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コラム


ホテルの環境対策にひとこと

 生協組合員のいわゆる意識の高い主婦たち10人に混じってホテル・ニューオータニの「生ごみ処理施設」を見学した。コンポスト・プラントと称し、昨年5月に導入した新施設。ホテルから出る残飯、使用済み生け花の枝木、汚泥などを堆肥化する。それを使って出来たハーブ野菜やバラなどはホテルが農家と契約し優先的に利用する。
 そのためのレストラン、メニューも開発する。地球に優しい環境づくり、完全リサイクルを目指したホテルの試みである。1億円をかけた設備で『週刊朝日』の最近号にもグラビアに取り上げられた。

 都心の紀尾井町にあるホテル・ニューオータニは、元力士の大谷米次郎が鉄で儲けたお金で東京オリンピックを契機に建てた近代的大ホテル。今では1日の出入りは2万人から3万人。客室、宴会場、レストランから出る生ごみの量は1日約5t。環境対策は徹底した厨房や手元でのゴミ分別から始まるという。8種類。その@再生ゴミとして厨房残さ、生け花、植木、汚泥等、そのA可燃ゴミとして紙くず、木屑、繊維くず等、そのB産業破棄物としてビニール、発泡スチロール、ガラス類、そのC紙類、そのDはビン類、そのEは缶類、そのFは廃油類、そして8番目はオレンジ皮。ゴミ分別のために用意する容器は500個。このうち可燃ゴミは東京都清掃局へ、産業破棄物は中間処理業者へ、CからFはリサイクル素材として処理業者に渡し再生される。ミカンの皮は香料に再生される。最も量が多く半分を占める再生ゴミはホテルのコンポスト・プラントへ送られる。ゴミ類を小さく粉砕して、熱風で乾燥すると量は約5分の1になる。これに要する時間は約30分。それに湿度45%、温度40度にして熟成させる。別途、微生物で有機物を取り除いた汚泥と混合し4日間速成的に醗酵させる。ホテルガーデンタワーの地下3階に、自家発電装置や水槽タンクとともにこの工場はある。騒音と悪臭はホテルではご法度。厚い扉でしきられている。エレベーターで1階に出れば、そこは静寂とロングドレスが行き交う華やかなホテルロビーである。その地下で何が行われているかこの人達は知るよしもない。

 社内では「ゴミ分別推進委員会」を組織して活動。テナントにも徹底している。常にチェックは怠らない。それでも最終段階で時々スプーンやビニールが堆肥に混ざって出て来るという。今まで生ゴミを出す費用は年間3千万円をかけていた。設備費1億円は3年で元が取れるのでコスト削減になるという。長い間、自然がゆっくり生ゴミを分解してくれていたのを、お金をかければ短期的にリサイクルできるということかもしれない。しかし、プラントから出る第一次醗酵のコンポスト堆肥は原料としてつくばの肥料工場に送られ1ヶ月かけて再醗酵される。ホテルの説明者も「環境対策では東京都から表彰されたが、生ゴミからの肥料については特殊肥料として農水省に管轄が移りました。成分はきちんと表示します」とだけいう。重金属など土に悪い不純物が含まれるかも知れず一般化するにはまだまだ不充分のような気がする。家庭の生ゴミを農地に返すには更に時間を必要とするだろう。
   (金右衛門)



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