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特集:2002年新生全農・事業刷新をめざして

最新鋭の青果物物流・販売基地へ
JA全農 東京生鮮食品集配センター

◆産地から消費地までコールドチェーン化を実現

 JA全農東京生鮮食品集配センター(東京センター)は、今年11月に現在の埼玉県戸田市新曽から同市美女木に移転し、最新鋭のハード・ソフトを備えた施設に生まれ変わる。
 何が一番変わるのか。
 品目によって適正な温度は違うが、青果物は基本的に温度変化がない方がいい。しかし、実際の青果物流通は、品目によっては産地が急速余冷し、保冷車で消費地まで運んでくる。しかし、卸売市場などに着くと、温度管理・鮮度管理ができるような施設になっているところが少ないために、数時間から半日近く常温の中に置かれた後に、ショーケースなどで温度管理がされている量販店などの店頭に運ばれていくことになる。産地から消費地の店頭までのコールドチェーンの確立が、青果物流通の課題とされてきているが、その最大のネックが卸売市場にあった。
 新・東京センターでは、荷受した青果物を保管・保存する自動ラック式倉庫は5℃と10℃の2温度帯で管理し、顧客別に出荷作業をする荷さばき場も15〜18℃に温度管理されるとともに、鮮度保持力を高めるためにエチレン除去設備も設けられている。包装加工も場内はもちろん温度管理されているが、外部に委託する場合にも温度管理ができるところに限定する。
 取引先への配送車がまだすべて保冷車にはなっていないが、車の更新時期に合わせてできるだけ早い時期に温度管理できる車にしていきたいと東京センターでは考えており、これが実現すれば「産地から消費地までの完全に一貫した仕組みになる」と江郷明場長。

新・東京集配センターの完成予想図

◆いつでも搬入できる「24時間荷受体制」

 産地からの荷受体制も大きく変わる。
 従来は、指定時間を過ぎて到着すると延着扱いとなり翌日の販売になっていた。しかし、新・東京センターは「365日、24時間温度管理をしている」ので、その青果物にとって鮮度面で一番いい時間帯に収穫し、集荷・選別でのコストがかからない時間に作業をして輸送しても受け入れられるように「24時間荷受体制」をとることにした。つまり、産地の都合に合わせて、昼間でも夜でも最適な時間に搬入することができる。
 さらに、取引先への配送も、朝のオープン時、お客の一番多い夕方に向けた配送をするなど、「コンビニ並みの配送をめざしていきたい」という。

◆流通段階のトレーサビリティを実現

 また、最新鋭の「物流情報管理システム」も導入した。このシステムでは、荷受された青果物は、4つに分けられた自動倉庫のラックで、取引先別温度別に保管管理され、各ラックごとの産地情報(JA・品名・等階級・数量など)と営業マンが入力した取引先との商談結果(発注情報)をマッチングさせ、店舗別仕分け作業時には、必要な青果物が倉庫から荷さばき場に自動的に出てくる。
 荷受以降の情報がすべて管理できるので、どの産地の、何が、何時、どこの店へ、何ケース配送されたという履歴情報がすべて記録される。つまり、流通段階でのトレーサビリティができるということになる。

◆機能を活用し“売る力”をさらにアップ

 こうした機能は、既存の卸売市場にはないもので、新・東京センターは、最新鋭の青果物物流・販売の基地といえるだろう。
 しかし「単純に冷蔵庫だから保管・保存ができるという発想ではこの施設は活かされない。私たちの基本的な仕事は“売る力”ですから、この機能を活かしていかにその“力”をつけるか」だと江郷場長。
 かつては、産地は全国の市況を見て価格の高い卸売市場に出荷し、価格が安ければ出荷を止め、卸売市場まで届ければ終わりという販売方法をとっていた。
 しかしいまは、価格が高くなれば即座に輸入品が入ってくる時代であり、低迷している青果物価格が上がることは考えにくく、従来の販売方法では生産者の所得を確保することは難しい。
 いま大事なことは、生協や量販店は、年間を通した品揃えと安定的な供給を求めているので、産地として機能しているJAや県が、流通・卸の人間と一緒になって、売場で何が売れているのか、消費者は何を望んでいるのか、“売る”とはどういうことかをキチンと認識し、商品を開発し企画提案することで、恒常的に売場を確保することではないだろうか。
 これは、その日その日の取引きではなく、事前に取引き内容を決める「契約的取引き」で、東京センターが従来から進めてきたことだが、それがやりやすいハード・ソフトが整備されたといえる。
 これをさらに進めるために東京センターは、産地の情報を取引先に伝えるとともに、消費地の消費動向、売り方、価格から、容器や物流、規格まで消費地は何を求めているのかという情報を正確・的確に伝えることが求められる。それが、江郷場長のいう“売る力”ということだろう。
 輸入野菜の残留農薬問題が起き、加工メーカーなど実需者からの要望も増えているという。次代を見すえた最新鋭の「鮮度管理販売システム」を備えた新・東京センターに取引先も産地も期待が大きい。その期待に応えるべく、いまセンターでは着々と準備が進められている。


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