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特集:未来の架け橋を築くために ―― 21世紀の農業を考える

対談
“国民全体で支える”農業づくりめざして
山田 俊男 JA全中 専務理事
小田切 徳美 東京大学大学院農学生命科学研究科 助教授

 「食料・農業・農村基本法」成立からちょうど2年を迎えた。この間、食料・農業・農村基本計画が策定され食料自給率目標値も掲げられたほか、その実現に向けた個別政策の議論も進んでおり、「基本政策論議の第2ラウンド」に入っているといえる。
 そこで本紙ではここまでの新基本法の理念の具体化を検証し、JAグループの今後の課題を考えるためにJA全中・山田俊男専務理事と小田切徳美・東京大学大学院助教授に対談をお願いした。テーマは、とくに今後の議論が注目されている新たな農業経営所得安定対策など担い手対策と農村政策。山田専務は、担い手対策について、自給率向上や農村の発展の観点から、多様な担い手の必要性を強調し、集落営農などによる地域農業振興とJAの役割の重要性などを指摘した。

◆農政改革の第2ラウンド 架け橋第2期工事の検討中

  小田切   「未来への架け橋」とは、一昨年7月12日に食料・農業・農村基本法が成立したときの当時の小渕総理大臣談話、「新基本法の理念を進めていくことは未来への架け橋を築くものである」という言葉からとったものです。今日は、その後の2年間が、果たして未来への架け橋を築くものであったのか、それが不十分であったとするならば、その次の架け橋を築くための工事をどうするべきなのかなどについてお話いただければと思います。
 まず私から新基本法具体化の進捗状況について申し上げますと、食料、農業、農村という3つの領域に分けると、食料政策がもっとも先行していると思います。食料自給率の目標を掲げた基本計画、食生活指針の作成、さらに価格政策対象品目の市場形成等の食料政策が先行している。
 それにくらべて農業政策、とくに担い手対策は立ち遅れているのが実情だと思います。農地法改正による株式会社形態の導入も認められましたが、全般的には具体化は進んでいない。さらに、農村政策は中山間地域等直接支払い政策を除いてほとんど手つかずの状況だろうと思います。
 しかしそれに対して、最近では担い手対策を意識した経営政策大綱の議論が進んでいますし、農村政策については、自民党の総合農政調査会でかなり議論が進んでいるようです。そういう意味で改めて振り返ってみますと、実は現在の局面は農政改革の第2ラウンド、架け橋工事の第2期工事の検討中であると認識できると思います。
 このような最近の議論も意識しながら、まず担い手対策、とくに新たな経営所得安定対策について伺いたいのですが、この問題は、未来への架け橋の向こう側にある将来の農業経営をどう想定するのかという議論なくして先に進まないと思います。山田専務は、それをどのように描いておられますか。

◆意欲ある担い手とともに集落営農なども対象に

  山田   ご承知のようにアジアモンスーン地域にあるわが国では、水田を中心とした農業経営が展開されているわけですが、アジア特有の形態として農地は零細分散所有になっています。この問題についてはアジアの国々もさまざまな努力をしてきたわけですが、わが国も未だに零細分散所有の形態を克服できていないわけですね。
 この状態をなんとか克服できないかというなかで、わが国は所得権はそのままで利用権だけを動かすということで農地が集積できないか、とする政策が展開されてきました。農業で生活できる農家を育てるなら、これを克服せざるを得ない。そのための方法が歴史的にも検討してきた利用権の拡大であるのであれば、今後の政策の中心がそこにおかれなければなりません。
 ところで、昨年末、与党から新たな経営所得安定対策の検討方向が示され、そこでは40万戸を対象にした政策展開を図るとされました。この方向については組織のなかでも多様な意見があって、40万戸だけを対象にするのは非常に差別的な扱いではないか、あるいは対象を40万戸に絞ると地域農業の活性化や自給率の向上、さらに農村地域の発展も難しいという声もあります。
 ところが、一方で現実を踏まえてみると、もしかして40万戸ですら確保するのは難しいのではないかというほど、高齢化も進み、地域の農業を本当に担う担い手がいなくなっているとの声もあります。
 そこでわれわれは、意欲ある担い手のほかに、もう少し幅を広げて多様な担い手も考えていかないと40万戸の確保も難しいとの認識から、分散化した土地を集積して利用できる集落営農の取り組みを推進し、単に共同作業を請け負っているだけではなく農地の利用権を集め団地的に利用して作物の組み合わせにも対応可能という集落営農を作り上げ、こういった経営体も政策の対象にしていくことが大事だと思っています。

◆農地を農地として利用する 社会的認識深める取組を

  小田切   前半でおっしゃった利用権の集積については、今までもそれを止める政策があり、現場でもそうした努力が続いていると思いますが、何が問題と考えていますか。
(やまだ としお)
昭和21年富山県生まれ。早稲田大学政経学部卒。昭和44年全中入会、平成3年組織整備推進課長兼合併推進対策室長、平成5年組織経営対策部長兼合併推進対策室長、平成6年農業対策部長を経て、平成8年全国農協中央会常務理事、平成11年専務理事就任。
(おだぎり とくみ)
昭和34年神奈川県生まれ。東京大学大学院博士課程修了。農学博士。高崎大学経済学部助教授を経て、平成8年より東京大学大学院農学生命科学研究科助教授(農政学研究室)。農業・農村地域政策を専門とし、全国地域リーダー養成塾主任講師を兼任。主な著書に『日本農業の中山間地帯問題』(農林統計協会)、『日本農業の展開と自治体農政の役割』(家の光協会)など。

  山田   これまでも利用権集積のためのさまざまな努力がなされてきましたが低い水準にとどまっています。ですから、まずなぜそうなのか、原因をもっと分析し徹底して利用集積のための政策を重点的に考えるべきだと思うんですね。
 それから利用集積が進まないのは、土地利用政策にも問題があります。農地が農用地区域に区分けしてあっても、公共用地としてなら転用できるとか、道路が一本通ればその周辺は転用可能になるなど農地の利用規制の運用が不十分な実態もあります。こういう面があるために、やはりいつかは転用できるのではという期待から資産的保有の意識が変わらないということがあると思います。
 ですから、利用権集中のための施策の重点化はもちろん大切ですが、一方で農地を農地として利用していくという社会的な認識を深める取り組みをどう強化できるかも重要だと思います。

  小田切   たしかに土地利用規制がさまざまな担い手対策の前提だと思いますね。ところで、土地利用調整については昨年の第22回JA大会決議で地域農業戦略づくりを打ち出し、そのなかで地域農業の将来を支える担い手を地域単位で明確化するという議論もあったと思います。
 おそらくこうした試みについて、さまざま論点が今現場で浮上していると思いますが、私が認識する第一の実践的論点はこの戦略づくりをどういう単位で実施していくのかです。つまり、集落単位なのか、そうではなくそれを越えた小学校区や旧村といった単位なのか。これについてはいかがでしょうか。

  山田   その問題は、地域の作物によっても違いますし、その地域がどれほど都市化しているかで集落の位置づけも変わってくる問題でしょう。
 しかし、全体的としてはいろんな形で混住化が進んでいるなかで、1つの集落で40〜50ヘクタール水準の1つの利用単位を作り上げていくことは難しいと思います。担い手も相当広範囲で設定しないと確保されない状況を考えると数集落ないし旧村単位で考えるのが妥当ではないでしょうか。

◆営農指導員には不幸な時代 その中でも意欲的な取組が

  小田切   そうなると第二の実践的論点として、重要になってくるのがその推進のための地域マネージャーの位置付けが浮上してきます。集落単位であれば、集落リーダーに任せることもできるわけですが、さまざまな集落を越えて仕組みをつくるならやはりマネジャーが重要になる。そう考えると農協には営農指導員という人的蓄積があるわけでこれを活かす仕組みも重要ですね。

  山田   ただ、今は米の生産調整のさまざまな事務に忙殺されて本来の仕事ができず営農指導員にとっては非常に不幸な時代なんですね。
 しかし、そういうなかでも群馬県のJA甘楽富岡のように、営農指導員が地域の高齢者と女性を組織化し多様な野菜生産をして戦略的な販売に結びつけている例もありますし、山口県のJA山口宇部では、営農指導員が地域推進員と営農推進員の2グループに分かれて多様化した担い手に対応して指導できる体制をつくっている例もあります。本当にこういう取り組みが必要になっていますね。

◆営農指導は農協本来の事業 ニーズにあったサービスで

  小田切   今回の農協法改正では農協事業として営農指導事業が明確化されましたが、こうした動きの加速化に大きな影響を与えることになるでしょうか。

  山田   はい。農協本来の事業として営農指導事業が法律的に第一義の事業として位置づけられたわけですから、しっかりしなければなりません。やはり必要なのは、意欲ある担い手の育成、集落営農をはじめとする組織化とその発展ですね。そこに焦点をあてて営農指導員が活動する。
 また、農協の事業方式も担い手のニーズにあったサービスを提供するように改革することも求められます。一律のサービスではなく、大口利用であれば大口利用に対する対応を考えたり、あるいは女性や高齢者の組織化とその生産物を、たとえばファーマーズマーケットの立ち上げにつなげていくといった販売対応など、これもまさに農協法の理念にかなったことです。

  小田切   営農指導員とは地域農業変革のデザイナーであり、マネージャーであり、おそらく昔であれば、石碑が建つような大きな仕事をされているんだろうと思います。ぜひがんばっていただきたいです。

◆意欲ある担い手育てる経営政策 ―― それを支える所得安定対策を

  小田切   さて、担い手対策として欠かせないのが今議論されている経営所得安定対策です。私はこの新しい対策の農政改革における位置づけ自体が大きな論点だと思っています。
 整理すると、ひとつの考え方は、構造改善のための施策。とくに構造改善が進んでいない稲作にターゲットを絞った経営育成のための安定対策、つまり、基本法に即していえば21条(農業経営基盤強化の促進に必要な施策)の対策として考えるのか、そうではなく30条2項(農産物の価格の著しい変動が育成すべき農業経営に及ぼす影響を緩和するために必要な施策)に限定してしまうのか、です。こうした位置づけそのものがまずスタートラインだと思います。

  山田   現在行われている議論は、その両方を経営政策として包んだものになっています。すなわち、意欲ある担い手、新基本法に即していえば効率的かつ安定的な農業経営をどう育てるかという観点での政策の展開と、育成すべき担い手の経営を安定させるためのセーフティネットとしての経営所得安定対策が別々に議論されている。この関係の整理が少しはっきりしていないと思っています。
 われわれの考え方としては、意欲ある担い手をきちんと育てていく経営政策があり、その有力な手法のひとつとして経営所得安定対策が位置づけられ、これを一括りにして経営政策大綱ができあがるものと思っています。
 ところで、価格形成が市場メカニズムに委ねられ価格が弾力化している現在、価格変動の影響を緩和するために品目別の経営安定対策がすでに準備されているわけですね。この制度は昨年から始まったものもあれば、稲作経営安定対策のように3年あまり続いてきたものもあるわけですが、私は新たな経営所得安定対策といわれるものが、各品目の特性を踏まえた現行の経営安定対策と、どんな関連をもつのかについてもまだ議論があいまいだと思っています。
 品目別の経営安定対策をみると、米は計画的な生産による需給の均衡なくして価格形成があり得ませんから、それを前提にした、つまり、生産調整ときちんとリンクした稲作経営安定対策が存在しますし、麦や大豆は大きな内外価格差がありますから、その内外価格差を支える固定支払い的な経営安定対策が仕組まれているわけですね。
 しかし、いずれも価格変動に対してどう調整するかという部分は課題として残されていますから、そこをどのように充実するのか。つまり、今度仕組もうとする経営政策大綱のなかに盛り込まれる新たな経営所得安定対策は、品目ごとの現行の経営安定対策に上積みして実施されるものでないと本来の経営安定対策の意味はないのではないかと思っています。

  小田切   つまり、品目別、経営単位の二重のセーフティネットが必要だということですね。それに加えて従来からの構造政策もやはり必要だと思いますが、この観点から経営政策大綱に期待している点はあるでしょうか。

  山田   農水省の政策は、集落営農を含めた多様な意欲ある担い手を育成することと、小規模零細分散所有形態を克服するための利用権の集積、そこに全力を挙げるということです。当然、それをやるためには農地の利用区分について国としてのしっかりした政策を持つべきだと思いますね。構造政策という点でいえば、これがベースにならないと結局は零細分散所有は克服できないんじゃないかと思います。
 そのうえで各品目の経営安定対策に上積みした経営所得安定対策が育成すべき多様な担い手に対して講じられる必要があります。あわせて、それらがきちっとした経営体になるためのつなぎとしての経営安定対策も必要になるわけです。直接支払いの形態であったり、保険のような仕組みであったりすると思いますが、ともかくどういう仕組みがわが国の経営対策として合致するのか、できるだけ早くきちんと議論しなければいけないと思いますね。

  小田切   構造改善のための支援であれば、長期的ではあるにしても暫定的なものであると位置づけられます。そうではなく価格変動のためのセーフティネットであれば間違いなく恒久的なものであるべきでしょう。そのへんの区別をした議論、あるいは担い手の育成状況に応じて段階的に、これらの組み合わせを変える仕組みづくりも必要だろうと思います。じっくり議論をする必要がありそうですね。

◆農村の良さをうたい上げた「明日のふるさと21」提案

  小田切   この対談は参院選挙の選挙戦中に発行されることになるようですが、今回の選挙の隠れた争点として、都市と農村の関係のあり方がありそうです。
 12年度の農業白書では、定年帰農などが本格化したと指摘していますが、その認識の背景にはおそらく今の動きが不況期の一時的なものではなく滔々した太い流れになっているということがあると思います。
 しかし、一方で、農村地域に国民の目が向き始めたこの時期に、タイミングの悪いことに小泉内閣がかなり都市に重点を置いた経済構造改革をまとめた。私など、これは骨太改革ではなくて都市太改革ではないかと思いますが、一部の勢力はこうした都市と農村の対立を意識的に煽っています。そのような状況のなかで農業サイドから農村のあるべき姿を打ち出すことは大変重要だろうと思います。その一環として農水省の研究会は、農村の対策として「明日のふるさと21」を発表しましたが、どのように評価されていますか。

  山田   農業、農村の多面的機能は新基本法のなかに位置づけられましたし、WTO農業交渉に向けた日本提案のなかでもきちんとそれを主張しています。そうした農業、農村の持つ多面的機能については、ウルグアイ・ラウンドでは十分な動きをつくれなかったわけですが、現在は世界的にも認められてきて、たとえば多面的機能フレンズ国は40カ国に達するなど賛同する国も増えてきているわけですね。その意味で改めて農村の良さをきちんとうたいあげて、農村整備の重要性を訴えたわけですから大変意義のある提案だと思います。

  小田切   こうした農村づくりに農協がどんな役割を果たせるとお考えですか。

  山田   やはり農業、農村の持つ多面的機能を都市のみなさんを含めて国民全体として評価してもらうためには、少なくともJAグループは3つのことにしっかり取り組まないと支持が得られないんじゃないかと思っています。
 1つは、やはり意欲ある多様な担い手をきちんと育て、農業の生産性を向上させて農業改革に具体的に取り組んだ成果を見せることです。2つめは、需要に見合った安心、安全な農産物を届けていることをきちんと言えなくてはいけないということです。3つめは、農業の持つ多面的機能を具体化するために、都会の人からみても大変評価される美しい農村づくりを運動として作り上げていくことです。
 耕作放棄地があったり荒れたままの遊休農地を都会の人が見ていて、それで農村と農業に理解を求めてもとうてい無理だろうと思います。耕作放棄地などは、われわれ農協や行政の関係者などのボランティアでそれをなくす運動もしっかりやらなくてはいけないと思います。現に特定利用権といった仕組みがあるにもかかわらず、その仕組みも活用していないという面もあるわけです。村づくりへの農協の積極的な参画も課題ですね。

  小田切   その耕作放棄地対策とも関連して、この2年間の農村政策としては中山間地域直接支払い制度が動き出しました。
 そこで、この直接支払い制度についてですが、集落協定という形ですから交付金を集落に2分の1以上プールするというのが農水省のガイドラインです。この方針について農協内部にも多様な意見があるようですが。

  山田   その前に中山間地域直接支払い制度の集落協定の策定に向けて、一体農協はどれだけの役割を果たせたのかという問題があります。相当の役割を果たした農協とほとんど行政任せで関与しなかったところがあると思いますが、私は農協は積極的に関与すべきだと思っています。また、農協自ら出資した農業生産法人も誕生していますが、それをさらに育成しながら直接支払い対象農地の耕作や、担い手のいないところの耕作なども役割として大きいと思いますね。こう考えますと、直接支払いの交付金は、個人に渡るようにするのか、集落で共同で活用するのか、それは地域に任せていいんじゃないかと思います。

  小田切   農協が関わったところではむしろこの直接支払い制度がうまく動いているのが実態ですね。たとえば、北海道では集落協定の事務局そのものを農協が担っています。あるいは、島根県のJA雲南は集落協定が締結されて現実に交付金が入るまで数カ月間あったために、その期間、集落協定に対して融資をするという総合農協の特色を活かした注目すべき試みもあります。そういうことを考えると農協がこの直接支払い制度にどのように絡むことができるのか、あるいは地域の人々と一緒に地域のデザインをどう考えるのか、大変重要なポイントになると思います。

◆大変ショッキングなJR東日本の冷凍弁当

  小田切   それでは、最後に「未来の架け橋」に向けて総括的なコメントをお聞かせいただけますか。

  山田   最近の問題としてお話ししますと、JR東日本の関連会社がアメリカから冷凍弁当を1日1万食輸入して販売するということが明らかになりました。これはハンバーガーなどに慣れた食生活から米を中心とした食生活のために、それなりの役割を果すのだと主張したにしても、なぜアメリカの弁当でなくてはいけないのか。われわれにとっては大変ショッキングなことです。
 法律に違反していないから何をやってもいいということではないはずです。というのも新基本法のもとで、食と農を国民運動として考えていこうというときに、社会的責任のある大企業が日本の食と農を十分考えてくれていないことに対して、非常にショックで、われわれの運動が、きちんと国民全体に浸透するような動きになっていないのではないかという思いがあります。
 これまで、われわれは、3つの共生運動として、すなわち、次世代の子どもたちに対して食と農を理解してもらう取り組みをしっかりやろうと言ってきたし、消費者に対しては安全なものをどう提供するかを考えてきたわけですが、もっとこの取り組みを意識的に強めていかないと、やはり国民全体で支える農業づくり、それこそ未来への架け橋が築けないわけですね。今回の出来事で痛切にそのことを感じています。

  小田切   今のお話いただいたことも含めて、現在は農政改革の第二ラウンドという重要な位置にありそうです。その設計図がほとんど白紙であるにもかかわらず、経営所得安定対策にしても農村政策にしても、幅広い層が参加した議論が不十分であることを再認識しました。国民的な議論、そこに議論を投げかけるためにも、基本法論議の時と同じように、系統内部で組織討議が今こそ必要だと思いました。今後の議論に期待しています。今日はどうもありがとうございました。

(インタビューを終えて)
 ご存じのように山田専務は系統組織の司令塔。最近も、セーフガードやJR東日本の輸入弁当問題で、テレビや全国紙への対応で飛び回っている。そうした様々な公務の合間を縫ってのインタビューであったため、論点を「担い手対策」「農村政策」の2点に絞り込んだ。
 今回の山田専務の発言は、農協サイドの今までの取組みや考え方に対する「自己評価」を常に前提としているように思われる点で印象的である。例えば、土地利用規制の不十分点についての指摘は、農協や組合員自身による優良農地の転用を意識してのものであろう。また中山間地域等直接支払制度に対する農協の取組みの立ち後れも、率直に指摘している。 その中でも、特に強い反省を語ったように見えたのが営農指導事業をめぐるやりとりである。営農指導員のおかれた現状を、「不幸な時代」と語り、逆にそうした状況からの改善への決意を示している。JA甘楽富岡やJA山口宇部の事例が直ちに紹介されたのも、営農指導事業改革の目標を示そうとしたのであろう。
 司令塔からの率直な反省と強い決意。加えて、営農指導事業を農協の中心事業と位置づけた「新農協法」の施行により、農協改革がいよいよ本格化することを実感させるインタビューであった。
 「未来への架け橋」の可能性は、この先にこそありそうである。 (小田切)


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