農業協同組合新聞 JACOM
   
特集 JA全農麦類事業の取り組み

現地レポート 需要の拡大めざし新たなメニューを
JA筑前あさくら・JA全農福岡県本部

 我が国の麦の生産量は年々増加しており、特に小麦については、転作麦の増加により15年産で86万トンとなった。すでに、22年度で80万トンという基本計画の目標数量を超えている。しかし、品質や生産性向上などに着目するとまだまだ改良の余地があり、実需者ニーズに十分応えられないのが現状だ。また、17年産から契約生産奨励金について、収穫後の品質で評価する新たな制度がスタートする。良い麦をつくるため、今まで以上に生産者の努力が必要とされる。
 福岡県は北海道に次ぐ、全国2位の生産県である。14年産以降、生産量は増えており、今後も実需者ニーズに的確に対応しながら、福岡県産麦にブランド力を付ける戦略だ。今回、福岡県の中でも麦生産に先進的に取り組んでいるJA筑前あさくらと、JA全農福岡県本部に今後の取り組みなどを聞いた。


品質が実需者の選択基準


◆JA主導で小麦を生産

 JA筑前あさくらは平成6年4月、甘木市および朝倉郡の7市町村のJAが合併し、新たなJAとして誕生した。正組合員約9300人のうち、麦生産者は16年産約2100人の規模である。麦の生産は、合併以前よりそれぞれのJAで盛んに行われており、北海道に次ぐ全国2位の“麦どころ”福岡県の主要な産地のひとつとなっている。
 管内の16年産の麦の生産量は、小麦1万40トン(2534ha)、大麦597トン(444ha)、はだか麦60トン(23ha)、ビール麦993トン(149ha)、種子206トンである。小麦は農林61号、チクゴイズミ、ニシホナミ、ミナミノカオリの4銘柄を生産しており、生産量はそれぞれ1940トン、3678トン、4410トン、約9トンで、ミナミノカオリは昨年から試験的に作付したもので、本格的な生産は17年度以降になる。
 小麦の生産は、JAが地区ごとに銘柄を指定し、生産を推進している。以前は、生産者が自由に銘柄を選択していたが作りやすい銘柄に生産が集中したため、実需者からの要望に応え需給のバランスを取る必要から、JAが主導権を握って生産量や銘柄を調整するようにした。集荷はほぼ100%施設集荷で、バラ化率もほぼ100%となり、JA主導の麦づくりが行われている。
 大麦については、ビール会社との契約栽培により生産を行っている。

◆生産者に品質評価項目を徹底

農産部 行武美徳氏
農産部 行武美徳氏

 17年産から契約生産奨励金について、収穫後の品質で評価する新ランク区分方式に移行する。16年産までは、各産地ごとの出回り数量等を基準とした銘柄区分で、収穫後の品質評価が反映されなかった。今後は、質の高い麦を作らなければ高収入が得られないことになり、生産者の努力が強く求められるようになった。
 そのような情勢のなか、JA筑前あさくら農産部行武美徳氏は「品質評価項目のうち、JAが関与できるのは、容積重(833g/L以上)に関する項目だけで、残りの項目は生産者自身に関わるものです。JAとしては新たな仕組みを事前に周知徹底させ、どの部分を生産者に頑張ってもらわなければいけないか等を、理解してもらっています。ただ、たんぱく9.5〜11.5%という項目は、銘柄によってクリアできないものもあります。また、耕作条件など地域性が考慮されていないで基準値が決められたのではないかという疑問もあり今後の課題だと思います」と17年産から始まる新ランク区分方式について、現場の実感からこう話す。
 管内では既に15年産から、麦でも生産履歴記帳を進めてきている。当初は生産者に戸惑いも見られ、少数だが生産履歴記帳を理由に麦生産をやめる者もいた。これに対してJAでは生産履歴記帳の推進と同時に、追肥の代わりに緩効性肥料の使用など、技術的な指導も行い、組合員からの信頼を勝ち取る努力を重ねてきた。銘柄別の播種時期など詳細な情報を織り込んだ『麦つくりこよみ』を作成し、各生産者に配布して麦つくりを支援している。
 「麦もいずれ米のように、品質や銘柄で選ばれる時代が来ると思います。顧客ニーズを満足させるような良い麦を生産し、筑前あさくらの麦のファンを増やしたいと思います」、行武氏は語る。
 売れる麦づくりを念頭に、管内の全6ヵ所のカントリーエレベーターに色彩選別機を自費で設置するなど、独自の取組がある。そこには「顧客の獲得につながることはすべて行う」というJA筑前あさくらの積極的な姿勢が現れている。

◆生産県としてブランド力を高めるための消費拡大

 JA全農福岡県本部は麦の消費拡大をめざし、県教育委員会等の協力を得て、16年9月から小学校給食に県産小麦100%のナンの提供を始めた。9月は小学校および給食センターの計45ヵ所で、1月に1万8000食の実績があった。ナンの食感、味などはおおむね好評で、ふだん食べ慣れないナンに、小学生は興味を持ったようだ。10月も引き続きナンを提供しているが、今後は県内全域の小学校に拡げていくことや、ナン以外の新しいメニューの開発が課題となっており、現在検討中である。
 また、同じく学校給食で県産のおし麦を使った“麦ごはん”の提供も16年度から実施している。量的にはまだ少ないが、今後浸透させて行きたいメニューの一つと位置付けている。そのほか、こだわりの麺づくりとして、県内産100%使用のラーメン用の麺を、地元企業と共同開発しており、今年度末までの商品化をめざしている。
 県内の麦の生産量は14年産4万5100トン(作付面積:1万4700ha)、15年産4万6700トン(同:1万5100ha)、16年産5万7000トン(同:1万5200ha)と、14年産が底で、15年産以降順調に生産を伸ばしてきている。16年産5万7000トンのうち、約8割を小麦が占め、残りは大麦、はだか麦、ビール麦等。小麦の作付けは農林61号、チクゴイズミ、シロガネコムギ、、ニシホナミ、ミナミノカオリの5銘柄。シロガネコムギとチクゴイズミで全体の約8割の面積を占めている。ミナミノカオリはタンパク含有量が多く、栄養価も高いことから、特徴を活かした新たな需要の開拓を考えている。
 17年産からたんぱく、容積重、灰分、フォーリングナンバー(日本めん用、中華めん用、パン用の評価項目)の品質分析結果を反映した新たな区分に移行することを受け、県本部は(1)JA、銘柄別の品質分析に、施設・サイロごとの品質分析結果情報を付け加えて実需者へ提供する、(2)農産物検査センター(品質評価機関)を活用し、農家グループ・JA別の分析を繰り返し、県産の麦のレベルアップを図る、など麦生産県の地位を今後も保ち、福岡県産麦のブランド力を高めたいとしている。
 麦づくりに果たす県本部の重要性は、今後ますます高まることが考えられるが、その中でも需要の開拓が一番求められるだろう。売れる麦づくりを進めるためには、実需者のニーズを県本部で取りまとめ、県内各JAの麦づくりに生かす取組が欠かせない。良い麦をつくるということは言わば内部の努力。それを“売る”ことは、その何倍もの努力が必要とJAと県本部では捉えている。

新区分方式がスタート 着実な品質向上対策を

田中 洋 JA全農米穀販売部麦類課長

 良品質麦生産に向けて17年産から麦作経営安定資金については、これまでの銘柄区分を廃止し、契約生産奨励金のランク区分と連動し、品質による区分に変更することになった。

麦作経営安定資金の見直しの方向

 品質評価項目(日本めん用小麦)は、「たんぱく」、「容積重」、「灰分」、「フォーリングナンバー」の4項目。基準値は「たんぱく」が「9.5%〜11.5%」、「容積重」が「833g/l以上」、「灰分」が「1.60%以下」、「フォーリングナンバー」が「300以上」となっている。
 これらの評価項目のうち3つ以上達成した場合は「A」、2つの場合は「B」、1つの場合は「C」、すべて未達成の場合は「D」とランク分けされることになる。仕組みは、図のように基礎助成部分に加えて品質の差により助成額が異なるというかたちになる。
 品質評価の単位はJA・銘柄を基本とする方向のため、JAの生産指導、集荷体制などが一層大切になることになった。
 基準値については今後、生産実態・実需者ニーズをふまえ、見直すことになっているため、評価を上げるための対策が求められる。とくに栽培指導については、地域の試験研究機関など行政との連携が重要になるといえる。
 また、関連対策として産地改革支援も措置された。
 良品質麦生産が可能となる対策を進めるため、3年程度の産地改革計画を策定し、国が助成金を一括交付して支援する。具体的な取り組みは今後の検討課題だが、担い手づくり、実需者ニーズに即した生産出荷体制の確立、安全・安心確保と地産地消の促進などの取り組みに支援されることになっている。
 産地には品質向上対策と同時に、とくに「安全・安心対策」も一層求められる。
 生産履歴記帳運動は15年産は大半の県で指導・推進を実施し、16年産からは、主産地を中心に取り組みが開始されたが、農薬等の適正使用といった課題のほか、生産履歴記帳によって栽培管理が徹底されているかどうかといった観点からの活用も求められる。
 さらに14年に厚生労働省が小麦の暫定基準値を設定した、赤かび病によるDON(デオキシニバレノール)対策も実施する必要がある。
 現在、DONは自主検査を行い、この基準値を超える小麦は流通させないこととしている。このようなことから、JA段階でもエライザ法(スクリーニング)を用いた簡易分析を導入して自主的に検査を行っているところも増えている。こうした機器の普及によって安全な麦の出荷体制をつくることも課題となる。
 民間流通制度に移行以来、新区分方式の導入に見られるように、良品質麦生産が課題となっているが、これまで以上に安全・安心で実需者の要望に応えられる産地づくりがJAグループの麦事業の課題となっている。

(2004.11.4)


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