農業協同組合新聞 JACOM
   
特集:JA共済でゆたかで安心な地域社会を

役職員の意識改革が
顧客満足度を向上させる

 JA共済連では、厳しい環境下でJA共済事業を確立していくための体制整備支援活動を行っているが、従来のようなJAの規模によって具備すべき条件を前提とした一律モデルを提示しても、必ずしもJAの状況にマッチしないと考え、14年度から個別JAごとに共済事業のあり方を提案し、その実現を支援する「JA共済コンサルティング活動」(従来は、体制整備支援活動と呼称)を実施してきている。この活動の中で明らかになってきたJA共済事業の課題をJA共済連経営企画部体制整備室に取材した。

◆4つの視点から分析
図1

 JA共済コンサルティング活動(コンサル活動)は、平成13年度に3JAをモデルJAとしてスタート。14年度はモデルJAとして50JAを対象にコンサルティングを実施し、平成14年度の結果をうけ今年度は本格的に活動をはじめ90JAが予定されている。
 コンサル活動の基本的な考え方は「JAのあるべき体制像は、JAごとに異なる」ことを前提に、▽普及推進力の強化 ▽サービス力の強化 ▽効率的な運営体制の構築の3つの目標と、それを実現するための「JAごとのあるべき体制」、「競争に打ち勝つ体制」、「収支をふまえた体制」、「JA全体の経営を見据えた体制整備の方針」を策定することにある。
 実際のコンサルティングの進め方は、図1のように▽利用者満足度(CS)▽役職員満足度(ES)▽経営状況▽市場性の4つを大きな視点として基本的な課題を抽出し、それを▽普及推進面▽事務処理面▽事故処理面▽組織・職場面に分類し、それぞれに対して解決策の策定・提案を行うというものだ。
 以下に、14年度の50JAに対するコンサル活動で明らかになった課題を上記の4つの視点からみてみる。

◆実績が良くてもCS低ければ事業基盤は縮小

 毎年JA共済連が実施している「JA共済利用者満足度調査・役職員満足度調査」の14年度版(14年CS・ES調査)によると、JA共済加入者の総合満足度が高いほど「継続加入意向」が高く、CSの向上は重要な課題だといえる。しかし、コンサル対象JAの中には、総合満足度が下がってきているJAが多い。これは、CS調査の結果を活かした活動が効果的に行われてこなかったためではないかと思われる。
 また、現状において、積極的な目標設定と強力な推進力の発揮により、優秀な共済実績を確保しているJAの中には、必ずしもCS面では十分な評価を得られていないJAも現実に存在する。今後早急にCSの維持・向上への手を打っていかない限り、前述のCSと存続加入意向の明確な相関関係が示すとおり、利用者基盤の縮小、実績の低下に見舞われる恐れが大きいといえる。

◆相関関係にあるCSとES
―課題多い職員満足度

図2 図3
図2
図3

 どんなに優れた提案がされても、それを実行するのはJAの役職員だ。この人たちが積極的に提案を受け止め実行する意欲を持たなければ「絵に描いた餅」にすぎない。そういう意味でESは大きな意味を持っているといえる。
 コンサルJAはほとんどが既合併JAであるが、JAの方針に対する満足度の質問項目(JAの理念・方針・戦略に満足しているか?)が他の項目に比べて相対的に低くなっている。これはJAの規模が大きくなったことで、JAトップの声が職員に届きにくくなっていると同時に、職員の声もトップまで届いていないためではないだろうか。「14年CS・ES調査」でも、組合員規模の大きいJAほどESが低くなっており、この状況を裏付けている。
 また、一般職員の一斉推進に対する疲弊感が出ているという声をよく聞くが、一斉推進に対する満足度は、担当業務の満足度に比べて低い状況にある。
 ES調査結果の全国的な状況を見てみると、図2はJAの方針などについての評価をまとめたものだが、「JAに対する愛着心」には約3分の2の役職員(無回答を除く)が肯定的な回答をしているのに対して、その他の項目については全般的に評価が低い。とくに「JAの方針などへの満足度」が低く「愛着心」との乖離が目立つ。
 図3は12〜14年の調査で高ESのJAと低ESのJAを比較したものであるが、満足度の高いJAと低いJAでは20〜40ポイント近くも離れており、JAごとの格差が相当にある。
 また、ESが高いJAほどCSは高くなる結果となっている。つまり、役職員の満足度が高いほど業務の改革改善が進み、利用者満足度が高くなり業績も向上するという「良い循環」になるが、逆の場合には「悪しき循環」に陥り最悪の結果を招く恐れがあるということになる。

◆厳しい経営状況、
  高まる共済事業への期待


 コンサルJAの職員1人当たり事業利益(全事業)を見ると、100万円〜マイナス100万円の範囲内に集中している。これは全国のJAの分布と一致しており、JA経営の厳しい状況を反映している。
 そしてこれらのJAは、共済事業も含めて右肩下がりの傾向にあるが、信用事業収益の低下が激しいJAほど経営状況は厳しく、共済事業への期待度は相対的に大きくなってきている。

◆エリア別市場分析で
  新たな普及推進戦略を


 JA内の市場を細分化して長期共済世帯加入率を分析すると、実績の高いJAでもエリア別にはかなりの格差があり、一般的傾向として農村エリアが高く、都市エリアが低い傾向にある。自動車共済でも同様な傾向にある。また、世帯加入率が100%に近いエリアでも、ひと(生命共済)、家(建更共済)、車(自動車共済)のすべてに加入している世帯は2〜3割程度というJAもある。
 このようにエリア別にさまざまな角度から市場を分析していくことで、新たな市場攻略目標が見えてくるといえる。
 多くのJAでは支所別に目標設定をしているが、合併前の旧JA単位であったり、目標設定の仕方そのものが旧JAのやり方を引きずっており、LAの配置も市場性にもとづいたものに必ずしもなっていない。

◆問われるトップマネジメントのあり方

 4つの視点からJA共済事業の課題を見てきたが、役職員の意識改革をどう進めるのか、自JAのエリア別に市場分析を行い、それにもとづいた普及推進戦略をたて、適正な人員配置をしていくかが課題として浮き彫りになってきたといえる。とくに、役職員の意識改革によるES向上がCSの向上につながるという指摘は重要であり、これからのトップマネジメントのあり方が問われているといえる。そしてこれは共済事業だけの問題ではなく、JAの全事業に共通していえる課題でもあるだろう。

(2003.5.27)

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