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特集:座談会 どう変わる中国の農業政策
    「時代ととともに進む」ことを鮮明に打ち出す

資本主義的要素取り入れ競争力をアップ
出席者
藤島 廣二氏 東京農業大学国際食料情報学部教授
阮   蔚(ルアン・ウエイ氏 (株)農林中金総合研究所副主任研究員
原田  康氏 前農協流通研究所理事長(司会)

 中国は11月に開かれた共産党の第16回全国代表会議で、胡錦濤総書記をはじめ、呉邦国、温家宝など革命を体験していない新しい指導部を選出した。さらに新たな行動指針として「3つの代表」論を取り入れ、企業家を含めた幅広い勢力を党に取り込むなど、大きな転換をした。このことによって今後の中国の経済政策がどう変わるのか。なかでも農業政策がどう展開されるのか。そして日本農業はそれにどう対応していけばいいのかなどを、阮蔚・農林中金総研副主任研究員と藤島廣二・東京農大教授に忌憚なく語ってもらった。司会は、原田康・前農流研理事長。

◆グローバル化と内需拡大によるバランスのとれた発展政策
阮 蔚氏
ルアン・ウエイ 昭和57年上海外国語大学日本語学部卒業。平成4年に来日、7年に上智大学大学院経済学修士終了。同年から現職。著書・論文に「中国の世紀 日本の戦略」(共著、日本経済新聞社、平成14年)、「中国WTO加盟の衝撃」(共著、日本経済新聞社、平成13年)、「長江大洪水の総決算」(「中央公論」平成11年3月)。

 原田 中国は1949年10月に建国して以後、毛沢東・周恩来の時代、ケ小平時代そして江沢民の世代を経て、革命を直接体験していない世代である胡錦濤総書記の時代になりました。そして、中央政治局常務委員会のメンバーは、党のエリート集団という感じがしますが、阮さんはどんな感想をもたれましたか。

 阮 全体的には革命の経験がない第4世代の時代になったと思います。そして、静かにスムーズに交代ができたのは初めてのことで、中国の国民にとってはホッとしたということでしょうし、それだけ中国社会が成熟してきたといえると思います。ちょうど党大会の時に北京にいましたが、既定政策通りで「大きな変化はない」と、市民の関心はあまりありませんでした。関心がなかったこと自体が大きな変化だと私は思います。

 原田 胡錦濤体制の政策の特徴はなんでしょうか。

 阮 ケ小平・江沢民時代は、経済発展がまず第一でした。胡錦濤体制は、バランスのとれた発展政策をとると思います。一つは対外開放政策つまりグローバル化です。これは従来から進めてきたことですね。もう一つは、対外依存が4割くらいあり、外需が落ち込むと経済成長がすぐに止まってしまいますから、内需の充実・拡大がポイントになると思います。

◆農家収入を増やし農工間格差縮小が課題

藤島廣二氏
ふじしま・ひろじ 昭和24年埼玉県生まれ。北海道大学農学部農業経済学科卒業。昭和51年北海道大学大学院農学研究科農業経済学専攻修士終了。昭和55年同大学農業経済学専攻博士終了。同年〜60年農水省東北農業試験場研究員、60年〜平成5年農水省中国農業試験場主任研究員、研究室長、5〜8年農水省農業総合研究所流通研究室長、平成8年より現職。

 原田 農業政策はどうですか。

 藤島 江沢民体制から胡錦濤体制に変わってどうなるのか、分からないことが多いんですが、農業との関係で気になることがあります。それは、大国といわれる国は、アメリカやヨーロッパを見ても高い自給率を示していますから、中国も農業政策としては、自給率100%前後を維持するような政策を進めていくだろうと思います。その時に、国際的な競争力が弱いといわれている小麦や大豆の政策をどうするのか。小麦や大豆は輸入に依存し、他の生産量をあげることで自給生産力を維持していくことにするのかどうかが、まだ見えないことです。

 阮 バランスのとれた発展をしながら、農家所得をあげるなど社会的格差の縮小にこれまで以上に胡錦濤体制は取り組んでいくと思いますし、これが大きなポイントになります。

 原田 具体的にはどういう取り組みをすると思いますか。

 阮 毎年年末に翌年の経済運営をどうするかを検討する「中央経済会議」が開催されますが、今年も12月上旬に開かれました。そこで「三農」(農民・農村・農家)問題にいかに取り組むかが検討されました。この会議後に、具体的な計画をたてるための「全国計画会議」が開かれ、9つの来年の政策実施重点項目をあげ、その第一に「農業発展と農村経済発展の支援の度合いを強め農民の収入を増やす」ことをあげました。いかに農工間格差を縮小し、社会の安定を保っていくか、バランスの取れた発展をはかっていくかがここに現れていると思います。

◆食品加工業の発展と大規模化など資本主義的手法で

 原田 今回の党大会で、貧富の格差をなくすために経済力を強めるという「先進的生産力の発展」そして「先進的文化の前進方向」、さらに「中国のもっとも広範な人民の根本利益」を代表する「三つの代表」論が規約に盛り込まれ、入党資格をもつ階級として「労働者、農民、軍人、知識人」と並んで「その他社会階層の先進的な分子」が加えられ、私営企業主など「社会の変革のなかで現れた社会階層」の入党が正式に容認されました。中国では現在、都市と農村の格差、農村における農民間格差という問題があるわけですが、企業家が共産党に入党できるようになることで、農業政策に影響はでるのでしょうか。

 阮 企業家が入党できるようになることで、農産加工品分野では影響があると思います。いま中国の最大の問題は、余剰労働力が1億5000万人から2億人いるということです。これをいかに吸収するかが国家戦略の最大のポイントです。バランスの取れた発展をしていくためには、労働集約的な産業の発展が必要です。その一つが農産加工・食品加工で、これは企業が活躍するエリアであり、これから発展していく分野だといえます。そして、競争を激しくさせていくことで、経済を活発にし活気のあるものにしていくのではないでしょうか。

 藤島 加工産業の発展で、より資本主義的展開があるだろうということでは、私もそう思います。と、同時に、「3つの代表」論は資本主義化を認めるということですから、農業も大規模化・農場化がしやすくなると思います。そういう展開が進まないと国際競争力もつかないわけです。しかし、中国農業全体が大型化することはまずないでしょうから、統計数値的には大規模化に引っ張られて所得の平均値は上がるにしても、その平均値を大幅に下回る農家もかなり残ることになると思います。

◆深刻な余剰労働力問題にどう対応するのか

原田 康氏
はらだ・こう 昭和12年東京生まれ。東京教育大学農学部卒。36年全農(全販連)入会、平成2年大阪支所課長、同年生活部長。5年全農常務理事、8年(株)全農燃料ターミナル社長、11年(社)農協流通研究所理事長、14年同理事長を退任。

 原田 資本主義的な手法をとることで、農業そのものの力は強くなるかもしれませんが、農民内部の所得格差は広がるという傾向をもつと思いますね。

 阮 その通りですね。中国における農業・農村・農民問題で一番やりにくい問題です。
 国際競争力を強めるためには大規模化はやらざるをえないと思います。実際にいま土地の流動化が進められそういう方向に動いています。しかし、いくら大規模化しても、中国の農家規模は日本よりも小さいですし、北海道や東北のような大規模化にはならないと思います。中国では政策を決めたら必ずやるという面がありますから、一部ではできるでしょうが、それがうまくいくためには、一つは海外マーケットの問題があります。これはモノの貿易だけではなく人のグローバル化の問題もあります。そのことも含めて海外からどれだけ加工品受注があるか。そして内需をどこまで拡大していくことができるのかなど、周りの環境がうまく発展しなかったら、大規模化も予想したようにはいかないでしょうね。
 たぶん、それほど急速にはできないのではないかと思います。そうすると農工間格差は拡大していくでしょう。そして農家内部でもご指摘のように格差が拡大するでしょうね。

 藤島 その時にどうするかですね。

 阮 農村でのセーフティーネット、つまり所得の低い人への最低生活保障制度の整備だと思います。すでに浙江省ではテストとして、この制度が実施されています。この問題は、あまりにも大量な労働力を抱えていますから、日本よりも百倍も深刻だと思います。それから兼業化の問題もあります。平均的には農家所得に占める農業所得は低下傾向にあり、所得の半分は農外所得です。土地を手放さずに兼業化していくなかでの集約化という問題ですね。

 藤島 輸出をしようというときには、規格のそろったものを一定量集めなければいけませんから、それなりの規模が必要で、そのために規模拡大しなければならないわけです。そうすると資本主義的な発展は避けがたいだろうと思います。そして一方では農村内部での農家間格差の問題があるわけです。これを解決するためには、それぞれの地域内の加工企業をどれだけ発展させられるかということになりますね。そうすると政府がとる政策としては、海外資本も含めて加工企業をどれだけ誘致できるかと、どれだけ農業の大規模化を進められるかではないかと思います。いずれにしても資本主義的な方向でしか生き残れる道はないという感じですね。

◆農協の設立と流通システムの効率化が急務

 

 原田 そういう中で取り残される零細農家をどうするかが大きな問題になりますね。

 阮 零細農家が大量に存在するなかで効率化し農家の利益を求めていくには、農協が必要だと思いますね。これはいままでの中国が引き延ばしてきた課題ですが、これからは、この問題に取り組んでいかざるをえないですね。農協組織のなかで大規模化し零細農家を抱えていくことだと思います。
 中国では、例えば日本の商社が大規模農家だけと契約して農産物を集めるということはできません。いろいろな形態がありますが、一つの形態として、行政の下請け的組織である村委員会と一括契約し、その委員会が農家を指導し農産物を集めるというのがあります。これはある意味で農協の形ができてきているともいえますね。自然発生的には農協のような組織が生まれてきていますが、政府のバックアップ政策がありませんでした。これからは、制度面での政府のバックアップが必要です。
 歴史的に見ると、農協の最大の役割は、農家の所得を引き上げたこと、格差を縮小したことにあると思いますから、中国でも農協組織が整備されてくると、農村社会の格差縮小にある程度貢献していくと思います。この分野では、日本の農協は貢献できるのではないでしょうか。

 藤島 日本と同じものかどうかは別にして、農協のような組織は必要でしょうね。そして、中国における流通システムの非効率性が問題だと思いますね。
 自給自足的経済ならば、自分のところで生産し食べていければいいわけですから、農協がなくてもいいわけです。ところが、商品経済社会になると対外的な機能が必要になり、対外的な機能を行うものとして農協のようなある程度調整能力をもった組織が必要になってくるわけです。しかし、それに対応する流通システムがないとうまくいかない。ところが、例えばいまの中国の卸売市場は、生産者が直接持ち込んで売れるまで待っているという、日本では考えられない状況で、言い方は悪いですが、非常に原始的な段階にあると思います。これの効率性もあげていかないといけないと思います。
 農村部では農協をつくって、都市部では卸売市場に限りませんが、流通を効率よくするシステムを同時につくっていかないといけない。農協だけができても、いくらかは良くなるでしょうが、期待される効果は生まれないだろうと思いますね。

 阮 おっしゃる通りです。中国の農産物価格に占める流通コストの割合は高いです。なぜかといえば、農協のような組織がありませんから、一人ひとりの農民が小さな車に自分がつくったモノを積んで都市部に持っていって売るからです。みんな零細農家ですから、村で同じ農産物をつくらなければブランド化できませんし、商品力がありません。同じものをつくって一つのブランドにし、流通面でも農協を通すというように、流通システムを改善することが必要だと思います。

◆どこに焦点を当てて「政治的決断」をするかがポイント

藤島廣二氏

 原田 中国の流通をどのように近代化していくのかは、大きな課題ですね。とくにつくった農産物を売る場所をどうつくるかですね。問題は、中国は広大ですから日本のように次の日には都市部に着かないということがありますね。そして日本の場合には平均化されていますが、中国は富が上海とか北京などに偏在し、農村そのものにはほとんど購買力がありません。しかも都市部は国際的なスーパーマーケットが抑えにかかっているわけです。そういうなかで、零細農家のつくった農産物を売るシステムをつくるのは、大変に大きな課題ですね。

 藤島 都市部で売るには、ある程度数量的にまとめなければいけませんし、個々の農家に販売先をみつけなさいといっても無理ですから、日本の農協に類似したものをつくることは重要ですね。
 それから、消費者までのルートとの関連でいいますと、中国の野菜生産量は年間4億トンあるそうです。人口が13億人だとして計算すると、1人が年間に300キログラム食べることになります。日本は100キログラムくらいですし、消費量の多いイタリアや韓国でも200キログラムはありませんから、実際には年間300キログラムは食べていないと思います。仮に200キログラム食べているとしても、3分の1にあたる100キログラムはどこかでロスになっているわけです。これを改善するだけでも、自給率・自給力は上がると思いますから、この問題は重要だといえますね。

 阮 そうですね。

 藤島 これからの中国は、資本主義的な要素を取り入れていくと思いますが、そのときに、どういったところを考えて取り入れていくかを決めるのが、それこそ「政治的決断」だと思いますが、それが非常に重要だと思います。加工企業を誘致するとか、農協をつくるとかですね。そして農協をつくるときには、販売ルートの効率化をどうやってはかっていくのかを同時にやっていく方策をとる必要があると思います。それでも、先ほどから話題になっているように、農村内の農家間格差が簡単に埋まるとはいえませんから、大きな問題として残ると思います。しかし、加工企業の誘致等をやらなければ、沿海部と内陸部の格差が大きすぎますから、やらざるをえないのではないでしょうか。

 原田 中国のGDP(国内総生産)の半分近くは、外資系企業関連によって支えられているそうです。中国がWTOに加盟して1年が経ちましたが、ASEAN(東南アジア諸国連合)や東アジア自由貿易圏構想などに中国は積極的に関わってきていますし、日中間の関係についてもいろいろな動きがありますね。そして、阮さんが最近ご指摘になっている(「農林金融」2002年12月号)中国のアメリカからの穀物や油脂類の輸入、日本に対する農産物・加工品の輸出という日本・アメリカ・中国のトライアングル関係など、国際的な経済の中に中国も入ってきているわけです。こうした国際的な結びつきのなかで、先ほどからの農業・農村の問題もでてくるわけです。

◆日本農業の役割
  アジア諸国と補完関係を

阮 蔚氏

 原田 日本は、自動車を含めてあらゆる産業が中国に投資をしています。しかも、中国の内需を予定した投資をしていますから、日本と中国はしっかり経済的な結びつきがあります。そのなかで農業だけがラチ外といっても通用しませんから、日本農業はどのような政策をもたなければいけないとお考えですか。

 阮 中国とアジアの大きな変化の一つがグローバル化、つまり経済の開放です。農業についていえば、中国は部分的には日本よりも開放していると思います。日本は工業製品をアジア諸国に大量に輸出しているから、貿易のバランスを維持していくために農産物市場の開放もやむをえないのでしょう。

 原田 開放するには、どうすればいいと思いますか。

 阮 先進国の中で日本だけが自給率が、穀物で28%、カロリーベースで40%、金額ベースでは70%強、野菜は80%以上とイビツです。フランスの自給率は200%近いわけですが、野菜の価格は高くはありません。なぜ日本は、こういう構造になるのか。この構造自体を考え、国民が議論すべきだと思います。
 カロリーベースの自給率をあげればいいと思います。水田は日本の国土にあったものですから、コメは守って欲しいですね。水田を守っていくには、水田に関連する自給率を高めるということを考えざるをえない。それは、飼料米を拡大するとか、コメ粉でパンを作るとか工夫して、輸入トウモロコシや小麦の代替にすれば、穀物自給率とカロリーベース自給率を高められます。そのためには、資金の補助が必要です。いま日本の農業への補助金は、OECDの調査では先進国のトップクラスです。いままでは必要性があって道路とかインフラ整備に使われてきましたが、これからは農家の直接所得保障に使った方がいいと思いますし、自給率があがるのですから、国民のコンセンサスも得られるのではないでしょうか。

 原田 開放度が低いというのは、国境措置もありますか。

 阮 あるかも知れません。もし国内価格が国際供給に連動するように低下したら、輸入品もそんなに入ってこないでしょう。この場合、低下した部分を直接所得保障でカバーしていく必要性が出てくるでしょう。
 それから、WTOを補完するものとしてこれからはアジアでもFTA(自由貿易協定)が必要になると思います。そして、アジア経済の多くを占めている日本のリーダーシップが必要です。

 原田 そのときに、日本農業の役割はなんですか。

 阮 アジアの特徴は何かといえば、労働力が余っているということです。ですから日本は、アジアの国々がそれぞれもっている比較優位な労働集約的な農産物との補完的な関係をつくることです。そのことで、日本は自主的にある部分を開放していくことになります。コメは輸入しないけれど他の農産物を開放することにすれば、アジアの国々はそれほど反対しないと思います。開放したら積極的にPRすれば、日本のイメージもあがります。

◆大規模化には余剰労働力を吸収できる工業的政策が必要

原田 康氏

 原田 藤島先生はどう思われますか。

 藤島 コメを中心にしながら、労働集約的な農産物についてはアジアからの輸入を増やすというのは、一つの方法だとは思います。しかし、コメをトウモロコシや小麦の代替用に加工というお話がありましたが、日本の場合に大きなネックになっているのは、規模の問題です。個々の生産者が小規模の場合、加工品にまわすのは非常に難しいですね。野菜が典型的ですが、野菜の輸入というと生鮮野菜と思われがちですが、加工野菜の方が圧倒的に多いんです。イモ類や茸類を入れると13年で400万トンくらいの輸入があり、その内生鮮物は100万トン弱ですから4分の3は加工品です。生鮮野菜だけの自給率は90%以上ありますが、加工品で見ると冷凍野菜は90%が輸入というように、加工品はほとんど輸入です。穀物の場合も、加工品・加工用や飼料用としての輸入が多く自給率が下がっています。
 どうしてそうならざるをえないのかといいますと、野菜の場合、農家の生産規模は50アール以下がほとんどです。こうした規模の小さい農家が収益をあげるには、単価が高くなければダメなんです。生鮮用は加工用よりも単価が倍近く高いので、加工用には出せません。これはコメも同じで、加工用・飼料用に出せば所得が確保できません。

 原田 そのときに所得保障をというのが阮さんのご意見でしたが・・・。

 藤島 予算の問題などで、難しい側面があり、どうしても限界がでてくると思いますね。そうするとある程度、大規模化せざるをえない。大規模化すると、中国でも同じだと思いますが、余剰労働力がでてきます。日本の農業・農村がこれまでそれなりに発展できた一因は、都市部の工業が農村の余剰労働力を吸収できたことにあると思います。それと同じで、今後、日本が農業の大規模化を進めるには、余剰労働力を吸収できる政策がとれるかどうかによると思われます。農業政策だけれども、工業政策的なこともちゃんとやらないとできないということです。

 原田 それができないと価格低下もできない・・・。

 藤島 日本の場合、ある程度規模拡大しないと価格低下は、できないと思います。

◆日本農業は世界の最先端に
  農協も時代と共に進む意識を

 阮 農業は品種改良やさまざまな技術が必要で、そのためには資金が要りますから先進国型産業です。遺伝子組み換えとか企業ベースの研究はアメリカが進んでいますが、品種改良とかは日本の方が進んでいますし、流通も進んでいて、世界でも最先端にあると思います。これは競争力につながりますね。問題は、労賃が高いことと、政策上の問題で、これを解決すれば競争力はあると思います。日本農業は自信を喪失して、開放を恐れているだけではないですか。

 原田 先ほど、中国では農協組織をつくらなければというお話がありましたが、日本の場合は農協組織そのものが、もっとグローバルな立場での判断をしてリードをしていかないといけないかもしれませんね。

 阮 江沢民は、中国共産党は「時代とともに進む」といっています。組織も人間と同じように歳をとると保守化していきますから、組織自体が変わっていかないと時代から捨てられてしまいます。中国共産党が「3つの代表」論を入れたということは、いままでと根本的に変わり組織を維持していこうということです。日本の農協も「時代とともに進む」という意識をもっと強める必要があるかも知れません。

 藤島 いままで大変に重要な役割を日本の農協は果たしてきていますが、今後もその役割を果たすためには、時代にあわせた柔軟性が必要ですね。

 原田 貴重なご意見をありがとうございました。


座談会を終えて

 日本のマスコミはあまり報道をしなかったが、先の11月の中国共産党大会で江沢民主席が強調した言葉に「時代と共に進む」というのがあったと阮さんから紹介があった。中国は“政治決定が先、手続きは後”の国である。日本はこの逆。
 中国は国内に問題をしっかりと抱えているとはいえ、アメリカ、日本、東南アジア諸国との間で最大の貿易相手の国として発展している。
 私企業の経営者を共産党員にする柔軟な発想をする国も、農民、農家、農村問題がアキレス腱となっている。
 藤島教授、阮さんのご指摘のなかに日本の農業はどのように競争力をつけるか、農協組織はどのようにかかわるべきか方向が示されている。
 農協組織にとって「時代と共に進む」は、組織内部のリストラのレベルではなく、国際的な視野に立った判断を求められている時代ではないか。(原田)


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