農業協同組合新聞 JACOM
   
特集 元気な地域づくりとJAバンクの役割

一体性強化で信頼感高める JAバンク栃木信連の統合に見る
統合により基盤を強化
藤原林次郎 JAバンク栃木信連会長に聞く

 信連と農林中金との統合については、宮城、岡山、栃木、秋田、長崎、山形の6県で一部事業譲渡方式による統合が完了しており、さらに3県で16年度中の統合に向けた準備が進む。こうしたなか、昨年5月に統合した栃木県における取り組みをJAバンク栃木信連 経営管理委員会の藤原林次郎会長に聞いた。

◆将来を見据えて 統合を決断

藤原林次郎氏
ふじわら・りんじろう
昭和8年栃木県生れ。栃木県立大田原高等学校卒業。平成2年大田原市農協組合長、平成8年那須野農協代表理事組合長、12年那須野農協会長、栃木県農業信用基金協会会長理事、栃木県信用農業協同組合連合会代表理事会長、14年ジェイエイバンク支援協会理事、15年経営管理委員会会長就任
 ――農林中金との統合実現第1号は宮城県信連ですが、統合の決断は栃木県信連が一番早くて、一部事業譲渡契約の調印は第1号です。平成14年5月に調印し、翌年5月6日に統合しました。そこで統合後約1年を振り返り、統合のメリットを語っていただきたいのですが、まず統合に至った事情を少しご説明下さい。

 「信連の財務の状況は“助けて下さい”と農林中金に支援をお願いするような状況ではなかったのですが、将来を考えると、このままでは信連の健全経営は難しい、と信連役員会に詳しく説明しました」
 「バブルがはじけた後の住専問題とか有価証券の運用失敗などがあって内部留保が少なかったのです。自己資本比率は8%強でしたか。やはり10%以上ないと思い切った資金運用はできませんからね。貸出金も350億円程度にとどまっていました」

 ――それにしても、全JAがよく統合を決断しましたね。

 「そこには、県内を10JAにするJA合併構想が完了していたという事情があります。10JAの組合長は全員が信連役員として全面的に統合に協力してくれました。これが最大の支えになりました。また10JAはすべて黒字経営でした。赤字JAのないことが統合の前提となりました」

◆大きい統合の効果

 ――統合の進め方は?

 「統合計画書を作って行政庁の認可を得るわけですが、第1号だから先例となるモデルがない。方程式も何もない。連日連夜、農林中金との協議を重ねた結果、やっと計画書を作り上げました」

 ――暫定信連というのは?

 「全面的な統合まで5年間は存続して為替・決済などに特化して業務を行う信連です」

 ――信連職員はどうなったのですか?

 「信連職員のうち約50人が農林中金へ、約30人が県内JAや電算センターなどに出向し、暫定信連は約30人となりました」

 ――信連の貸出金はどうなったのですか。

 「県内JAおよび農林中金に移すのは正常債権だけ、あとの破たん先債権や破たん懸念先債権はすべて暫定信連で処理することになっています」
 「リスク管理債権は当初38億円ほどありましたが、今は約8億円ですから、びっくりするほど処理が進みました。統合による人件費の削減やその他の経費削減もあり、それらを処理にあてました。また、調印時の約束で保有有価証券を売却した訳ですが、タイミングも良く売却益を処理に当てることもできました」
 「また信連はJAからの預金約1兆円を運用していましたが、これが農林中金に移管されました。国際分散投資を基本に運用している農中に直接預けることで、より安定的なJAへの還元も期待しています」

◆JA組合員も高い評価

 ――統合の効果は予想以上に大きい訳ですね。

 「そうです。早く統合してよかったと思いました。組合員は『栃木はいい決断をした』といってくれます」

 ――ところで栃木県には足利銀行問題がありますが影響はどうですか。

 「昨年1年間のJA貯金の伸び率は3.82%です。全国平均の約2倍です。これは足銀からのシフトだけではなく、JAバンクへの信頼が基盤となった伸長です。さらに全JAが黒字を出して、自己資本比率が平均18.2%と高い水準を維持していることも強調しておきます」 (2004.4.13)



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