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コラム


そごう倒産にひとこと

 「有楽町で逢いましょう」とカラオケで歌うこともある。昭和30年代フランク永井のナツメロ歌謡曲である。JR有楽町駅前にある「そごう」デパートのエアカーテンが昔の若者のかっこいい待ち合わせ場所の一つだった。その「そごう」が7月12日民事再生法に基づき倒産し株価は暴落、日本経済は混乱している。

 三越、高島屋、伊勢丹といった高級感の残るところは別にして、普通デパート売場は値段を見るだけで、実際の買い物はアウトレットや近くのスーパーでという賢い消費者も増えてきた。それだけに業界の競争は価格破壊も含めて激しい。
 関西に始まった「そごう」が東京に進出し、バブル時期に全国店舗網を敷く拡張路線に血走った結果、過剰投資のツケが廻ってきた。経営の失敗でそのまま淡々と倒産していれば、今ほどの騒ぎにはならなかったろう。

 ところがメインバンクは大蔵省に近い興銀がついていた。そごうに融資していた銀行団にこれは例外中の例外と偽り、債権放棄をさせ経営を続けようとした(農中も660億円放棄を了承したと言われる)。
 しかし、銀行には公的資金が注入されている。私企業に税金を使うのはおかしいと世論が騒ぎ出す。そごうを借金棒引きで救うならゼネコンなど今後ぞくぞく”例外扱い”がでてくる。まさにモラルハザードである。

 日本の会社はワンマン経営者がいると、人事異動を繰り返す度に周りにはイエスマンばかりが集まる。正しい意見具申が遠ざけられる。世の中の変化を敏感に感じなくなる。
 業界も同じ右へならえの旧体制体質である。今回は,新生銀行という日本長期信用銀行を引き継いだ外銀が準バンクにいた。そして社長がシティバンクから転進の異色経営者だったから債権放棄に応ぜず、契約をたてに国に不良債権を返してしまった。骨のある行動である。

 本来はこうした持ち場持ち場の小さな好判断の積み上げで金融システムが構成されるべきなのだ。護送船団方式による、国民が知らないことをいいことに無責任に自分の地位を守っているお偉いさんが多過ぎた。債権放棄を認めた預金保険機構も金融再生委員会もメンツを失ったろう。国民の立場に立ったデシジョンメーキングとしての機能がなく、行政のかくれ蓑かおみこしの輿の役目に過ぎないことがはっきりした。

  納入業者1万社、国民は痛みを伴なうだろうが、いずれ倒産するデパートであれば問題の先送りを止め、公的資金の垂れ流しを食い止めたことに意義がある。資本主義のルールが機能し、自助努力による再生のチャンスを僅かながら残したといえるだろうか。 (金右衛門)



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