農業協同組合新聞 JACOM
   
特集 第49回JA全国女性大会特集号「 農と共生の世紀づくりは私たちの手で」

「私は土が大好き」 食料作る仕事を称える 農業女性は生産活動に誇りと自信を持って

女優 浅茅陽子さんと映画監督 斎藤耕一氏 映画「おにぎり」語る座談会
女優 浅茅陽子さん
映画監督 斎藤耕一氏
 女優・浅茅陽子さんの明るさは、テレビ番組の中でも素顔の時でも余り変わらないようだ。よく笑う。おどけた口調も混じる。最新作「おにぎり」では農家の主婦役。作品のテーマは米。「明るい娯楽映画をねらった」と斎藤耕一監督はいう。2年間にわたる長期ロケで俳優たちは実際に米を作った。そうした最近の体験を織り込んで浅茅さんは「毎日のように食べ物を作るお仕事ってほんとに素晴らしい」と農業の価値を語り、また農業を担う女性の力を称えた。浅茅さんはテレビレポーターとしてJA女性部の取材を続けたこともあるため女性部活動にもエールを贈った。映画「おにぎり」を語る座談会の話題はさらに環境や食育の問題にも及んだ。

女優 浅茅陽子さん
あさぢ・ようこ 昭和26年静岡県生まれ。49年テレビドラマ「かあさんのあした」でデビュー。テレビ、映画、舞台、CMなど活躍の場を広げている。現在、「不死鳥ふたたび・美空ひばり物語」(舞台、美空ひばり役・主演)や「お江戸でござる」(NHK、准レギュラー)に出演中。
司会 “女優と土”といってもイメージが湧きませんが、浅茅さんの場合は昨秋まで、映画「おにぎり」のロケで土に触れる仕事がずっと続いたことと思います。いかがでしたか。

 浅茅 田んぼの作業が楽しかったですね。いやだなんて思ったことは全くありませんでした。空気と水が流れ、土にさわれる所、落葉がゴミにならない環境、そういうところで暮らせたらいいなと昔から思っていましたから。
 コンクリートジャングルの環境から離れ、山形県南陽市赤山(撮影地)の田に入った時は、きれいな空気と水で命が浄化されるような清々しさを感じました。

 司会 都会から見ると、環境の違いがわかるのですが、農村部の方々は、それが当たり前のように感じられてくるのだと思います。

 浅茅 人間には慣れというものがありますからね。

 司会 浅茅さんは以前に家庭菜園をつくっていらっしゃったと聞きました。

 浅茅 ええ、4、5年やっていました。もう20年くらい前ですよ。分譲宅地の庭先だったので、掘り起こすと意地悪爺さんの庭じゃないけど空きカン、ビニール、発泡スチロールなどがざくざく出てきましてね。それらを捨て、黒土と腐葉土とたい肥を入れ、トマトやナスなど定番の苗を植えて収穫を楽しみました。
 軍手もせずに麦わら帽子をかぶって作業をする私を見て、隣の奥さんは「女優さんが日焼けしちゃまずいんじゃない?。爪も手も汚くなるわよ」とよく心配して下さいました。
 女優としてのプロ意識が足りないといわれれば、それまでですが、私は素手で土や苗にさわるのが好きなので、もう夢中でした。今はマンション住まいなのでやっていませんが。

 司会 どうして土が好きになったのですか。

 浅茅 私は静岡生まれで子供のころは周りに土がいっぱいありました。もちろん田んぼも畑も。だから遊びといえば泥んこいじりです。土を練って団子にしたり、それをお稲荷さんに供えたり。女の子のくせに木登りもしました。そんな環境の中で育ったせいでしょうか。

 司会 映画では、浅茅さんは農家を支えるお母さん役を演じます。家族をまとめるだけでなく、ほかの登場人物たちをも支えている非常に重要な役です。しかし、出しゃばらずに陰に回っている感じです。
 現実の世界でも農家のお母さんたちは、ほんとうはすごいことをやっているのに、その態度はひかえ目です。もっと元気に胸を張って家族にも、また家の外に向けても何か訴えたほうがいいんじゃないかと思います。お母さんたちを元気づけるメッセージをいただければと思います。

◆生きいき女性部

女優 浅茅陽子さん

 浅茅 私は以前に静岡第一テレビの報道番組でレポーターの仕事を9年間も続けさせていただき、県内各地の特産物などを紹介するためJAや生産農家をずいぶん回りました。JA静岡中央会がスポンサーです。番組のタイトルは「だいすきふるさと」でした。
 レポーターは何人かの交代制ですが、静岡って農産物の種類が野菜、果物、花と、いちじるしく豊富じゃないですか。それらを次々に取材する中で、JA女性部のみなさんが生き生きと生産に携わっている姿を目の当たりにしました。
 さらに一次産品だけでなく、それを加工して新商品を開発し、世間にアピールしていくという積極性も見て、女性の力ってすごいなと、つくづく思いました。

 司会 例えば、どんな加工品ですか。

 浅茅 それはもう、珍しいものがいっぱいありました。例えばメロンの漬物とか。これは1本に1個の高級メロンを育てるために摘み取った余分の実を捨ててしまわないで活用した加工品です。ワサビのソフトクリームもありましたね。各地で創意工夫を発揮していました。
 麦の産地ではうどん、大豆の産地では豆腐を盛んに作るなど女性部による農業振興の取り組みはさまざまでした。
 それから女性部が主催する朝市なんかも取材しましたが、そこでは消費者との素晴らしいコミュニケーションを見せていました。私もそうですが、消費者は鮮度の良い国産品を待っています。
 それに応えていこうとする農家のお母さんたちに対して、ある種の憧れみたいなものも私にはあるんです。安全でおいしいものを食べてもらいたい、それが作るもののよろこびですと、みなさん、おっしゃいますが、そこのところで、もっと自信を持ってほしいと思います。

 司会 確かにそうですね。

◆消費者は待っている

 浅茅 世の中には、健康問題にしても今までだったら、あり得ないような病気が新しく発生したりして、問題が起き過ぎているんじゃないかと思います。それは私たちの身の回りにあるもの、つまり生活環境が人間の体を余りにも過保護にし過ぎるところから起きてくる病気であったりします。いろんなことが発達し過ぎているんです。
 そうした中で、米と日本人のかかわりを見直そうというのが、この映画をつくるきっかけになりましたが、ほかの面でも、もう1回、原点に戻って、人間としてのシンプルで基本的な生活に戻ってみようといった動きがあるんじゃないかと思います。例えば環境問題でも。
 そう考えると、田や畑を持って自分の手で食べるものを作るということは基本の中の基本、一番のベースです。そうした本質面に毎日携わっているということは素晴らしいことだと思います。できれば私もそうしたいくらいです。
 農村女性の活発な発言を促す場合、もう一度、食べ物を作っているんだという基本を見つめ直せばいかがでしょう。
 スーパーなどの店先には、商品の袋に生産者の名前や写真が表示されているじゃないですか。「これは私の作ったものです」と自信を持って押し出すことを消費者は待っているんです。

 司会 消費者は待っている、ということに着目することですね。

 浅茅 誇りと自信を持って供給してくれたおかげで、こんなおいしいものが食べられるんだと消費者は感じます。ですから、農家の女性はもっと前面に立ってものをいうべきだと思います。

 司会 作る側からのアピールをもっと強める必要があります。

 浅茅 それぞれの家庭料理を発表し合う積極性もほしいですね。その中から女性部開発の加工品として生産ラインに乗せたいというものも出てくるでしょう。そうすれば張り合いが出てきます。

◆米の物質化には抵抗がある

 司会 1人だと難しいけど女性部組織だとやりやすいですから。

 浅茅 おにぎり屋さんは今まさにブームですが、これから、ますます原点に返ろうという方向へいくと思います。また多少は高くてもおいしいもの、身につけたいもの、長く使えるものを求める方向です。流れ作業式に作られたものではなく、こだわりをもって作られたものを消費者は待っています。おにぎり1個にしても味が違うと思えば10円くらい高くても次からはそれを買いますからね。

 司会 この映画の最初は、茶髪の若者が「こんなもの食えるか」と、おにぎりを蹴飛ばすシーンですが、ご飯がきらいなんていう若者もいるんですね。

 斎藤 私が脚本を書いた4年くらい前は、米離れで、子どもたちも含め、ご飯を食べないのがはやりみたいな風潮も見られました。しかし、ここ2年くらい前からは変わりました。逆になっているんです。
 でも相変わらず米か、パンか、めん類か、みたいに並列的に比較され、米が選別対象の1つにされています。それは米の物質化ともいえます。主食が精神に結びついていない。私にはそれが腹立たしいのです。米に対しては、もっと違う思い入れで入らないとだめですよ。そこの問題点を、この映画ではっきり言っておきたかったんです。だから特に最初の部分は以前の脚本を修正しませんでした。

 司会 首都圏の主婦を対象に食生活の調査をしたところ、子どもたちに朝からケーキやスナック菓子を食べさせて、平気でいるという家庭がありました。ウソじゃないかとも思いましたが、実際にそういう調査結果が「変わる家族、変わる食卓」という本に出ていました。
 それによると、主婦たちが朝早く起きないため、子どもたちは冷蔵庫のものを勝手に食べて学校へいくという生活で、母親は子どもたちが何を食べたかを知らないのです。これは、食の教育、食事に関する家庭教育をしていないということになります。撮影地の山形の印象は、首都圏と比べていかがでしたか。

◆米を精神的支柱に

映画監督 斎藤耕一氏
さいとう・こういち 昭和4年東京都八王子生まれ。23年東京写真大学卒。東映、日活、松竹を経て平成元年第2次斎藤プロ設立。賞は芸術選奨文部大臣賞、紫綬褒章、勲四等旭日小綬章、日本映画シナリオ功労賞。代表作は、キネマ旬報ベストテン1位の「津軽じょんがら節」、毎日映画コンクール監督賞の「旅の重さ」と「約束」、映画芸術ベストテン2位の「幸福号出帆」、日本映画批評家大賞・最優秀監督賞の「望郷」ほか。最近作は「親分はイエス様」。
斎藤 大人たちの印象は一般的に、東京よりもはるかに強く、米が精神的支柱になっています。なにしろ、うまい米を作ることに努めている産地だから、米に対する考え方は深いですよ。
 米と、ほかの食べ物が並列化されるのは、学校給食の影響じゃないかと思います。山形といえども、給食はご飯食だけではなく、パンやスパゲッティなども出す。そうした洋食風食べ物の普及が米への依存度を低くしています。
 映画の意図は、給食で育った子供たちが大人になって、さらにまた依存度を低めるという悪循環に警鐘を鳴らしたかったことが1つあります。

 浅茅 私が撮影中に体験したことですが、建物を借りている農家のお母さんが自分の畑から野菜を引っこ抜いてきて、土を洗い落とし、山の水、伏流水をわかし、さっとゆがいて、おひたしにおかかをかけたり、天ぷらを揚げたり、そのおいしかったこと。とにかくさっきまで畑で育っていたものが30分くらいあとにはもう、ずらりと食卓に並んでいるのには感激しました。

 斎藤 だから、ロケ弁(ロケの時の弁当)の米のうまさが、よけいに引き立ちましたよ。

 浅茅 また山の雪解け水のうまさは格別でした。東京の水道水はカルキくさいので、私は自宅に浄水器を置き、マイナスイオン水みたいなものにして、お茶を入れたり、ご飯を炊いたり、調理にも全部それを使うようにしていますが、それでも山のミネラルをたくさん含んだ水とは違います。山形の子どもたちはそういう食生活をしているわけです。
 とはいっても、お母さんたちは忙しいから「あるものを食べておきなさい」とかスーパーで買ってきたものを並べて置くこともありますが。

◆まないたと包丁減る

 斎藤 山形の人は、お米の食べ方がうまいですよ。お新香から、おかず、調味料と、ご飯を取り巻く食べ物を含めて米を一番おいしく食べる方法をね。

 浅茅 空気が良いのでよけいにね。何を食べてもおいしかった。

 斎藤 実は、それが日本人の生活の伝統だったんですよ。

 浅茅 そう、原点ですね。

 斎藤 都会はそれを忘れてしまった。

 浅茅 どこそこのハンバーガーが食いたい、なんていってね。

 斎藤 ほんとうの米のおいしさを知っている人たちが山形などの産地にいるということは、心強いことです。

 浅茅 しかし一方、都会では、まないたと包丁のある新婚家庭が少なくなっていると聞いています。新婚でなくても、主婦の日常が朝はぎりぎりまで寝て、起きると近くのコンビニなどへ走ってインスタント食品や、おにぎりを買い、それを夫や子どもに食べさせて送り出し、昼は1人でファストフードを食べ、夜は夫の帰宅を待ってレストランへいく、といった生活なら、まないたも包丁もいりませんものね。
 たまには自宅で夕食となっても、レトルトパックをチンするだけなら調理道具は全くいりません。

 斎藤 話が前後するようですが、撮影のために俳優を含むスタッフたちが実際に稲を育てて米を作りました。そのお米もまたうまかった。みんなで食べながら「これ、ほんとに私たちが作った米ですか」と何べんもみな農家の人に聞くんですよ。信じられないのですね。「そうですよ。俳優さんたちの手作りの米です。よその米を持ってきたりしていません」との答えにやっと納得しました。

 浅茅 ほんとに、ずぶずぶの田んぼに足もとをとられながら田植えをしましたもんね。私は楽しかった。

◆今年は「国際コメ年」

 司会 撮影用の田はどれくらいの面積でしたか。収穫量は?

 斎藤 あれは2反でしたね。穫れたのは6俵でした。「花の舞」という品種です。機械を使わない天日干しの乾燥をしました。みんなで分けたり、農家にもあげたりしました。

 浅茅 私は5キロただきましたが、映画の写真を印刷してある米袋は捨てずに大事にとってあります。

 斎藤 お米の味については、山形と東京を数え切れないほど新幹線で往復しましたが、輸入駅弁を見ると〈もっとうまい米があるのに〉と焦りを感じたという経験もあります。

 浅茅 ほんとにおいしいものを食べた経験のない人は、何がおいしいのかわからないのじゃないでしようか。

 司会 今年は国連の「国際コメ年」で世界各国が「コメはいのち」とコメの重要性をアピールし、国内でも多彩な取り組みがあります。偶然ですが、この映画の上映開始は絶好のタイミングです。監督がこの映画を作ろうと思い立ったきっかけなどをお話下さい。

 斎藤 米を取り上げる企画は数年前に立てましたが、切り口で悩みました。映画で農業に役立つことは何かということも考え、結局、日本人にとって米とは何かを見つめ直すことにしました。
 手法としては難しい記録映画的な形よりも、見て面白い映画として米を語る目標を立てました。そんな娯楽映画は日本ではまだ作られていないと思い、挑戦することにしました。そして大勢の協力者から、いろいろ教えてもらいました。
 余談ですが、映画の完成後も私は農業の本を読んでいます。数年にわたる製作の過程で米問題にすっかり洗脳されたからです。洗脳というとヘンですが、浅茅さんはじめ俳優もスタッフも撮影中は映画のテーマに沿って、米問題を勉強してきました。その結果、映画の内容に多少の変更や修正もありました。
 しかし大局的なねらいは貫いたため試写を見たマスコミの映画批評担当記者は「これくらいテーマのはっきりした映画はない」といってくれました。その点では成功したと思っています。

◆土に触れないと…

 司会 娯楽映画といっても、稲の成長とともに人間も育っていくというストーリーであり、ドキュメンタリーの部分もありますね。

 斎藤 娯楽映画は娯楽性を忘れないように、観念的にならないようにと、装いや取っつきで観客に親しみを持たせ、引き寄せておいてテーマを語ります。一方、ドキュメンタリーはテーマそのもののかたまりみたいなものですが、どちらも、言おうとしていることは同じなんです。この作品の場合、今の時代の米を語るのが大きなテーマです。

 司会 映画の題名は、最初は「ARCADIA」でしたね。

 斎藤 アルカディアはギリシアの地名で理想郷を意味します、イギリス人旅行家が昔、置賜地方の美しさを「東洋のアルカディア」と称えたので、地元の方々が、この題名を推薦されました。
 これについて今回考えさせられたことがあります。昔、ギリシアで理想郷とされたのは水と土地の良いところだったといいます。また、いろんなものがそろっていたとのことです。ということは、人間の知恵と努力で築き上げたエリアだということです。自然から授かった土地では、いろんなものがそろいません。
 それから土というものは大変なものだと思います。そこに思い至りました。コンクリートジャングルになった都会の子供たちが情緒不安定になるのは、土に触れないからではないかと。

 浅茅 確かにそうだと思います。

 斎藤 私の子供時代は東京にもまだ土がいっぱいありました。その意味で理想郷というのは、やはり土の世界だと。
 コンクリートやアスファルトや死んだ土ではなく、生きた土でなくてはいけないと。子どもたちが、その土の上をはだしで飛び回ることによって、人間以外の生物と共存していく心が培われます。
 映画の中でも「カエルやオタマジャクシやアメンボもいとおしくなる、みんな共存しているんだ」というせりふがありますが、生きた土はコンクリートのように何ものも拒否しない。土があって共存があります。そういう土地がアルカディアだと思うのです。


自給自足の世界を考えると… 何がなくても、おにぎりが…


◆おむすびは“縁結び”

 司会 その題名が「おにぎり」に変わりましたが、そこには日本人なら、つい手が出るといった感じがあり、なるほどなあと思いました。

 斎藤 当初から「おにぎり」は考えていたんですよ。しかし余りにも大胆な題名なので言い出しそびれていました。
 それに若い人に見てほしいので米の映画に横文字もいいんじゃないかとの発想もありました。しかしニューヨークのテロ事件から、アルカディアを「アルカイダ」と間違える人が出てきたので、横文字で格好つけている場合じゃない、ずばり「おにぎり」でいこうということになった。それに作品のお米を語る中身がどんどん濃くなってきたもんだから結局、変更が大方の賛同を得ました。
 話は変わりますが、BSEでアメリカからの牛肉輸入は禁止です。そうした突発事故や飢饉などで輸入がストップすると食料輸入大国の日本は、たちまち困ります。だから日ごろから自給自足を考えなくてはいけません。私は自給率の向上を唱え続けています。
 しかし何がなくても、日本人は米と塩さえあればおにぎりができるから大丈夫です。事実、過去には、おにぎり1つで歯を食いしばって生きてきた時代がありました。突き詰めれば食糧危機の時代におにぎりだけが残るんじゃないかとも思います。おむすびには「結束」という意味もあります。

 浅茅 お米の食べ方として、おにぎりは最もおいしい食べ方ではないでしょうか。調理法も、手に塩して握るだけだから非常に簡単です。シンプルイズベストという言葉がありますが、まさに、それを言い尽くしているのがおにぎりです。おみそをつけて焼けば携帯食にもなります。
 おむすびの「結ぶ」は人と人の縁を結ぶことだし、握るというのは、手と手を握ることでコミュニケーションです。人間の肌と肌が触れることは、これからますます重要になってくると思います。
 とにかく「おにぎり」はタイトルとしても素晴らしいと思います。

◆都会の消費者に見てほしい

 司会 この映画は都会の人にもたくさん見てほしいと思います。では最後にもうひとこと、観客動員のプラスになるようなお話をして下さい。

 斎藤 この映画は「農業への応援歌です」といってるものですから、本当の農家の人たちが見て、どうなんだろうと気がかりでした。しかしJA女性部の集会で、試写を見た宮城の女性から「元気が出ました」「感動しました」という声を聞き、ほっとすると同時にこの映画を作ってよかったと思いました。
 しかし、おっしゃる通り都会の消費者に見てもらうことが大事です。そうしてこそ農業の応援になります。とくに未だに米離れをしている若者に見てほしいのです。また米の問題は別としても、若者が社会的に生きていく方法論とか青春映画としても非常に面白いと思います。
 さらに若者に対して、こういう人間に成長してほしいという大人の思いもこめてあるので、そこも見ていただきたいと思います。欲張っているようですが。この作品の内容は単に農業だけではなく、見る方の視野によってどんどん広がっていくと思います。

◆コミカルな劇展開見せる

 都会から駆け落ち同然で田舎にきた茶髪の少年少女が、とある農家に転がり込んだ。そこには百姓フォークシンガーを名乗る主を中心に、様々なわけありの人々の共同生活があり、コミカルなドラマが展開する。そして映画は米と日本人のかかわりを紡いでいく。
 出演は、吉永雄紀、大貫あんり、浅茅陽子、松原智恵子、永島敏行、須貝智郎、鹿内孝、ガッツ石松、長門裕之ら。
 監督は斎藤耕一、製作は(株)斎藤耕一プロ、映画「おにぎり」製作委員会。後援は山形県、南陽市、高畠町、JA山形おきたま。支援・文化庁。JA全中推薦。

◆上映運動広がる

 映画は、稲の成長と同時進行で、わけありの新規就農者の群像などを描く。このため山形県置賜地方で2年がかりの撮影をした。俳優たちはプロの農業者の指導を受け、米作りに挑戦した。ロケは1地方だが、映画の内容は全国区だ。
 昨年秋に完成し、今年初めから山形県内で、JAグループ各組織や地域団体が上映運動を始め、劇場公開もスタート。1月30日にはJA全国女性大会後の映画会で上映(東京・大手町のJAホール)する。東京での劇場公開は4月から。

◆「おにぎり」おいしかったよ! 映画評論家・白井佳夫氏から

 試写を見た観客や専門家の評価は非常に高い。映画評論家の白井佳夫氏(東京芸大非常勤講師)は、斎藤耕一監督に次のような讃辞を寄せた。
 「おにぎり」は、山形県南陽市でとれたお米を、この土地の天然水でといで、薪で炊いて作った「おにぎり」のような、おいしい日本映画である。土や水や空気の匂いがし、この土地で生活する人々の笑顔が、心にしみる。
 まるで産地直送の無農薬産品のような、このおいしい映画は、山形県民だけではなく、日本全国の人々の心を、リフレッシュさせるだろう。斎藤耕一監督、南陽市の人たち、そしてプロの俳優やスタッフたち、いい映画を作ってくれて、ありがとう!

(2004.1.30)


社団法人 農協協会
 
〒102-0071 東京都千代田区富士見1-7-5 共済ビル Tel. 03-3261-0051 Fax. 03-3261-9778 info@jacom.or.jp
Copyright ( C ) 2000-2004 Nokyokyokai All Rights Reserved. 当サイト上のすべてのコンテンツの無断転載を禁じます。