農業協同組合新聞 JACOM
   

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シリーズ 消費最前線『全農マークを信頼のマークへ』
産地の特色を活かしながら
消費者の安全ニーズに応える


土肥 忠行 全農パールライス東日本(株)社長

 米政策が大きく転換することに対応して、JA全農は15年度からの「3か年計画」で「販売を起点とした事業方式の転換」「東西の全農パールライス株式会社を核に、精米販売を拡大し、系統シェアを伸ばす」ことを米穀事業の改革の柱に掲げた。7系統卸が合併して3年目を迎えた全農パールライス東日本株式会社の土肥忠行社長に、現在の状況と今後の同社の事業展開のポイントを語っていただいた。

◆進んできた意識改革――米流通の実態に触れて

土肥忠行 全農パールライス東日本(株)社長
(どい ただゆき)昭和18年秋田県生まれ。日本大学法学部卒業。昭和41年全農入会、63年本所米麦部麦類課長、平成3年本所自主流通部主食課長、6年大阪支所次長、8年福岡支所長、12年(株)東京パールライス代表取締役社長、13年全農パールライス東日本(株)(社名変更)代表取締役社長。

 ――7つの系統卸が合併して2年が経ちましたが、現在の状況はどうですか。

 土肥 7つが1本になって非常に力強い柱ができるということでスタートしましたが、まだそこまでにはなっていません。2年経って芽が吹き出てきたという感じではないでしょうか。米の卸は旧食管制度のイメージが強く、その体質がわが社にもありましたが、社名に「全農」とあることの責任の重さについて、合併当初から社員に話し実践の中で意識改革をはかってきました。まだ十分ではありませんが、この2年間で相当に深まってきたと思いますね。

 ――それぞれが独自に事業を展開してきたわけですからね。

 土肥 株式会社ですから、会社のイメージにあった動きをいかにするかという意識改革が大切です。社員の70%強が県本部からの出向者ですが、2年経過して県に戻った人たちは、組織が流通を中心にどう米を見ていくのかという意識を強くもって帰ったと思いますね。

 ――流通の実態に触れたということですか。

 土肥 米の流通は、こういう流通だったのかということが、よく分かったと思いますね。そして、彼らがそういう意識をもったことが大きな成果だと思いますね。今後は、計画流通制度がなくなって、完全に自由な世界になるわけですから、流通をいかに把握して販売を進めるかが課題となるわけですからね。

◆食の安全が米卸の世界を変えた

 ――その米流通の世界も変わってきていますか。

 土肥 消費者の「食の安全」への関心が高まり、米業界が変わったと思いますね。例えば、年間11万トン使うある大手取引先では、30社弱あった仕入先を6社に絞り、他の20数社はこの6社に結びつきなさいという形で集約しています。この背景には、トレーサビリティへの対応、いままで食の安心・安全に本当に対応できていたのかということがあると思います。

 ――安心・安全がキチンと見えないと扱わない…。

 土肥 それが昨年あたりからの急激な変化だといえますね。
 最近の入札を見ると新潟コシヒカリが高くなっていますが、これはいままでの形態を反省してキチンとしたモノをとっていかないと取引先が認めないということの表れだと思います。これは生産地にとってはいい風が吹いてきたという感じだと思います。しかしまだ、旧態依然とした意識は残っており、当社、生産地をはじめ意識改革が必要と思います。

◆精米工場のすべてを消費者に情報公開

 ――消費者に安心・安全だということをどう理解し納得してもらうかということが、米でも大事になりますね。

 土肥 昨年の10月に大手生協の組合員約100人の人たちにわが社の埼玉工場を公開しました。工場を見た後、どこの産地の米が何月何日に工場に入って、いつどのように精米し、どういう形で皆さんの所へ出ていきますという流れのデータをすべて見せ、スライドを使って5時間近く説明し、質問を受け回答しました。これが1つのきっかけとなって、今年は別の生協からも要請がありますので、実施することにしています。
 こうしたデータは、いままでは機密だったわけですが、昨年の大手生協には、わが社の他に2社が納入していますが、その2社も来ていましたので、そこにもデータは全部渡しました。それを受けて今年は、別の卸会社が公開しなければいけなくなりました。
 量販店が求めれば、もちろん公開していきますしね。わが社は、そういう対応はどんどんやっていきます。

 ――従来では考えられなかったことですね。

 土肥 いままではこういうケースはありませんから、米流通改革の1つの要素になると私は見ています。

 ――消費者も安心できますね。

 土肥 工場での生産から消費者に渡るまでがキチンと見えるわけですから、消費者も安心しますね。しかし、生産から消費までのトレーサビリティの確立という意味ではまだ不十分で、生産地も生産情報を公開していかないといけないでしょうね。

 ――そういう要求を産地へしていくわけですね。

 土肥 産地と交流をもっと大事にして、産地の情報をもっと公開できるような制度を会社としてつくっていきたいと考えています。

◆産地から消費まで見える仕組みでシェアを拡大

土肥忠行氏

 土肥 わが社の取扱量は、精米が17万トン弱、玄米が9万トン強です。会社が誕生したときに私は、「玄米流通の時代は終わっている。精米を中心に徹底して販売しよう」といいました。なぜかというと、玄米は最終的にどこに行っているのかわかりませんが、精米だと取引先が明確になっていて、消費者と結びついていますから見えるわけです。見えるということは、生産者にとっても、自分のつくった米がどこに行っているかがハッキリ見えるわけです。そしてその取り引きが安定すれば、結果として生産も安定するわけですし、生産者にとっても励みになると思いますから、そこを目ざそうということです。その結果、初年度は10%、2年目の14年度は9%強と精米が着々と伸びています。トレーサビリティが確立することで、さらに着実に精米が伸びていくと思います。

 ――米の情勢が大きく変わる中で、御社の役割がますます重要になると思いますが、産地へ望むことはありますか。

 土肥 先日、鹿児島の金峰町へ行って来ました。鹿児島は超早場米というイメージがありますが、ここは金峰山という山に湧き水があって、それが田んぼに流れてきて米が生産されています。取引先によっては水を重要視するところがけっこうありますから、このイメージを大切にしなければいけないと話をしました。自分たちが生産している地域地域の特色を活かし、それをわれわれの営業でも前面に出していく。そのために、お互いに情報提供していけるようにしていきたいと考えています。

◆正直な仕事で組織の負託に応える

 ――3年目に入ったわけですが、今後の展開については…。

 土肥 まだまだ課題がたくさんありますから、それを1つずつ解決していけば、いまの時代にあった会社になっていくと思います。その中でも一番のポイントは、食の安全に対する対応と組織の負託にどう応えるかだと考えています。そして経営基盤の確立ですね。

 ――組織の負託にこたえるには、なにがポイントですか。

 土肥 流通の段階でシェアを拡大することが大事ですね。シェアを拡大することで、いろいろな米を扱っている全農が発言しやすい環境をつくることができますし、そのことで生産者の付託にも応えることもできると考えています。
 東京・神奈川・埼玉・千葉で3400万人います。ここでシェアを確保できれば強くなりますから、精力的に動きたいと思っています。そして山梨・新潟・群馬でも対応できる基盤をつくりあげていけば、わが社への参加者は増えていくのではないかと考えています。

 ――シェアを拡大するためには、食の安全を確保することが重要だということですね。

 土肥 他の農畜産物の場合だと、全農グループを通さないと生産者が成り立たないケースがありますが、米の場合には、わが社なくなっても米卸はたくさんありますから他社が代行できるわけです。そこをキチンと認識して食の安全に取り組まなければいけないと考えています。そして、冒頭にも述べたように、「全農」という名前が社名についていることの社会的責任を果たすために、正直に仕事をしていこうと考えています。
 

(2003.5.15)


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