農業協同組合新聞 JACOM
   
特集 鼎談 「これでいいのか? 基本計画見直し論議」(2)

 活力ある多様な担い手が力合わせて再建できる農業政策を
−問われるのは「なぜ、何のための見直しか」−

福岡県・JAおんが代表理事組合長 安澄夫氏
横浜国立大学教授 田代洋一氏
東京農工大名誉教授 梶井 功氏

 食料・農業・農村政策審議会は8月10日、これまでの議論をまとめ新たな基本計画に向けた「中間論点整理」を了承した。担い手に対象を絞った政策転換を打ち出し、その政策も品目横断的な直接支払い制度の導入を提言している。農地制度では株式会社の農地取得も検討課題とされ、新たに農業環境政策の導入も盛り込まれている。
 具体的な施策づくりに向けた検討は秋に再開されるがこれまでの議論の経過と中間論点整理について十分に検討し、国民的な議論を巻き起こすことが求められる。今回は中間論点整理の具体的な内容をめぐって3氏に話し合ってもらった。なお、この鼎談は今回で終了し本紙では新たな企画を検討していきます。

■農業の危機的状況をどう捉えるか

田代洋一横浜国立大学教授
田代洋一横浜国立大学教授

 田代 今回の食料・農業農村基本計画の見直しは、3重の枠組みのなかでの見直しだと思います。
 ひとつはWTOやFTA農業交渉という国際的な枠組み。もうひとつは財界農政が先行するという国内的枠組み、それから農林予算が3兆円を切りかねないという財政的な締め付けの枠組みです。
 そのなかで農政が主体性をもって農政を切り開いていこうとするなら国民の声と国際連帯に頼るしかない。そういう観点から前回に引き続き見直し作業のあり方を考えていきたいと思います。
 さて、見直しにあたっての大臣の諮問では「担い手・農地問題」は二番目になっていましたが、中間論点整理では一番手になり、そこは評価できると思います。しかし、中心的な狙いはWTO交渉で関税を引き下げていく受け皿として一握りの経営体を選別しそこだけは補償するということですから、担い手の育成が目的ではなく選別政策が主ではないか。
 中間論点整理では担い手について「効率的かつ安定的な経営」と定義されました。梶井先生は以前から効率的経営はかならずしも安定的な経営ではないと強調されていますね。

 梶井 まず最初に指摘しておきたいのは、今なぜ、担い手問題が重要なのかということの説明がほとんどないことです。農業の「危機的な状況が深化」との記述がありながら、その危機的状況と担い手問題はどう関わるのかという説明がない。その点が大きな問題ではないか。
 私は今、危機的な状況というときの最大のポイントは、わが国では農業生産それ自体の縮小という問題が起きていて国民の食料を安定的に供給していく体制に赤信号が点いた、ということだと思います。そこでこのような危機的状況に対応するには、今、どういう担い手を支援策の対象にすべきかという議論が初めて出てくる。そう考えると「効率的かつ安定的な経営」にだけ絞っていいのかということが問われる。

■農業者に選別では農業再建の活力生まず


梶井功東京農工大学名誉教授
梶井功東京農工大学名誉教授

 梶井 たとえば都府県で3ヘクタール以上の農家が耕作している農地面積は全体の25%ですね。75%は3ヘクタール以下の農家が作っている。担い手育成の対象として仮に経営規模3ヘクタール以上とすると実際には25%しか耕作していない人々のところに施策を集中することになる。残り75%の人たちはどうなるのかということです。
 むしろこの75%の人たちに活力を落とさせない施策が重要で、それが同時に担い手育成に結びつくことになるんです。
 農業構造動態統計を分析すると、たとえば1995年から2000年の間で3ヘクタール以上経営のうち1割は規模縮小しています。しかし、同じ期間に3ヘクタール以下から3ヘクタール以上層に上昇した生産者は規模縮小する生産者の数を上回っていた。ですから3ヘクタール以上の農家は95年から2000年の間でも増えているわけです。
 この傾向は90年から95年、あるいは85年から90年というまだ農産物価格が高かった時期でも同じです。つまり、3ヘクタール以上の経営といっても全部が全部その規模を維持できているわけではなく縮小せざるを得ない農家もいる。しかし、今まではそれを上回る数で3ヘクタール以下から規模拡大する活力があったから曲がりなりも3ヘクタール以上の経営が増えてきた。
 今度の担い手育成政策が対象にしようとしているのは、効率的かつ安定的な経営、およびそれをめざす経営としていますが、そういう考えで対象の下限を決めるということをやれば、今は小規模であってもこれから規模拡大していこうという人の活力を奪ってしまうと思います。
 さらに考えておきたいのは、米価水準が高い時代でさえも3ヘクタール以上層のうち1割程度は規模縮小してしまっていることです。こういうことは今後、経営所得安定策が講じられても起きるのではないか。たとえば、働き手がけがや病気で規模縮小せざるを得ないことはあるわけですし、もちろん経営の失敗もあり得る。
 ですから、経営所得安定対策を採っておけば対象となった全員が農地を集めて規模拡大していき、現状では25%の耕作面積が50%になり60%を占めるようになる、ということを想定すること自体おかしいと思います。
 そうではなくて、下から上がってくる活力というものを失わせないような政策というものがはるかに大事です。

■農業生産の担い手か地域の担い手か

 田代 安組合長は企画部会で担い手重点化だけが一人歩きすることに危惧感を表明していますが、現場では担い手問題をどう考えるべきだと感じていますか。

安澄夫福岡県JAおんが代表理事組合長
安澄夫福岡県JAおんが代表理事組合長

  産業としての農業だけを考えるのなら担い手が担う農業だけでいいのかもしれません。一部の農業者のなかからエリートが出てきてそれが担えば産業としての農業は維持できるかもしれませんが、社会、集落というものは9割の弱者で構成されているわけですからそこをどうするのかを考えると、担い手重点化は危惧されます。
 農村が崩れてしまったときに強者の論理で選ぶ担い手も生き残れるのか。農協は何も弱者の集団である必要はありませんが、地域で力を合わせて農業をやっていくというのが基本です。
 ところで現場からすると担い手という言葉は訳が分からないです。不明瞭な言葉です。
 たとえば、農業生産を担う担い手なのか、地域社会、集落を担う担い手なのか、まったく意味が変わってきます。農業に従事しながら地域を担う担い手であれば、2ヘクタール程度の稲作をしながら役場や農協に勤めている人も立派な担い手ではないか。しかし、農業生産だけを考えれば担い手として位置づけていいのかということもある。
 それから担い手の育成ということが出てきますが、担い手を農業経営者とするならば、経営における経理の技術や人事管理の技術を教えることはできるかもしれませんが、そのことによって経営者、リーダーをつくることはできないと思います。担い手に施策を集中させることで心配しているのは、お金を出すことで生活を補償することはできますが決して経営は育たないということです。

 梶井 経営者マインドとしてはかえって後退しますね。

  そう考えると担い手を明確にすることはいいとしても、では何をしようとしているのか、育成する手法は?と思いますね。

 田代 お金で支援すればそれが育成になるのかというのは重要な問題提起ですね。
 担い手という言葉は、社会的な何かを担うという意味だとすると、日本の農業、農村が抱えているいろいろな課題を担うには実に多様な担い手が必要である。農業経営の担い手もあるけれども、農作業、地域資源管理、それから農村文化などの点でいろいろな担い手が考えられると思います。


■支援すべき農業者たちをしっかり見極めよ

  現実は、農業者としてはそこそこの技術はあるけれども、経営感覚がなく将来的なビジョンを掲げることができないという人が8割、9割です。そういう人たちをどう支援するかが重要なんです。
 農協にとってもマーケティングも含めて地域にどう役割を果たすかがまさに問われていると思います。逆に言えばわれわれも担い手問題を入り口として農協の存在価値を自ら見いだすことをしなければなりません。これが役割ですよと人から与えられるんじゃなくて、これがわが農協の存在価値だと示す。
 農業経営者にもコメを作って社会に対して存在価値を示そうか、きゅうりを作ってそれを示そうか、考えることが求められるわけですから、それをサポートするのが農協だという議論をしなければいけないと思います。

 梶井 今のような話に結びつくような担い手論になっていないことが問題です。何のために担い手問題を考えるのかということがはっきりしないから、中間論点整理は何を言っているのかよく分からないということになってしまう。

 田代 今なぜ担い手について語らなければならないのかというところから議論を始めるべきなのに、農政は政策対象を絞らないと国民の理解が得られないと言っています。
 しかし、実際は国民の理解ではなく財界の理解が得られないと言いたいのではないか。

 梶井 前回は安組合長から食料自給率の向上は農業者の問題ではないと言われましたが、まさに消費者の問題であって、これについては9割の国民が不安に思っている。農政としてどう応えるか、どういう政策で不安をなくそうとしているのかをまず示すことが必要ではないかということです。それを考えれば、こんな担い手限定論など出てこないはずです。

 田代 日本の場合は、食料供給に不安を持っている消費者のすぐ隣では汗を流している農業者がいるわけですね。ところが今の方向はその隣の農業者は実は支援の対象ではないということにもなる。それを聞いたら国民はがっくりとくるでしょう。
 企画部会では支援の対象を少しづつ広げるという方向も出てきたようですね。しかし、私はそもそも選別政策を前提にしてその枠を広げろと議論するのではなく、選別政策そのものから脱却して、日本の農業、農村を支えていく担い手とは何なのかを議論し、どうすれば安定して育成されていくのかじっくりと考えるべきです。

 梶井 自信を持って選別政策を打ち出したんでしょう。それなのに、対象を広げることにしたのなら何のために広げることにしたのか説明が必要です。実は選別政策を打ち出してはみたもののこれではうまく行きそうにないことが分かっているのだと思います。つまり、支援の対象を絞ってしまったら現実に生産はもっと低下してしまうということでしょう。

 田代 実際に麦、大豆の生産振興を図るといっても集落みんなで生産しなければなりませんからね。

■多様な集落営農のバックアップこそ大切

  集落営農も一定の要件で担い手とするということですが、たとえば、農業機械だけの共同利用や育苗だけを共同で行っているなどの組織がありますが、そういう集落営農組織に法人化が求められるのでしょうか。
 そのようないわば資本の論理に組み込めるのがそもそも農業なのかという問題があると思います。農業は資本主義が発達して出てきた産業ではなく何千年も前からあるわけですから。
 それをふまえて今、いちばん危惧しているのは税制です。税制が集落営農をどう扱ってくるのか。税金を払うことはいいのですが、税の制度が本来あるべき生産の仕組みをゆがめるというかたちであってはいけないということです。たとえば、法人化して経理をきちんとしていくといっても、機械の共同利用や育苗だけを担っている組織にまでそれを求めていくと地域の生産の仕組みそのものがゆがんでしまうのではないか。この議論にはそこが欠落している。

 田代 非常に重要な指摘です。集落営農を選別することが農業生産にゆがみをもたらすということですね。

  集落営農をきちんとサポートできるよう税制も含めた制度になっていけば、いわゆる弱者も担い手としていい意味でプロの土俵にあがることができるわけです。こういう形こそ検討することが重要ではないでしょうか。

■株式会社はなぜ農地取得を求めるのか

鼎談風景
鼎談風景

 田代 さて、農地問題では株式会社の農地取得を認めるかどうかを検討しようとしていますが、これも株式会社を日本農業の有力な担い手として位置づけようということだと思います。
 中間論点整理で「構造改革特区のリース方式等による全国展開に速やかに結論を得る」とあるなかの、「リース方式等」が私はいちばんの曲者だと思っています。ひとつは、この特区は農水省ではなく小泉内閣、つまり官邸が主導していますから、農水省としては自分の手を汚さずに認めてしまうのではないかという点と、もうひとつは「リース方式等」の「等」のなかに所有権も含まれているのではないかということです。そうなるとよけい大変な問題になってくると思います。株式会社の農地取得問題についてはいかがでしょうか。

  株式会社が農地を取得するか借りるかは重要な部分ですが、そのこととは別に株式会社のデメリットだけでなくメリットも議論すべきではないかと思っています。正しいかどうか別にしても、部分的には否応なしに農業が市場経済のなかに入っていかざるをえないのであれば、学ばなければならない部分もあるのではないかということです。
 ただし、農地取得の問題については企画部会に自分なりの案として「投機目的の農地所有を防止し農業経営の円滑な継承を確保するためには規制を強化することも必要である。それによって株式会社の農業参入も地域社会が安心して受け入れ相続においても担い手の農業経営が後退しないようにする必要がある」と提案しました。

 田代 株式会社がどうしても農業をしたいなら借地でやればよいのですが、どうしても所有したいとの意見が出ていることについて梶井先生はどう思われますか。

 梶井 株式会社は技術開発能力もあり経営ノウハウも優れているなどとよく言いますが、それならば実際に農業をやって能力があることを実証すればいいと言いたい。かねてから指摘していますが、むつ小川原の遊んでいる工業用地を企業が取得して大農場経営をやることは一向に差し支えない。未墾地を取得して株式会社が農業をすることは農地法違反でもなんでもないわけですから。実際に農業をやってみないで農地取得を認めろというのは投機目的以外の何ものでもないと思いますね。
 そもそも農業経営をするときに所有権は何の役にも立たない。所有権からは何も収益はでてきませんから、本当の経営者だったらそれを避けて生産資本のほうに資本を活用すべきです。
 また、もし財界が投機目的の取得はしないというのなら、まず土地担保金融というのをやめるべきです。本来、土地という社会的資産を担保にして金融をまかなうなんてことをしているのは日本ぐらいですよ。株式会社の農地取得問題を議論するならまずこういう根本的なところから考える必要があります。

 田代 今の日本では現実に株式会社の農地所有が認められれば所有担保価値が発生し、好むと好まざるとに関わらず農地が金融資産価値を持つようになって流動せざるを得なくなる。財界が投機目的の取得はしませんといくら言っても経済は生き物ですから危惧されます。

■改正農地法の検証作業から問題提起を

 梶井 農地の不適正な取得や利用を防ぐために、農業生産法人に株式会社形態を認めた前回の農地法改正では、農業生産法人すべてに対して厳しい条件をつけ、営業報告を毎年、農業委員会に提出して、それを農業委員会が点検し、おかしな点があれば是正勧告をすることにしました。勧告に従わなければ解散を命じて国に農地買収を進達するということも法律に定めた。しかもこの措置は厳正に実施せよという国会での付帯決議もついています。
 前回の改正は、現行の基本計画で生産法人の要件について検討すべきとなったから行われたわけです。それならば改正の結果がどうだったのかを点検してから問題を提起をすべきです。ところが厳正に実施すべきとされた営業報告の提出、点検の結果がどうだったのかということも示されないまま、議論をしている。これは問題です。

 田代 安組合長は地域社会の安心や担い手の経営への影響を指摘されましたが、改めて株式会社の農地取得についてお話しください。

  先ほど私が話した案では、投機目的の農地取得ではなく、農地所有の防止、としました。つまり、現在、農地を取得している農家に対しても厳しく規制すべきだということです。そのうえで私が考えるのは、まず日本のなかで土地というものをどう位置づけるか、そのなかで農地をどうしていくのかという考え方がなければいけないということです。たとえば、農地という土地は非常に生産性が低い。試算の仕方にもよりますが、減反を考慮すると10アールあたりの年間の総生産額はざっと9万円程度でしょう。一坪あたり300円です。
 そのような農地を今の市場経済のなかに放り込めるのかと思います。逆に市場経済のなかでは農地をきちんと隔離して管理しなければならない。そういう考え方に立てば農家も株式会社も区分けする必要がなくなるというのが私の考えです。

 田代 そのような理想的な隔離された農地の区域がつくれるかどうかについては、現在の日本の法制度からするとなかなか難しいという面があるようです。たとえば、森林の転用許可制度を導入しようとしたときに、内閣法制局は、財産権を侵害する、憲法違反だという意見だったそうです。農地を隔離する制度ができればそれに越したことはありませんが、果てしてそれができるのかどうか、できると当て込んでずるずると規制緩和を認めていっていいのかと思います。
 今のところ国としては転用制度で農地の位置づけをしており、やはりその制度が骨抜きにされないようにきちんと生かしていくことが必要だろうと思います。

■直接支払いで担い手育成と自給率向上は実現するのか

 田代 今回の基本計画見直しの目玉は品目横断的な経営安定対策です。
 当初はEUやWTOをにらんで品目横断的という点が強調されてきましたが、WTO交渉で関税上限の設定がどうも先送りされそうだとなると、やや軌道修正し品目横断的というより経営安定対策だと強調するように考えた方が揺れ動いているのではないか。確固たる政策理念に基づいて直接支払い政策に転換していくんだということではなくて、要するにWTO交渉次第で、関税上限が設定されれば導入するしそうでなけば導入しないという農政の悪いくせがでてきたんじゃないかという感じを受けています。
 また、直接支払い政策の根本の目的は生産を刺激しない、過剰を促進しないということです。言い換えれば、自給率向上はしないという政策です。
 基本的に生産を強制しないわけですから耕作放棄も許される。日本はそれでは困りますから、耕作放棄をしない、輪作を義務づけるなど条件をつける。さらに品目ごとの当該年の生産量や品質に対する支払いも加え、さらに規模拡大も考慮するような「日本型直接支払い」としています。しかし、これらの条件はことごとくWTO農業協定に反します。
 結局、何のために品目横断的な政策に移行するのか分からなくなってきているという感じがしますが、いかがでしょうか。

  中間論点整理では、要するに担い手に集中させる施策は直接支払い制度ですということですね。
 先ほども指摘しましたがお金を与えて経営は育ちませんから、そこで思うのは直接支払いをするなら担い手以外に支払ってくださいということです。直接支払いによって経営力がつかなくても、それは担い手ではないからいいわけです。また、家計のなかに占める農業所得の割合が2割、3割ならばいつ直接支払いを引き上げられても致命的なダメージにはなりませんから。
 ですから、逆に担い手に直接支払いをするのなら、いつかは打ち切るのでしょうからどういう形でやめるのか、そのプロセスを描いていないと直接支払いしてはいけないのではないかと思います。

 田代 直接支払いは農産物の過剰を抱えた欧米がそれを防ぐために生産と所得のリンクをやめようというところから始まったわけですね。明らかに農産物過剰時代の政策であって、農産物が不足したり不安定になったときに欧米も本当にこの政策を続けるのかと思います。そもそも不安定な政策ですね。

 梶井 日本は過剰どころか生産の減退を心配しなければならないわけですし、国民の不安に応えるためにまさに自給率をどう高めるかに重点を置かなければなりません。そのための所得補てん政策を大胆に導入すべきです。
 その点でいえば、日本は総合AMS(助成合計量)を削りすぎていると思う。約束水準の18%まで削減している。今度の合意案では品目別のAMSの平均水準を決めるということになっていますが、「黄」の政策でも許容限度を最大限活用していくべきです。
 WTO交渉の行方や財政事情が厳しいから、支援対象を絞るということでは日本農業の再建はできないということを問題にしなければいけないと思います。

■意識改革こそ農政改革の鍵

 田代 資源保全・農業環境政策については持続的な農業の発展にともなって多面的機能が発揮されるのをどう支援するかが本来の課題のはずです。しかし、一定の規範条件をクリアした経営を対象に支払いと行うというまったく視点の異なる政策として出されているようです。地域政策の問題も含めて最後に一言づつお願いします。

 梶井 今回は産業政策としての農政と地域政策を峻別しろということを盛んにいっていますが、日本の農業の実情からして本当に峻別できるのか疑問です。
 たとえば、構造政策を考える場合、離農対策をどうするかが絡むわけです。つまり、農業政策としての構造政策を議論するときにはつねに地域振興計画として、たとえば農業以外の地域産業をどう興すかという問題と結びついていなければならない。そうでなければ農村はどうなるのか。だから、農業政策と地域政策を安易に切り離すことができるのかはよく検討されるべきだと思います。

  今回の基本計画の見直し議論のなかで思うのは、モノから人への考え方の転換がうまくできていないのではないかということです。
 環境の問題も富士山が見える景色をお金で解決できるのかということです。つまり、環境政策にとって大事なのは環境が大切だという気持ちを育てることです。人の心を育てなければならないのに、手法はといえば直接支払いだけです。
 農協改革でもいちばん大事なことは農家組合員の意識が変っていくことです。農政も同じように農政に携わる人の意識が変らなければ変らない、そこが問われていると思います。

 田代 長時間ありがとうございました。

(2004.8.17)


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