農業協同組合新聞 JACOM
   
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微生物防除剤「タフブロック」発売へ
5年後の普及面積50万haを目指す

《出光・協友・北三》

会見にのぞむ出光の担当者(中央が尾川担当)
会見にのぞむ出光の担当者
(中央が尾川担当)
 出光興産(株)(天坊昭彦社長、本社:東京都千代田区)は9月18日、稲の種子感染性病害用の微生物防除剤「タフブロック」を、明年1月から上市すると発表した。同社では、土壌病害防除についても適用拡大を視野に入れ、5年後の普及面積50万haを目指していく。
 「苗半作」という言葉が示すとおり、高品質・高収量な稲生産を実現するためには「健苗育苗」が基本。この健苗育苗においては、特に種子感染性の病害である、いもち病、ばか苗病、苗立枯細菌病、もみ枯細菌病、褐条病の5大病害が問題視され、化学農薬を中心に日進月歩の闘いが繰り広げられ、功績を挙げてきた。
 こうしたなか、近年では環境に配慮した持続性の高い農業に対するニーズが生産者、消費者ともに高まってきている。この取組みは、例えば「エコファーマー」などの実践に象徴され、その件数は2007年3月末で約13万件に上る。
 「タフブロック」の有効成分はタラロマイセス フラバス菌で、栃木農試が発見した「かび」の仲間。病原菌を直接殺菌するのではなく、種もみの表面で素早く増殖し、苗づくりの期間中、病原菌の活動を抑制することで、病害の発生を予防する。
 「タフブロック」を使用した苗のもみ殻には、有効成分がはっきりと「黄色いコロニー」として確認でき、本製品の特徴を象徴している。
 この分野では、絶えず耐性菌が問題視されるが、病原菌の本剤に対する耐性菌の発生はほとんど見られない。また、使用回数の制限がないなど、安全性が高く、環境にもやさしい防除剤に仕上げられている。
 さらに、近年、普及が進みつつある温湯消毒法とのコンビネーションにおいても、高い効果が期待できる。
 「タフブロック」の発売は、明年1月から。当用期に合わせ設定されたもの。取扱いは出光興産(商系)、協友アグリ(系統)、北海三共(北海道・系統)となっている。いもち病、ばか苗病、苗立枯細菌病、もみ枯細菌病、褐条病の5大病害に適用拡大されたことで発売に踏み切る。価格は、「本剤のもっているパフォーマンスに合わせた価格設定になる」(出光・尾川新一郎農業資材担当)という。
 この分野の市場は、土壌消毒を合わせ最大約80億円と見られる(本紙推定)。同社では、キメ細かな技術普及を展開する中、苗立枯病などへの適用拡大を視野に入れ、5年後の普及面積約50万haを目指していく。
「タフブロック」処理の様子(袖ヶ浦の中央研究所にて)
「タフブロック」処理の様子
(袖ヶ浦の中央研究所にて)
 現在、市場では「モミホープ」(セントラル硝子)、「エコホープ」(クミアイ化学工業)が先行している。また、今後はクレハの「KNB−L422」、「KNB−S422」などが追随するものと思われる。
 同社は、トマトやイチゴなど野菜類の病害向けに、「ボトキラー」や「タフパール」などの微生物防除剤を手掛けている。稲への展開は、今回が初めて。「タフブロック」の発売により、「稲の栽培でも、食の安全・安心のニーズに応えていきたい」(同)と、今後の抱負を語っている。

【出光興産・四位敏章アグリバイオ事業部長の談話】

 アグリバイオ事業部では、環境保全型農業に貢献する「IPM」商品・技術の提供を事業の柱としております。今回、発売を発表しました「タフブロック」は日本農業の基幹であるコメ生産に対し、画期的な商品として、大きく貢献できるものと考えております。
 今後、土壌病害防除についても視野に入れて、さらなる適用拡大をはかっていく方針です。また、微生物防除剤の商品ラインアップのいっそうの充実をはかり、生産者・消費者に『安全・安心』をお届けできるよう、努力してまいります。

【協友アグリ・大塚範夫専務の談話】

 協友アグリの事業方針に『IPM防除体系の推進』がありますが、この度『タフブロック』の系統販売を協友アグリで行わせて頂くこととなりました。これにより、更なる基盤強化となると期待しています。
 『タフブロック』は種子消毒により、ばか苗病、いもち病や化学合成農薬でも防除が困難なバクテリア性病害にも高い効果を示す画期的な薬剤です。今後も、育苗期に問題となる各種土壌伝染性病害への開発が継続され、近い将来には水稲の種子伝染性病害から育苗期に発生する土壌伝染性病害の防除が可能となる画期的な薬剤です。言い換えれば『健苗育成農薬』と言うことができます。
 従来の微生物農薬や化学合成農薬の枠を超える『タフブロック』を普及することは、結果として健苗作り・高品質のコメ作りの一助になるものと確信しております。
 出光興産(株)との共同普及体制で『タフブロック』を普及し、生産者、消費者の皆様方に『安全・安心』をお届けできるよう、さらに精進していくつもりです。

(2007.9.19)



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