農業協同組合新聞 JACOM
   
特集:米穀事業改革 売れるコメづくりをめざして


15年産端境期対策への取り組みと15年産の集荷対策化

 この夏の低温と日照不足から15年産の不作が懸念され入札価格が上昇している。15年10月末の政府米と自主流通米の在庫はあわせて150万トン程度あるため安定供給に支障はないが、新米の出回りが遅れているため、政府は政府米の追加売却を決定、JA全農では14年産の調整保管米の解除をした。ここではJA全農の端境期対策と今後の集荷対策についてJA全農米穀販売部の考え方を紹介する。

自主流通米の調整保管を解除―15年産端境期対策への取り組み

◆15年産水稲の作柄概況

 低温、日照不足などの影響で15年産米の不作が懸念されているが、8月15日現在の作柄概況は以下のようになっている。
 早場米地帯(19道県)では、北海道と東北の太平洋側で、7月中・下旬の著しい低温の影響で不稔モミの発生が見込まれることなどから「著しい不良」と「不良」が見込まれている。その他の地域でも日照不足の影響などにより「不良」が見込まれている。
 早場地帯の都道府県別の作柄は、「平年並み」1県、「やや不良」12県、「不良」2県、「著しい不良」が4道県となっている。
 また、遅場地帯(27都府県)の生育は、6月中旬以降の日照不足などの影響で総じて茎数が平年並みないしやや少ないことから、平年並みないしやや不良で推移している。
 早期栽培については8月15日時点で作況指数が示され、徳島県が96の「やや不良」、高知県が95の「やや不良」、宮崎県と鹿児島県が93の「不良」、沖縄県が99の「平年並み」となった。

◆米の需給と価格動向

 こうした状況のなかで15年産の早期米の入札結果は、値上がりしているが、その要因として(1)14年産米のコシヒカリなどの銘柄米が不足している、(2)15年産鹿児島・宮崎など超早期米の出回りが少ない、(3)関東・北陸の生育が遅れている、(4)量販店などでの新米キャンペーンのための玉確保、などが考えられている。
 米の需給についてはこのように不作懸念から仮需要が発生している。ただ、入札価格の上昇は不作の見通しはあるが、玉自体の出回りが遅れたため、実勢価格以上の値上がりになっていると考えられる。
 また、現時点で作柄の見通しと、政府米・自主流通米の在庫が合わせて150万トンあることを考えれば、全体として消費者に対する安定供給に支障はないと考えられている。

◆消費者に確実に届ける販売

 ただし、新米の出回りが遅れているため9月から10月の端境期の対策が必要になっており、JA全農は9月3日に14年産自主流通米の調整保管を解除する方針を決めた。
 合わせて農水省は政府備蓄米も追加販売していくことにした。
 14年産自主流通米の調整保管は約10万トンで、全銘柄を対象に卸売業者の購入希望を聞き銘柄と販売数量を決定することにしている。
 JA全農では販売にあたっては、不作が懸念される状況のなかで安定供給を図っていく観点から、当面、実績をふまえた販売を行っていくなど、消費者にきちんと届く売り方を実施していく必要があると考えている。

より生産者に近く柔軟な対応を―15年産の集荷対策

◆基本的な対策 もう一度見直しを

 15年産の不作懸念から仮需要が発生し価格が上昇している状況に対して14年産調整保管米の解除や政府米の追加売却を実施するという今回の端境期対策は、他方でJAグループの集荷対策の側面もある。前述のとおり、全体的には安定供給に支障がないわけであり、一時的な不足感を解消するために市場に潤沢に米を放出することによって、適正な価格に落ちつくことになる。そうすることによって、適正な仮渡金水準を設定することもでき、生産者にも理解が得られるものと考えている。
 ただし、全国的に新米の出回りの遅れや地域によっては不作が確実になっているところもあるため、JA全農では現場での集荷対策を改めて見直す必要があるとしている。

◆生産者へ周知徹底を

 そのひとつが、仮渡し金水準の設定。これは仮渡し金水準を検討するというよりも、これまでの米の保管管理料、輸送費、あるいは販売対策費など流通、販売のための経費を見直すことによって、その経費を下げることで実質的に仮渡し金水準を上げるという対策だ。例年のように米の過剰基調を前提に販売対策を考えこれらの保管、輸送などの経費を見込むのでなく、今年は不作懸念から販売が順調に進むと想定して、あらかじめ不必要なコストを削減、その削減分を仮渡し金水準に反映させることも可能ではないかと検討することも、集荷率の向上と安定供給に貢献することになる。
調製保管米

 また、販売は順調に進むという想定から、年内に追加払いを行うことを生産者に示すことや、早期米地帯で行われている出荷時期別に仮渡し金を設定するなど、弾力的な対応も必要になる。
 いずれも仮渡し金価格水準も含めて生産者への周知徹底が大切となる。
 そのほか不作が想定される地域では、米の作柄に応じた出荷規格の新たな設定や加工米の作況調整もする必要がある。
 さらに、これまでJAの集荷対策として重要視されてきた庭先集荷、カントリーエレベーターなど施設集荷、検査体制の充実なども今年は改めて徹底する必要もある。
 また、カントリーエレベーターでは手数料の大口利用割引や平日利用割引などの導入、フレコン利用の促進、出荷者への検査スケジュールなどの情報伝達といったJAとしてのサービスを洗い出し徹底させる必要がある。JA全農では今年産の集荷では、改めてより生産者に近い立場で集荷に関連する取り組みを考えることが大切だと考えている。 (2003.9.18)


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