農業協同組合新聞 JACOM
   

エコファーマーに挑戦 農薬使用は10成分以内

JAそうま・JA全農福島県本部に聞く

 JAそうまは、「MY―100」の普及推進に全力投入している。『安全で安心できる農産物』生産のために昨年からトレーサビリティの確立にも取り組み、着実に成果をあげつつある。そのJAそうまは、『売れるそうま米』を構築するために、平成16年度からエコファーマーに取り組むことにした。これまでの道のりを、JAそうま営農部の高平栄次郎生産資材課長とJA全農福島県本部生産資材課の八鍬裕之課長補佐に聞いた。
JAそうま本店
JAそうま本店(11月28日撮影)

 米どころ福島県。地形は東西に長く、「会津」、「中通り」、「浜通り」の3地域に分かれる。
 JAそうま(森義光組合長)管内は、この「浜通り」に位置している。太平洋沿岸沿いの平坦地にあり夏は涼しく降雪が少ない、海洋性の温暖な気候となっている。一方、あぶくま山間地は、夏は比較的冷涼で、冬は冷え込みが厳しい内陸性気候を示している。

◆低温・日照不足で管内作況指数は82

 JAそうまの概況を見ると、正組合員1万7195人、准組合員4503人となっている。生産資材関係は、本所の営農部生産資材課が中心となり、飯舘、小高、原町、鹿島、相馬中村、新地の6カ所の総合支店と連携した営農センター・営農部が担っている。
 管内の農業は、水稲を主体に温暖な立地条件を生かし、畜産、野菜、果樹などが盛んだ。水稲の作付面積は約7500ヘクタールにおよび、品種はコシヒカリ(60%)、ひとめぼれ(30%)、あきたこまち・その他(10%)の構成。
 福島県の今年の作況指数は89。「浜通り」管内は、“やませ”の影響を受け作況指数82と厳しかった。とくに、早生および中生品種では登熟歩合の著しい低下および玄米千粒重の低下、コシヒカリでは登熟歩合、玄米千粒重の低下が影響した。

◆エコファーマー認定  『売れるそうま米』へ

 消費者の食品に対する安全・安心志向が高まっている。JAそうまでは、一層の『安全で安心できる農産物』の生産に取り組んでいるが、そのためのトレーサビリティの確立も、消費者に信頼される農産物供給のためには必要不可欠とし、昨年から取り組んでいる。
 また、JAそうまでは、「消費者に信頼される」(1)環境に配慮した安全・安心な米づくり(2)美味しい高品質な米づくり(3)多様な用途に対応した米づくりを早急に築いていくことにしているが、そのためにエコファーマー認定の米づくり(化学農薬・化学肥料20%削減)を平成16年度から実施していくことにした。

◆簡単処理と効果安定で伸長のミスターホームラン剤

 JAそうまが、ミスターホームラン剤を採用したのはフロアブル剤から。平成14年度の普及面積は322ヘクタールだったが、平成15年度は587ヘクタールに拡大した。また、平成15年度から採用した1キロ剤、ジャンボ剤もそれぞれ122ヘクタール、366ヘクタールの実績を残している。
 ミスターホームラン剤が躍進したのは何故だったのか。「農家さんの声を聞いてみると、処理が非常に簡単で、効果が安定していることに集約できる」と高平栄次郎生産資材課長は語る。また、「(ミスターホームラン剤が)SU抵抗性雑草対策に貢献していることも大きい」(同)という。
 フロアブル剤は、とくに50アール〜1ヘクタールの大規模区画ほ場の大口農家に人気があったようだ。また、「ジャンボ剤については、30アール未満の小区画ほ場で使用されたケースが多く、女性の方からも重宝がられた」(同)という。
 JAそうまも平成15年度の『ありがとうキャンペーン』を実施し、好評だった。それに加え、「市況にとらわれることなく、JA独自の価格設定にしたことが大きい」(同)とも語る。

◆ミスターホームラン剤3剤型を栽培基準に採用

 JAそうまの『平成16年度春農薬予約注文書』を見ると、エコ栽培推奨品目としてウィンバリアード箱粒剤、ソルネット粒剤、ミスターホームラン1キロ粒剤、ミスターホームランフロアブル、トップガンフロアブル、ミスターホームランジャンボ、マメットSM粒、MR.ジョーカー粉剤DL、スタークル粒剤の9品目が載っている。
 エコファーマー認定の米づくりでは、具体的にどのような防除システムになるのか。ここでは、そうまコシヒカリ栽培基準で見てみよう。それは、結論からいうと本田の化学農薬延べ有効成分使用回数を10成分以内としたものだ。この中に、ミスターホームランの1キロ剤、フロアブル剤、ジャンボ剤の3剤型が採用された。
 まず、いもち病・害虫予防箱処理剤としてウィンバリアード箱粒剤(2成分)を使用。除草剤は、初期剤としてソルネット粒剤(1成分)を散布し、その後ミスターホームラン(3成分)を使用。使用場面に応じて、1キロ剤、フロアブル剤、ジャンボ剤のうちどれか1剤を選択する。穂いもちは、コラトップ粒剤(1成分)で防除。カメムシは、MR.ジョーカー粉剤DL(1成分)またはスタークル粒剤(1成分)で防除し、仕上げる。このパターンだと8成分で済むことになる。2成分を余しているが、葉いもちの追加防除、穂いもち+カメムシ防除などその分余裕を持った防除が可能となる。

◆品目設定が重要な鍵に

 エコファーマー認定の米づくりは、生産者と消費者のためのものだ。福島県産コシヒカリは、会津、中通り、浜通りの3地区で米価格が違う。「浜通り」のJAそうまがエコファーマーに挑戦するのは、安全・安心を前面に押し出した『売れるそうま米』を作るためだ。産地間競争の中で、消費者に本当に信頼されるそうま米を作ろうとしている。
 今後の具体的な防除体系づくりについては、「どの農薬だったら県のエコ基準におさめられるかを検討していくことから始まります。この場合、品目の設定がもっとも重要な鍵になります」と八鍬裕之課長補佐はいう。
 JAそうまは、予約にエコファーマーをメインとして打ち出したが、「これまで生産者に、農薬の成分数という概念がなかった。使用回数とは、どういう意味なのかをまず理解してもらうことから始めた」と高平課長はここまでの道のりを振り返る。JAそうまの新たな挑戦がはじまった。
高平栄次郎 JAそうま営農部生産資材課課長 八鍬裕之 JA全農福島県本部生産資材課課長補佐
高平栄次郎
JAそうま営農部生産資材課課長
八鍬裕之
JA全農福島県本部
生産資材課課長補佐

(2003.12.12)

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