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コラム


米大統領選挙にひとこと

 米国の次期大統領にブッシュ氏がようやく決まった。11月7日選挙が終わってから1ヶ月以上もブッシュかゴアかで混乱が続いた。相手が負けたと言ってくれなければ、勝ちがないのは将棋に似ている。次の一手をじーっと考え込んでいれば、持ち時間切れで負けになる。プロの将棋はそれでは恥ずかしいので、どちらが勝つか素人目には分からない早い段階で負けましたと棋士は頭を下げる。

 民主党のゴア候補は粘り腰を発揮してフロリダでの選挙結果を不服として裁判に持ち込んだ。得票数300万票近い内、その差は僅か530票、誤差の範囲である。手作業で票を数え直す度に違った数字が報道される。しかも、フロリダはブッシュ候補の弟が知事で、得票結果を発表する司法長官も共和党の選挙運動員だったというハリス長官。不在者投票や無効票の扱いなど開票状況をブッシュ候補有利に導くだろうと誰もが想像しがちである。連邦最高裁の「手作業による再集計は無効」との判断が出て、ゴア候補は納得はしないが、受け入れざるを得ないと、12月14日制限時間ぎりぎりに敗北宣言し、ブッシュ次期大統領が正式に決定した。

 米国は、おおざっぱな政治システムは機能しているが緻密な出来事になると不得手で日本などの方が数段優れているように思う。米国人の一般投票では30万票ゴア候補が上回りながら、州の選挙人合計ではブッシュ候補に4人少ないという逆転現象。ゴア候補の地元テネシイ州を勝っていれば、11人の選挙人がいるからフロリダの結果を気にしないで勝てたはず。地元を取れないようではしょせんゴア候補には人望も運もなかったのだろうか。これで勝ったブッシュ次期大統領はマイノリテイ・プレジデントと呼ばれ、過去にもそのような大統領が数人いる。米国だけの民主主義である。

 ブッシュ次期大統領の地元テキサスもフロリダも南部の大農業州である。テキサス州は石油産出で有名だが、コメもとれる。あきたこまちの種をテキサスに持って行き日本向け輸出用米を生産している大規模農家もあると聞く。また、フロリダは、気候温暖のリゾート地である。ニューヨークは雪でも、2時間の飛行でフロリダへ飛べば半そで半ズボンで過ごせる。産業といえば、肥料の燐鉱石とオレンジだった。全農燐鉱(株)を創って農協が資源確保に投資したのは20年前。今では、デズニーワールドなど観光産業が盛んで環境基準が厳しく、燐鉱石の採掘には制限がつきまとい撤退した。燐鉱石を採掘した後には草木を植えて牧場やオレンジ畑にする。グレープフルーツ、イチゴ、メロンなど果物は豊富。8年前のレーガン・ブッシュ共和党政権時代は日米貿易摩擦が深刻だった。牛肉・オレンジの輸入自由化を日本が認めざるを得なかった背景にはフロリダ州の強い輸出志向もあった。ブッシュ政権は中枢に多くの知日家が座ると期待している日本の政治・経済界の人もいるが、農業分野では逆に農産物の更なる輸入を強要されるのではないかと心配になる。
  (金右衛門)



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