JACOM ---農業協同組合新聞/トップページへジャンプします

特集:低コストで確かな効果をあげる水稲除草剤

個別農家の状況を正確に把握した営農指導で普及
JAふくおか八女、JA全農ふくれん

◆水稲作付面積のほぼ半分で使用されている福岡県

棚田での稲刈り
棚田での稲刈り

 福岡県でMY―100混合剤が本格的に取り扱われることになったのは、14農薬年度からだ。それは「県内の試験ほ場でテストをして、効果などに間違いがないことを確認してから普及推進に取組んだからだ」とJA全農ふくれん(県本部)資材部の松尾義光生産資材課長。
 テストで良好な結果をえたJA全農ふくれんは、13年12月に県内JAの営農指導員などを対象にする14農薬年度の「防除暦作成対策会議」を開き、MY―100混合剤についての詳しい説明を行い、各JAでの防除暦への採用を要請。このときに、県本部として強調したことは、1、低コストで効果の高い水稲除草剤であること、2、土壌吸着力が強いので、環境に優しく安全性が高いこと、3、ジャンボ剤など省力製剤があり使いやすいこと、などであったという。
除草剤散布風景
棚田での稲刈り
 この結果、県下26JA中24JAで採用され、14年農薬年度の普及推進実績は、水稲作付面積4万900ヘクタールのほぼ2分の1を占める48.3%と他を大きく引き離して全国のトップ。また、普及面積も1万9750ヘクタールと、秋田県に次いで全国2位という結果を残すことができた。これを銘柄別に見ると、ホームラン1キロ粒剤5128.4%、サラブレッドフロアブル24.6%、パットフルLジャンボ22.8%、サットフルLフロアブル15.3%などとなっており、ジャンボ剤の比率が高いことが特徴といえる。
 JA別に見ると、JA福岡嘉穂、JAふくおか八女、JA筑前あさくら、JA直鞍、JA福岡みやこで1000ヘクタールを超えて普及されている。なかでもJAふくおか八女では、水稲作付面積約2300ヘクタールの92%でMY―100混合剤が使われている。

◆暦も予約注文書もMY―100混合剤のみ記載 ―JAふくおか八女

 

 JAふくおか八女でも、指標場で試験をした結果が良かったので、昨年12月の「農業振興連絡会議」(構成メンバー、行政、防除所、農業共済組合、JA、JA全農ふくれんなど)で、MY―100混合剤の採用を決定した。同JAは広域合併JAで、平場から山間地まであり、品種や栽培方法が異なるので、防除暦は平場用と山間地用の二通りが作成されるが、そのいずれの暦にも採用した。
 同JAを取材して驚かされたのは、いずれの暦にも予約注文書にも、水稲除草剤としてはMY―100混合剤以外は記載されていないということだ(いぐさ地帯を除く)。これが普及率92%の秘密でもあったわけだ。同JA農産部農畜産課の池田一義係長によれば「どうしても従来使っていた剤を使いたいという人以外」は全員がMY―100混合剤に切替えたという。言いかえれば、JAに対する結集、信頼が非常に強いということができるだろう。
 
 同JAは平成8年に、8市町村の8JAが合併して誕生したが、それぞれに個性があり、その土壌や気候風土にあわせた特産品が多く存在する。そうした個性を活かすことと「営農指導は農協の基本であり、農村部ほどこれを大事にしなくてはいけない」(才所秀生同JA農産部農畜産課長)ということから、合併後も営農指導員を減らさず、力をいれてきている。
 肥料農薬については、集落座談会で丁寧に説明すると同時に、戸別に設計をし予約注文をとっている。「農協はいかに組合員と接するかだ」(才所課長)ということで、営農指導員は自分の担当地区の個別農家ごとの状況をしっかりと把握したうえで、集落座談会などで「対面で、実感を込めて説明するので、農家も安心」(池田係長)して営農指導を受けいれている。
 MY―100混合剤を採用したポイントは、米価が低迷していることもあって低コストであること。効果が持続すること。フロアブル剤やジャンボ剤など省力化ができること。環境に優しいこと、だったという。

◆効果が高く、低コスト、安全、使いやすさがポイント

 

 とくに同JAは、茶、イチゴ、キクの産地として全国に知られているように、園芸作物との複合経営が多いこと。農業に携る人に女性や高齢者が多いことから、効果が分れば簡便な方がいいという人が多いという。14農薬年度の実績を見るとサットフルフロアブルが38%、パットフルジャンボが33%、ホームラン1キロ21%となっていることもこれを裏付けている。ジャンボ剤の比率がかなり高いが、「朝、農協に出荷する前にちょっと撒いておこうという感覚で、山間地でもジャンボ剤を使い、散布機は壁に掛っているがほとんど使われず、サビ付いている農家」もあるという。
除草剤散布風景
除草剤散布風景
 実際に使った農家の評判もいいというが、とくに環境に優しく安全だということへの関心が高いという。同JAは「全農安心システム」にも早くから取組んできているが、今年秋には、残留農薬分析システムをJAとして導入し、残留農薬、栄養分析、土壌診断分析結果など農産物に関るさまざまな情報を、インターネットによって正確に消費者に提供する「環境センター」を開設するなど、安心・安全への取組みを積極的に進めてきている。そうしたことから、環境に優しい農薬への関心は高い。「とくに川上の人は、下に流すのでMY―100は安心でしょうという人が多い」という。

◆県内JAでの採用で普及率60%を

花茎抽出期のノビエ
花茎抽出期のノビエ

 取組み初年度で全国一の普及率を実現したJA全農ふくれんでは、今後は「全JAでの暦採用を実現し普及率60%を目指していく」(松尾課長)とその決意を語ってくれた。環境に優しく安全で、コストが安く、効果が高く持続するMY―100混合剤は、福岡県の水稲除草剤として確固たる地位を築いていたことは間違いない。後は、抵抗性雑草に効果あるMY―100混合剤をより低コストで提供してもらえれば、というのが松尾課長の願いだ。



農業協同組合新聞(社団法人農協協会)
webmaster@jacom.or.jp