農業協同組合新聞 JACOM
   

特集「改革の風をふかそう 農と共生の世紀づくりのために」


  座談会(上) JAと連合会が一体となって事業システムの改革を 
阿部 長壽 JAみやぎ登米代表理事組合長
三嶋 章生 JA雲南代表理事組合長
岡阿彌靖正 JA全農代表理事専務
司会:米本 博一 JA全中経済事業改革推進室長
 2004年、JAグループは一丸となって経済事業改革の実践に取り組むことが求められている。昨年末には改革に向けた指針が決定し、今後、3年間の行動計画も示された。この指針の策定にあたっては経済事業改革中央本部の場を中心として議論が重ねられてきたが、改めて何のための改革なのか、認識を共有し実践に向かうことが必要と思われる。そこで本紙では「経済事業改革のめざすこと」をテーマに座談会を企画した。座談会では生産者と消費者により接近した具体的な改革方策についての今後の課題はもちろん、JAグループや協同組合を取り巻く環境についての基本的な認識のもとに実践にあたるべきとの指摘が強調された。2回に分けて掲載する。

◆なぜ、経済事業改革は避けて通れないのか

阿部 長壽氏
あべ・ちょうじゅ 昭和10年宮城県生まれ。宮城県立佐沼高等学校卒。平成2年宮城県農協中央会参事、5年中田町農協理事、6年仙南農産加工農協連合会常務理事、8年中田町農協代表理事組合長、10年よりみやぎ登米農協理事、14年より同農協代表理事組合長、宮城県農協中央会理事、宮城県信連経営管理委員、全共連宮城県本部運営委員、全農宮城県本部運営委員。

 米本 今日の座談会は、JAグループの経済事業改革がテーマです。昨年12月に全中理事会で「経済事業改革指針」が正式に決定しました。この指針は、事業目標、財務目標、実践体制と進捗管理について示し、これを着実に実践することになっていますが、この指針は経済事業改革中央本部委員会での議論を経て決めたものです。
 そこで、今日は本部委員会での議論も振り返っていただきながらお話いただきたいと思います。まず最初に議論していただきたいのは、なぜ、今、経済事業改革が避けて通れないのか、です。本部委員会の議論でも経済事業は、信用・共済など他の事業にも貢献しているのだから収支だけで判断すべきではないとの意見が出されました。この点についていかがでしょうか。

 阿部 本部委員会では、なぜ、経済事業改革が避けて通れないのかという議論は薄かったように思っています。今、振り返ってみるとこれは入り口の部分ですからもっときちんと議論すべきだったと思いますね。
 そう思うのは、国の側から農協の解体的改革論が出てきて今回の議論が始まったという経緯があるからです。この議論には、一昨年の経済財政諮問会議などでまず農協の解体的改革論が打ち出され、それを農協のあり方研究会が引き継いできたという流れがあったわけです。
 その背景にはやはり国の農業構造改革政策というのが根っこにあると思います。私は本部委員会で経済事業改革をはじめとするJA改革は農協運動の再構築という視点で取り組むべきと主張しましたが、それは国の政策をどう見るかが重要だという考えがあったからです。
 確かに経済事業改革の必要性としては、われわれ内部の問題として、信用・共済の収益率が低下して経済事業の赤字をもう背負いきれない状況にあることを認識すべきだということですね。ただ、私はこの点だけで改革論を組み立て、農政の流れなどをふまえないで議論をしていくのはいささか問題があるのではないかと思ったわけです。本部委員会で私は経済事業改革の議論を単に黒字か、赤字か、安いか、高いかではなく農業協同組合運動の危機として議論しなければならないと主張したのはそのためです。そういう意味で、入り口の議論が足りなかったといういうことです。

 三嶋 今回の議論は、改革をしなければならないというところから議論がスタートしたと私も思います。
 経済事業改革をめぐっては、今指摘されたようないわゆる外部要因としての政府や経済団体からの指摘と、もうひとつは信用、共済事業が経営的に厳しくなったという内部要因があったと思いますが、どちらかといえば内部要因が前に出すぎたと思いますね。その点では、なぜ経済事業改革を避けて通れないかという議論そのものを避けて通ったかなという感じは持っています。

◆協同組合の危機が底辺に 農協運動の再構築の視点を大切に

岡阿彌靖正氏
おかあみ・やすまさ 昭和19年東京都生まれ。横浜国立大学経済学部卒。昭和43年全農入会、60年名古屋支所自動車燃料部推進課長、平成4年本所総合企画部組織課長、6年本所組織整備対策室次長、10年本所合併対策室長、11年本所組織整備対策室長、参事、12年常務理事、14年代表理事専務。

 岡阿彌 たしかに信用、共済事業の収益率が低下するなかで、柱となる経済事業の存続の危機ともいえる事態が目の前にあってそれをどう解決するかが課題です。ただ、一方で、それを検討している最中に先ほども指摘された経済財政諮問会議などで、農協の員外利用問題など、いろいろな問題がボディーブローのように投げかけられた。さらにその議論のなかで農地のあり方まで議論され株式会社の農地取得が検討されるという状況が一方で進んでいたわけです。
 そこには協同活動、あるいは協同組合の危機が底辺に流れているのだと私も思います。言ってみれば、協同組合はもう有効ではなく株式会社のほうが効率的だという発想が政府や財界の一部にあるのではないか。そこにはWTO農業交渉が行き詰るなかFTA(自由貿易協定)で貿易環境を打開しようという流れが生まれ、そうなると国際競争力に耐える農業をつくらなければならないという発想が出てきた。そしてそれを実現するには協同組合に頼っていたのでは時間がかかって仕方がない、株式会社にでも頼らなければだめだという話になってきた。機能していない協同組合はこの際株式会社に譲ってはどうかと。
 そう考えると、われわれにとっては経済事業を核にして協同活動をどう再構築していくのかが極めて重要だと思っています。そのために、より消費者に接近する、より生産者に接近するという課題を今以上に達成しなければならないと思いますし、今までのようにここはJAの責任、ここは連合会の責任という意識ではなくて、ともに収支改善のために両方の機能を統合、融合するなどいろいろと知恵を絞っていくことが大切な時代に入っていると思います。その点では私たち連合会もJAとあまり壁をつくらずに話を進めていかなくてはならないと思っています。

 阿部 ご指摘のように残念ながら財界の考えがわが国農政の主流になってきていると私は見ています。つまり、農地を集約化して大規模化し、そして法人化して農業経営するというのが農業の構造改革だというわけですね。
 一方、われわれの農協運動というのは、家族複合経営が柱です。そういう生産者が農協をつくったわけですね。その協同組合をバックにして運動をつくりあげてきた。ところが、財界や国のもくろむ農政にとっては、農協運動は邪魔でしようがない。個別的家族経営が守られれば守られるほど、彼らの望む農地集約化や大規模経営はなかなか実現しないからです。
 だから、農協というものを解体とまではいわなくても、変えていかなくてはならない。そこが狙いじゃないか。
 そういう背景というものをきちんと整理しないまま経済事業改革をやってみても、どれだけ意味があるのかと私は思う。これは非常に大事な点です。つまり、農協の歩むべき方向と農政がめざす方向にはある意味でギャップがあるわけですね。
 だからこそ、経済事業改革をめぐって、たとえば農協の購買品は安いか、高いかといった議論だけしていると、経済事業改革の結果によっては逆に財界の思うつぼだということなんです。そのことだけで改革論を組み立てていくと、われわれ自らが解体的改革を実践することになりはしないかと危惧するわけです。

◆事業方式そのものの見直しこそ最重要課題

三嶋 章生氏
みしま・あきお 昭和14年島根県生まれ。島根県立農科大学付属農林高等学校卒。昭和41年赤来町農協監事、50年同農協組合長理事、平成5年雲南農協代表理事専務、11年同農協代表理事組合長。

 米本 今のお話は、協同組合の危機があり、そして経済事業はその協同組合活動の根幹をなしている、だからこそ信用、共済事業への影響も大きく改革が必要だという認識を持つべきだということだと思います。
 そして、その際には、単にJAの問題ではなく、JAグループ経済事業全体の事業システムの見直しが求められているということですね。三嶋組合長、経済事業システムの見直しという点についてどうお考えでしょうか。

 三嶋 信用事業の改革の際は、日本の金融システムの安定という意味合いから出発していました。JAが金融システムの破綻を引き起こしてはいけないということがあった。そして、その後、金融システムの足を経済事業が引っ張っているという議論になった。それは事実なんですが、もともと農協というのは利益を追求するところではないという指導をずっとやってきたわけですね。
 ただ、われわれも考えなくてはならないのは、本当は出資している組合員の利益はもっと追求しなければいけないということだったと思います。その視点が欠けていたのではないか。帳尻がそこそこあっていればいいという意識がありましたし、そう指導もされてきた。
 それからもうひとつは、農協の事業はモノがないという時代を前提にしています。たとえば、販売にしろ、予約購買にしろ価格を安くするというより、モノがないという時代にいかに集めて、安定供給するかが目的でした。これは戦前からのモノ集めの発想であって、実は価格は二の次だったんです。ところが、これだけモノがあふれる時代になってきたのにわれわれは意識改革ができなかった。今の言葉でいえば、競争の時代ということですが、それに対応できなかったわけです。
 こういう問題を考えると改革とは、ただ単に赤字が解消され黒字になればいいということではなく、システムそのものをどう改めるか、事業そのものを捉え直さなくてはいけないと思います。
 また、高度経済成長時代には農協に販売ノウハウがなくても実績があがった部門がありました。それでやたらと農協は手を広げて事業を拡大してしまった面もある。あの時期、農協の本来やるべき事業とやるべきではない事業を見極めて指導する必要があったのではないかという気もします。だから、これからJAが撤退する事業部門があっても私は必ずしも敗北ではないと思いますね。改革の時期として私は遅きに失したとは思っていません。

 米本 歴史的にも改革する時期にあるというわけですね。

 阿部 私もその点は同感です。もっと遅れたら大変だった。
 ただ、今後の問題はやはりこの3年間の進捗管理が極めて重要だということです。もし仮に、3年後に多くのJAで改革がうまく進まなかったということになったら、外側から多くの批判にさらされる。
 たとえば、生産資材価格の引き下げを掲げているわけですがこれがもし実現されなかったら組合員から大変な批判を受ける。ですから、しっかりと進捗管理をしてきちんと成果を出していくということにしていかなければなりません。これを共通認識として持つべきだと思います。

 岡阿彌 進捗管理は非常に大切だと思います。たとえば、生産資材価格の引下げでは、仕入れの問題、物流の合理化、低コスト資材の開発・普及などいくつかの要素を含めて生産にかかるコストを2割程度下げていくという目標ですが、それが実現した地域がどれだけ広がったのかといったことも含めて進捗管理していくことは極めて重要だと考えています。
 ただ、今はご指摘のように改革のチャンスですし、JAもわれわれ連合会も必死になって考えなくてはならないという点で、非常に呼吸があっている時期にあると思います。

◆農産物販売戦略の見直し 食料の安定供給 原点を忘れずに

米本 博一氏
よねもと・ひろかず 昭和26年生まれ。東京大学農学部農業経済学科卒。昭和50年全農入会、平成13年本所米穀販売部次長、15年本所米穀総合対策部長、15年参事、JA全中経済事業改革推進室長(特命参事)。
 米本 では、次に改革の基本となる「事業目標」について議論していただきたいと思います。
 第1の柱は「消費者接近のための農産物販売戦略の見直し」です。
 食糧法が改正され卸売市場法も16年度中に改正が審議される見通しで、市場にも競争原理が大幅に採用される情勢です。こうした規制緩和は流通ルートの短縮化をはかるもので、市場販売を基本としてきたJAグループの販売事業方式は大きな変革を迫られ実需者への直接販売力を強化することが課題となっています。
 指針ではこうした環境変化をふまえて「JAブランドの確立」と「JAグループを通じた実需者への直接販売の拡大」を行動計画として示しましたが、ご意見をお聞かせください。

 三嶋 本当は、JAは農家の生産物を売っていくんだということをもっと前面に出してもらいたかったと思っています。それは農家の所得を守るにはまず農産物を売ってあげるということが原点だからです。生産資材の引き下げも必要ですがそれは所詮限界のあることですからね。
 ですから、現実には販売戦略の見直しというより、販売戦略そのものをもっときちんとつくるという意識が必要なんだと思いますね。
 その際、よく言われるのが地産地消でこれ自体はいいことですしわれわれも一生懸命取り組んでいます。ただし、販売量の点ではおのずと限界がありますね。そう考えると、やはりJAの販売事業のひとつの大きな柱とは都市の消費者に農産物をきちんと供給するということです。これは今や義務でもある。こうした点をもっと前面に出してほしかったということです。
 ただ、JAの直接販売に力を入れるべきだということですが、やはり販売のリスクをどう解消するかが課題です。逆に言えばリスクをかけない販売はメリットがないとも言えるわけですから、直接販売とは、ハイリスク、ハイリターンの世界に入るということでもある。今までの共同計算方式とはある意味ではリスクのない販売だということですね。だから、そこに組合員の不満も出てきた。
 これらを考えると、都市の消費者に対する供給というのはJAグループが一体となってやり、JA自身が販売するという場合はリスクを解消する力を持たなければならない、この二つがポイントになるのではないかと思っています。

 米本 たしかにJAが直接販売する場合には取引先の情報を把握することや、手数料率の見直しなどリスクを解消しなければならない課題は多いと思います。ただ、今回の指針ではJAが直接販売する力と連合会を通じて販売する力のふたつを合わせてJAグループが2割ぐらいのシェアを持てればもう少し消費者の顔も見えてくるのではないかとということからこれを目標にしています。阿部組合長はいかがお考えですか。

 阿部 指針となっているJAブランドの確立や消費者への直接販売の拡大については当然のことだとは思います。しかし、具体的にJAブランドとは何であって、どう確立するのか、また、直接販売の拡大といっても直売所での販売程度では限界がありますね。
 つまり、具体的にどうするのかが課題ですが、その場合、全農と経済連の統合が進んだ今、JAと全農という2段階制における新たな機能分担、それが大事だと思います。そこはまだ今回の販売戦略の議論で明確になっていないのではないか。一部には示されていますが総体として販売戦略上の機能分担をどうするのかが非常に大事だということです。
 JAブランドといっても、それぞれのJAで特徴ある農産物を開発して展開しているわけですね。それと今回のJAブランドとの関係はどうなのか。また、一方で全農というブランドは何なのか。それはJAと全農で機能分担して初めて販売戦略として明確になってくるのではないでしょうか。

◆国産農産物全体への信頼 JAブランドの確立の狙い

 岡阿彌 きわめておおまかな整理ですが、JAグループの直接販売を少しづつ拡大していくには、大消費地に対する供給は連合会が担い、地域を中心とした直販体制はJAが担うということだと思います。
 また、市場流通への対応では、重複している段階ははぶき、できるだけコストダウンを図るということですし、もっと情報化を図れば、消費地に駐在している各県の販売員も減らすことでコストダウンを図れるといった、おおまかな絵は描いています。
 一方、外国産の農産物を意識したときに、われわれJAグループ全体としてどう対抗していくのかという問題があります。こういう問題への対応が底辺にないと、販売戦略の見直しといっても単なる産地間競争に終わってしまう。それがJAブランドの確立ということだと思います。
 外国産への対抗という意味では、実際はひとつひとつの農産物に戦略を持たなければならないということかもしれませんが、たとえば、昨年末に米国でBSEが発生し輸入をストップしました。一方、日本の牛についてはトレーサビリティシステムが確立され、出荷に際しては全頭検査しているというなかで安全確保している。今後、米国からの牛も全頭検査しなければ輸入しませんよということになれば相当の論争になるでしょうが、そういう国際競争を意識したときの日本の国の制度なり、われわれJAグループとしての制度を確保していく運動もJAブランドの確立の一環だということです。
 その点では実需者や消費者と栽培方法や履歴管理と情報開示などを話し合って決める全農安心システムもひとつのブランドです。それにたくさんの地域で取り組んで、JAグループは安全・安心の確保ということを柱にして動いているんだな、ということを消費者にアピールする。これが地域ブランドとは別にわれわれとしての戦略上の大きな課題だということですし、海外との競争のなかで家族農業を守っていくことにもなる重要な取り組みだと考えています。
 もうひとつ重要なのは量販店にとっても農産物販売にはリスクを抱えていて、ある限られた産地との取引だけでは天候不順でもあれば品不足になってしまいますから、JAグループを通じた量の確保と顔の見える販売をしたいと考えているということです。質の問題だけでなく量の確保という点でもJAグループの直接販売の拡大が求められているということです。

 阿部 産地間競争は必ずしも悪いことではないですね。その地域の風土なり特徴を活かしきった農産物を目いっぱいつくってブランド化して展開するということはいいことで、われわれ現場が切磋琢磨する必要はあります。
 今のお話は、そういう農産物のほかに、地域がまとまってある程度の量としてブランド化して販売戦略を組み立てなくてはならないものもあるし、日本の国全体を単位としてブランド化して戦略を立てる必要がある農産物もあるということですね。やはりこういう構想を描き、交通整理をする役割は全農が持つべきだと思います。

◆JAと連合会の新たな機能分担で販売戦略を描こう

 阿部 ただ、具体化にあたっての課題となると、たとえば米を例にすると、共同計算という方式ではもはや現場は律しきれないと思いますね。もっと地域の主体性を発揮する方向に誘導していかなければならない。
 私が常に言っているのは全農の力量にも限界はあるわけですし、JAも大規模になって力をつけているわけですから、JAの営業力をフルに動員すべきだということです。JAも大いにマーケティングもやって、そしてその結果、JAの販売に対して、契約や代金回収、あるいは情報提供、調整機能を全農が担うなど戦略的な機能分担をやるべきです。
 直接販売といっても、とくに米の場合、JAが単独でどんどん販売していけばいいということを言っているわけではありません。そうなったら需給調整も計画生産もできなくなる可能性があるわけですから。言いたいのは営業は総力戦でやって、契約行為や代金回収、たとえば、そういうことは全農が機能を発揮すべきではないかということです。このような新たな戦略的な機能分担というものを個別、具体的に考えていくことが求められていると思います。

 三嶋 かつて生協との取引をしたとき、われわれに対して、生産者から3%の手数料しかとらないで農協は責任持った販売ができますか、と言われたことがある。しっかり手数料をとってしっかり販売しろとずいぶんいわれたものです。
 ただ、最近、地産地消を進めるために直売所が開設されているが、結果としてよかったと思うのは、手数料を15〜20%に、しかも出荷会員以外は高く設定されています。これはいかに販売、流通にコストがかかるかを生産者に知ってもらうきっかけになった。裏を返せば共同計算方式でも実際はそのぐらい流通コストがかかっているということです。しかし、知ってもらわないと米の仮渡金と市況価格には開きがあるではないかと批判されてしまう。
 ですから、今後は委託販売と買い取りとの二本立てにして、農家組合員の意向で選択できるようにするなどの改革も必要ではないかと考えています。何もかにも委託販売で解決しようとしているところに組合員の不信感もあると思っています。逆に買い取り方式を導入することはJAに対する信頼をつなぐ方法ではないでしょうか。

 岡阿彌 米の仮渡金の水準は結果からみると最終精算価格の95%程度の水準なんですね。そういう意味では買い取りに近い形にはなっているわけです。

 三嶋 ただ、追加、追加で加算して精算するから組合員に理解されにくいわけです。

 岡阿彌 そうですね。たとえば、販売が円滑にすすむということが前提になりますが、半年で精算するといった方式に変えることができれば生産者の受け止め方も変わってくるでしょうね。買い取りもすすめる方針を打ち出していますが、リスクをどの程度見込んでいくかという大きな課題があります。
 また、共同計算については一般の市場に出荷されるものは価格変動に対応するために年間プール計算として、年間契約で価格が一本に決まっているような取引ではプール計算から除外する、あるいはプール計算といっても時期別に価格が違いますから、その時期のものを平均するとか、状況に応じて共同計算も細分化する手法を導入していくことが必要と考えています。

◆生産者、JA職員の意欲が支える農産物販売事業改革

 阿部 野菜については量販店との取引をしていますが、年間一本の価格です。いわば買い取りです。こういう方式は生産者に先が見えやすく結集するんですね。
 それから、われわれのJAでも生協に直売コーナーを設置していますが、手数料は25%で、売れ残りがあった場合は生産者が引き取ることが条件です。それでも組合員は結構喜んでいます。リスクは組合員が持つわけですが、こういった方式も拡大しているわけですから、今までのような全面的な委託販売という考え方ではJAの販売事業は成り立たないかもしれません。ただ、リスクをどう解消するのかという点についてJAグループで何らかの仕組みをつくらなければならないと思います。

 三嶋 私が買い取り方式の導入を考えているのは、われわれJAの役職員の姿勢の問題でもあるからです。やはり生産者が命を賭けて作った農産物なのに、ただ集めて市場に出荷して、市況はこうでしたから手数料を引いてこれだけの金額をあなたの口座に振り込みました、という仕事では安易ですよ。
 そういう点からもリスクはあるといっても、買い取り制度を一部でも導入して責任を持って販売するという姿勢が大事で、それはJA職員の教育にもなると思います。

 米本 きちんと販売するにはやはり情報もしっかり持っていなければなりませんし、経験も積んでいなければなりませんね。そうした点について指針では人材育成についてもJAグループ全体として取り組む方針を示しましたが、三嶋組合長が指摘されたようにやはり販売事業に情熱を持って取り組む人が必要だと思います。人材育成についても各県での進捗状況の管理をしていきたいと考えています。
 販売事業の強化はわれわれの事業にとっていちばん大事な課題ですが、JAグループが総力戦で取り組むというご指摘は大切だと思います。また、具体的な事業を展開するなかで課題を解決するためまだまだ知恵を出し合っていく必要があるということですね。 (以下、次回) 

(2004.1.13)


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