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安全・安心対応型精米工場 幸浦工場新館リニューアル竣工
《ミツハシ》

幸浦精米工場外観
幸浦精米工場外観
 大手米穀卸の株式会社ミツハシ(本社:横浜市・三橋美幸社長)では、かねてより同社幸浦工場新館の改修工事を進めていたが、このほど全面リニューアル竣工した。ミツハシでは4月13日、幸浦工場新館に米穀業界関係者などを集め、同工場の最新設備・機器の全貌を披露した。
 この工場は、消費者、ユーザーに「コメを通じて安全・安心を提供できる精米工場」をコンセプトにリニューアル竣工したもので、リニューアルにあたっては、次ぎの7つのキーワードを設定した。
 ○シンプルであること。○わかりやすいこと。○ミスが発生し難いこと。○清掃がしやすいこと。○メンテナンスがしやすいこと。○ムリ・ムダ・ムラがないこと。○機能が明確であること。いづれも精米工場の設備、機器、機能、設計、思想に関わる問題であり、どれ1つとってみても実現することは容易なことではない。
 トレーサビリティの明確化とコンタミ問題の解消を実現し、HACCP対応を図り、さらに安全・安心で高品質なコメを供給することで消費者の信頼を得る、という大きな目標を可能にした最新精米工場の誕生となったが、新工場の概要・特長は次ぎの通り。

出来る限りラインの総延長を短縮

 シンプルでわかりやすいラインは、人的なミスや機器のエラーに対し、的確に対応できる。また、メンテナンスも容易で、不測の事故を削減できる。
 長いラインは処理時間やコストが嵩むだけで、不測の事故原因をそれだけ多く抱えることになる。平均的な精米工場のラインは約400mといわれているが、同工場のラインは200mに短縮されている。

空気輸送を全面的に採用

最新の設備機器を導入
最新の設備機器を導入

 新ラインでは、玄米タンク以降のコメは全て空気輸送システム「ソフトニューマ」で搬送される。従来コメの搬送は、昇降機やコンベアが使われていたが、残留米によるコンタミ問題や糠の付着が発生することが多く、清掃や点検に多大の時間を費やしていた。
 空気輸送ではそうした問題は発生しない。ただ従来の空気輸送では、圧縮され高温になった空気で高速搬送されるため、最終点に衝突した時の衝撃や、高温空気に晒されるため、コメ肌に大きなダメージを与えていた。「ソフトニューマ」は常温に近い空気で緩やかな速度でコメを搬送するため、コメにダメージを与えることはない。

各機器の役割の明確化を図る

 ムリ・ムダ・ムラを製造ラインから削減するため、各機器の機能を精査し、ライン上での役割を簡潔に明確化して配置した。精米機は搗精だけでなく、白度や搗精度を一定に保つ。
 異物選別機は人手に頼らず、異物の除去率に応じてコメの流量と選別感度を自動調整し、除去ムラを削減する。
 採用された各機器は全てコンタミ対応機である。

トレースバックの速度と精度を大幅向上

 製造履歴のチェックを迅速・正確に行うため、包装時に製品にロット番号と包装時刻をコード化したものを自動印字し、この製品が、いつ、どのラインで、どの原料米を用いて製造されたものかを瞬時に確認することができる。
 また玄米入荷時の品質データも保管されており、原料段階、製造段階、包装段階の情報を迅速・正確に確認できる。

品質重視をさらに追及

 玄米を精選機にかけ異物を除去する前にチェックを行い、データを蓄積することで除去作業のレベルを設定し、効率的な選別を行う。また、従来のように精米タンクを持たず、玄米の投入から搗精、選別、包装までを一気に完結できるようにラインをレイアウトした。製造時間の短縮と効率化を図るだけでなく、より鮮度の良いコメを提供する、という同社の考えを反映したものだ。
 またこの工場は食品工場にふさわしい「密閉型」であり、衛生管理を徹底させている。安全・安心で高品質な製品の提供を実現するための、基本となるものだ。

無洗米専用ラインを完備

 従来、同社の無洗米は埼玉工場(行田市)で月産2000トンを製造していたが、消費者の環境問題に対する関心の高まりや、簡便性、経済性が注目される中で、需要が拡大している。こうしたニーズに対応するため、同工場に月産1000トンの無洗米専用ラインを増設した。今後、同社の北海道工場でも無洗米製造ラインの増設を計画しており、さらなる無洗米供給体制の整備拡充を図っていく考えだ。
 同社幸浦工場の普通精米設備は、精米機4トン×2基、1トン×1基で月産3000トン。無洗米設備は精米機3トン×1基で月産1000トン、合計で月産4000トンの加工処理体制だ。

消費者に信頼されるコメを供給

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挨拶する三橋社長
亀井前農水大臣
が来賓挨拶
 同社では、幸浦のテクノタワーホテルファミールにおいて、同日の4月13日、「株式会社ミツハシ幸浦工場竣工記念祝賀会」を開催した。会場には米穀業界関係者ら150名余が参席し、幸浦工場新館のリニューアル竣工を祝った。
 冒頭、三橋美幸社長は「米穀業界においては、安全・安心体制の確立は不可避だが、安全と安心は違う。安心はなにより受け手の感情であり、それだけにお客様の信頼をかち得るべく、努力していく。無洗米の普及にも力を入れていきたい。無洗米はとぎ汁を出さないので環境に負荷をかけないコメであり、副産物のヌカは肥料として利用される。循環型農業の実現にも寄与するもの」と挨拶した。
 来賓祝辞では、前農水大臣の亀井善之氏が「厳しい米穀情勢の中で、新工場を竣工させたことは高く評価されるものだ。食料の自給率向上、コメの消費拡大を図るためにも、消費者の喜ぶ安全で安心できるコメを供給してもらいたい」と述べた。
謝辞を述べる雑賀社長
乾杯の挨拶をする
木総裁

  施行業者を代表し、日立プラント建設(株)の石黒社長は「この精米工場は、極限に近い安全・安心と衛生管理がなされている。こうした工場の建設に携われたことは幸せなこと」と謝辞を述べた。また精米プラント・機器を導入した(株)東洋精米機製作所の雑賀慶二社長は「この精米工場のリニューアル竣工に際しては、当初から三橋社長にさまざまな難しい宿題を貰った。今までの常識を覆した精米工場になったものと思っている。消費者にとって安全・安心なコメを提供できるものと確信している」と語った。
 また乾杯の音頭をとった高木勇樹:農林漁業金融公庫総裁は「この精米工場には、時代を先駆けた最新の機器が導入されていると思う。この工場竣工を機に(株)ミツハシの更なる発展を祈念する」と挨拶した。
 同社幸浦工場新館の見学会は、米穀業界関係者の関心を集め、熱心な質問が発せられる中、感嘆の声が聞かれた。また、竣工祝賀会も盛況を極め、関係者一同、新工場の発足を祝った。
(2005.4.18)


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