思います。生活店舗や購買事業、信用事業などでも員外うんぬんはどうかと思いますよ。地域との『共生』をもっと考えるべきです。

  白石   将来、組合員になる人を利用者として増やしていく考え方が重要ですね。

  新井   農協改革で農業者以外の理事も選んだりすることもできるようになっているのですからね。

◆JA共済の仕組みは他の保険会社より絶対有利

  白石   保険各社は特定の年齢層をターゲットにするなど安い商品を出していますが、JA共済の商品開発はどんな状況でしょうか。

  新井   スポットで個々の商品をみた場合は別として、トータルでみると、JA共済の仕組みは絶対に有利です。
 最近では生命総合共済で入院特約などの中身を充実しました。これまでの共済金支払いは10日以上継続入院の場合でしたが、新しく5日以上継続入院の初日から支払う仕組みを出しました。
 それよりも短い入院日数でも保障する商品も出ていますが、ある調査では病気の入院は平均で3カ月ともいわれており、長期の入院の時の保障ニーズの方が高いのではないでしょうか。JA共済は掛金とのバランスで、ほんとに役立つ保障かどうかをよく考えた仕組みを提供しています。

  白石   短期入院に保障がつくといっても保険料が高くてはだめです。ごまかされないようにすべきですね。

  新井   今、爆発的な人気を呼んでいるのは建物更生共済10型です。一昨年に出した仕組みですが、12年度も長期共済新契約の半分以上を支えるほどの普及ぶりです。火災などのほか自然災害に対し、建物を総合的に保障し、特に地震に強いと評判です。保障共済金額を満期共済金額の10倍にすることにより、以前の5型に比べて掛金が大幅に安くなっています。建更はJA共済の大きな特色ですよ。

◆安全・確実な資金運用で「協同組合」らしいJA共済に

  白石   さて、保険業界再編成の中で農林中金との連携はどうですか。

  新井   連携は当然ですね。どちらがイニシアティブを取るとかいうようなことではなくて、農林中金もJA共済連も底辺は同じ協同組合です。お互いにノウハウを出し合いながら、やらなくてはいけません。

  白石   生保各社は、約束した利回り(予定利率)よりも、資産運用の利回りが低いという逆ザヤの状態ですが、JA共済も同じです。これを協同組合らしくカバーしていく取り組みについてはいかがですか。

  新井   長引く低金利下での金融情勢の中にあって、JA共済では継続的に新契約を確保しながら共済収支を改善するとともに、経営の徹底した効率化などを通じ、収支全体では逆ザヤをカバーする収益を確保しています。
 また、資産運用面でも長期安全的な収入が確保できる安全確実な資金運用をしており、無闇にリスクの高い有価証券を保有したりはしていません。

  白石   昨年は、比率ソルベンシー・マージン(支払い余力)がリスク量の2倍の200を超えていながら破たんした生保が出ました。JA共済の比率は727ですが、3カ年計画では808を目ざしています。自然災害などに対応するリスク負担力が非常に高いというのが特徴ですね。次に運用面の逆ザヤをカバーするために費差(事業費)を切り下げるという取り組みはどうですか。

  新井   これは、かなりシビアにやっています。そこに逆ザヤを埋めたり、割戻しをする財源を求めていくのですから、3か年計画でさらに事業コストを削減します。とにかく契約者の信頼度を高めるために安全で、確実で、掛金の安いJA共済を目ざします。

  白石   その点で、JA共済に対する各JAからの信頼度はいかがですか。

  新井   「資金運用が非常に難しい情勢の中で、JA共済はどうなんだ」との声は聞きますが、統合組織がしっかりしてきているし、JAからの信頼度は高くなっていると思います。とにかく共済事業で破たんしたJAは一つもありませんし、他の事業を共済でカバーしている経営が目立ちますからね。
 それから業界の合従連衡がさらに進む中で、JA共済の将来はどうなるのかということも組合員の関心事です。しかし時代がどんどん変化する中で再編成の様相も変わるでしょう。
 特色のある会社とは提携しないと仕方がないんじゃないかと思います。すべてをJA共済だけでまかなえればよいのですが、コスト面で新たなニーズも出てくるでしょうし、こまかな分野では提携話が出てくるとみています。
 最近では共済事業を補完してきた共栄火災が東京海上火災グループに入りましたが、そういった場合も、離れていくのではなく、お互いに密接な情報交換をしながらやっていく方針です。
 ただ、どんな組み合わせの連携になるとしても、我々がこれまで培ってきた基本理念からはずれるようなことはしたくないと考えています。

◆災害には迅速な処理と被災者への速やかな対応を

  白石   それから農協法改正案が国会で審議されますが、成立するとJA共済連も経営管理委員会と理事会という二つの機関になりますが、どうですか。JA全農では経営管理委員会に女性部や青年部の代表を入れるという議論もあるように聞いています。

  新井   これだけ資産が大きくなると資本と経営は別になるという形になるでしようね。今はまだ、細かい点は詰めていません。
 JAの段階では、すでに女性理事や女性部枠の理事が増えています。しかし共済は仕組みとか、専門的な細かい点があるから難しいんですね。
 しかし、われわれとしても女性、青年組織の代表たちが入れるような体制や雰囲気はつくっていかなくちゃならんと考えます。特に農業労働力の6割は女性ですからね。

  白石   「地域における満足度・利用度bPを目ざして」というのが3か年計画のサブタイトルですが、具体的には、どういうことですか。

  新井   満足度・利用度について、その原点は災害があった場合の迅速な処理です。例えばくり返しになりますが鳥取の地震災害では、いち早く現地に飛んで被災地の状況を把握するとともに、組合員契約者が置かれた状況に即した対応を速やかにやった。これが満足度ナンバーワンにつながります。
 共済掛金を払っていれば保障をもらうのは当然ですが、こちらとしては被災者の気持ちから、支払い方の問題点がどこにあるかをつかみ、敏速に支払うことが原点となります。
 そうすれば被災者としてはJA共済に入っていて、ほんとによかったという気持ちになり、さらには、それが口コミで地域に広がりますね。ですから、被災者に、ぜひまたJA共済でお願いしたいという気持ちになってもらうような対応を考えていきたいと思います。

  白石   最後に、3か年計画には、情報技術(IT)による競争力強化の課題がありますが、この分野では系統の中でJA共済連は一番早くシステムを整備されたわけですね。

  新井   そうです。JA共済の情報システムは、系統事業としてはいち早く全国ネットのオンラインシステムを構築し、全国を一元化した契約引受や共済金支払いを行ってきています。
 今年度からJA共済ネットシステム2000を稼動させ、全国均質で高度な契約者サービスの提供や効率的な事務処理を行う基盤を整備していこうということです。私どもはこの3か年計画を着実に実行することで21世紀における潮流の変化とJA共済の課題をふまえた事業展開方向を明確にして、確実に将来にわたり組合員等利用者の負託に応えていこうと考えています。

  白石   どうも貴重なお話をありがとうございました。


インタビューを終えて

 新井会長が「農魂商才」(魂は農に、事業は近代的な感覚)という理念を大切にされ、JA運動の一環としてJA共済連の組織・事業・経営に取り組まれている点が印象的である。
 JA共済事業をめぐる外部環境の激変と組織基盤の変容が進行する中で、組合員の意思反映と共に専門性の本格的な強化をねらいとして、JA共済連にも農協法改正後に経営管理委員会と理事会という2つの機関が導入されようとしている。この場合、専門性強化のためにもJA共済らしい独自性、効率性、地域貢献性を重視した、「農魂」をもった組織代表が理事会で重要なリーダーシップを発揮する必要がある点を痛感した。
 新井会長が強調されたように、JAのLAは共済事業の推進のみでなく、組合員の営農面を含む最新で多様なニーズや願いをJAにつなぐ役割、組合員の声の聴き役であること、さらに地域個性を重視した都道府県域機能の発揮(資金運用も含む)という目線を強調されたが、共済事業の目的と手段を取り違えないJA共済事業の協同組合らしい経営管理体制革新の舵取りを期待したい。(白石)


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