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特集:21世紀 食料・農業・農村を拓く女性たち
――JA全国女性協創立50周年記念

自主自立の提案型の活動を

JA全中副会長 加藤源蔵氏に聞く

 半世紀にわたって活発な活動を続けてきたJA女性組織。JAにおける女性の参画も急速に進み、JA組織全体の経営に深く関わり「活性化の起爆剤」として存在価値が高まっている。JA全中の加藤源蔵副会長から、21世紀におけるJA女性組織活動への期待を聞いた。


◆農業を支える女性たち

JA全中副会長
加藤源蔵氏

 農業は女性が支えている。男は口ばっかりで飽き性のところがあるが、女性は粘り強く黙々と仕事を続ける。今の農業の発展は8割は女性の力だといえる。農村、JAの発展に女性の参画は欠かせない。
 この1、2年、JA組織における女性の参画が飛躍的に進んできた。今年はさらに進んでくるだろう。そのことがJA全体の活性化につながっている。全JA組織を挙げて取り組んでいかなければならない重要課題だ。
 JAの経営に女性がもっと参画することで、組織を活性化し、21世紀型のJAへの変革に大きく貢献してくれると信じている。

◆地位向上の中身が充実

 1年前と比べると、女性の意識変革には目を見張るものがある。JAとはなんぞや、経営とはどうあるべきかを基礎から学び直そうという学習活動が、女性の側から自発的に起きてきた。決算書、予算書の読み方などの経営実務やインターネットなど、今まででは考えられない分野に取り組んでいる。
 これは単なる名前だけの「理事」に甘んずることを好しとせず、JAの経営に女性の視点からしっかりと貢献しようとする真摯な態度の表れである。これから男女共同参画を推し進める以上、男性と一緒に肩を並べてやっていくためには、女性理事にも当然のことながら、経営者としての資質が問われるということだ。女性の側からこれにこたえようとするものだ。
 「女性の地位向上」の中身が充実してきたといえる。このような女性たちの意欲を高く評価したい。男性社会といわれるJAも変わらなければならない。女性を積極的に登用し、全面的にバックアップしていく必要がある。

◆JA東京あおばでも女性理事

 私の地元のJA東京あおばでも女性理事が活躍している。いろいろな意味で組織に刺激を与えてくれる貴重な存在だ。
 今年は多くのJAで役員改選年である。当然、女性の参画も飛躍的に進むだろう。また、それを期待している。ただ、副組合長や組合長として代表理事となってくると、さらに難しい問題がある。財政的な重大責任を背負わなければならないからだ。そうなると、本人だけでなく、家族の了解と協力が不可欠だ。ゆくゆくはこうした点もクリアして、初の女性全国連幹部が誕生する時代が遠くないことを望みたい。
 今後も女性たちが、さまざまな研修を続け、実質的な経営参画を進め、JAの発展に貢献してほしい。

◆際立つ自主映画「荷車の歌」

 50周年といえば、私自身が農協の常務理事になって50年になる。当時は無給で、地域一丸となって夢中で働いた。
 女性部の方々もカマド改良、食生活改善運動、自給野菜運動など、時代時代のニーズに合わせた活動を展開してきた。特に印象に残るのは映画「荷車の歌」。女性部の人たちが、毎晩映写機を持って集落座談会を開いた。唐紙に映る映像にみんなが感激した。その感動が、多くを語らなくても村の団結を強め、活動の原動力となっていった。貧しいけれども活力があった。意識改革というのはまさにこういうことだ。この節目の年を機会に、何か「荷車の歌」に代わる、インパクトのある活動を始めてほしい。特に40代〜50代の若い世代に期待をしたい。

◆ファーマーズマーケットで

 全国でファーマーズマーケットや農産物直売所などが人気を博している。1億円を越すものが出てきている。こうした直売所を支えているのも女性パワーだ。自分たちの作った野菜を売り、まんじゅうや漬物など加工品を売って人気を呼んでいる。農村女性たちが持つ生活の知恵や技術が生かされている。直売を通して女性の社会参画、JAとのつながりも深まっていることに注目している。今後一層の活躍が期待できる分野だ。

◆助け合い活動で社会貢献

 女性部が主役となって繰り広げている活動のもう1つの柱が助け合い活動だ。介護保険の施行もあり、各地でJA女性部活動で資格を獲得した人たちがヘルパーとして活躍している。介護保険サービスでカバーできない部分を有償ボランティアで行ったり、地域での声かけ運動などをボランティアでしたりと活動も多彩だ。元気なお年寄りを対象にしたミニディサービスも注目されている。
 女性部の活動が大きな社会貢献を果たしている。地域組合員のためにも、JAとして女性部の方々と手をとりあって、今後も高齢者福祉活動には力を入れていかなければならないと思う。

◆様変わりする女性部活動

 最近の女性部の活動は実に多彩になっている。
 うちの女性部ではパソコン教室が人気だ。自分でeメールを出したり、インターネットに接続したりして楽しんでいる。先日、人からおいしい三輪そうめんをいただいたので、また食べたいと思って取り寄せた時のことだ。パンフレットにあった、eメールアドレスへ注文を夕方四時ごろ送ったところ、なんと翌日の朝十時には自宅に届いていた。JAもJA女性部もこうした時代の変化に対応した組織変革を行わなければならないと思う。

◆中国、韓国でも女性パワー

 中国の視察に行った時のことだ。
 ここでも女性たちが大変元気に活躍していた。発展途上国特有の希望とバイタリティにあふれていた。米に関していえば、大変おいしい品種の生産も始まっていた。半面、日本の農業情勢はますます厳しくなるだろう。
 うかうかしているとやられてしまう。韓国も同様で、農業女性が元気だった。JA女性部のような組織だけでなく、専業農家の女性組織もあり、活発に活動していた。

◆変革の世紀、女性部への期待

 21世紀を迎え、JAも農業もそして女性部も変わらなければならない。自主自立が求められている。JAのご指導をいただくという受身の活動でなく、自分たちがどうしたいのか、何をやりたいのか積極的な活動を期待する。それにはいいリーダーが欠かせない。JAの指導を仰いでいるようではダメ。こうしたらどうか、みんなでこれをやろうという、提案型の活動が必要だ。
 女性が主役の時代だ。都市と農村とでは環境が違うが、次の時代を担うのは女性の方がいい。変革の時には柔軟性が必要だ。女性の方が弾力性がある。
 今後もますますJAへの経営参画を進め、自立的で積極的な活動を期待したい。
 もう一度強調したい。JAも農業も女性部も変わらなければならない。
(インタビュー・構成/ジャーナリスト 山本和子)


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