農業協同組合新聞 JACOM
   
コラム ―― ひとこと
夏の終わりにひとこと

 暑かった夏も終った。帰省ラッシュは交通手段の多様化で車、新幹線、航空機と分散、不況も加わって混雑は比較的少なかったような気がする。地球温暖化の影響か日本列島何処へ行っても夏の蒸し暑さだけは追いかけて来た。心身健康で家族を連れて田舎に帰る事の出来る人は幸せというべきか。せみの鳴き声を聞き、緑を満喫し、親兄弟、旧友に会い枝豆とビールで世間話。ご先祖さまから孫や近所の噂話まで出る。この自然体がリフレッシュになる。お盆はグリーンツーリズムの一形態。
 そんなある日、長男のため仕方なく家督を相続、田畑を守りながら地元の土木建設会社に勤める同級生の家に昼飯をよばれた。農業は副業とも、専業ともどちらにも取れる。会社には定年後の再雇用で給料は3分の一になっているが、年金と高齢者雇用保険と請け負い耕作と農業収入で生活に困るような事はない。家の前には家庭菜園が広がる。メロン、スイカ、カボチャ、サツマイモ、それに蔬菜類。働き者の彼の畑には雑草のないのが自慢。ずーっと地元に住んで農業を続けているから定年帰農とは技術が違う。
 しかし、彼の家の後ろや村のあちこちに田んぼが土割れの肌を露呈しているところがある。渇水や耕作放置の駄農によるものではない。あれは青刈りの田んぼだという。減反は3割。請負耕作にも減反割り当ては来る。減収だよ。「涙して青き稲刈るお百姓」と彼は俳句に詠んだ。
 食糧庁はコメ政策を需給調整と呼び名を変え、面積100万ヘクタールの減反から青刈りなど生産数量での調整強化に乗り出す意向を示唆している。コメ消費需要が見込めない。米価を維持するため、低コストのためと食糧庁はいう。日本の物作り企業が人件費の安い中国に工場移転している現状が、いよいよ農業にも波及して来た。中国産の輸入農産物の増加が日本農業の空洞化をもたらそうとしている。
 農業予算は、無駄な公共事業に支出するのではなく農家へのコメ、麦、大豆、野菜などへの直接支払いに振り向けるべきではないか。そうでなければ、日本の食糧・農業・農村は生き残れない。農業の担い手も農村に残らない。自給率向上と持続可能な社会を創るには必要経費のはずである。再就職の当てもない都市労働者の一時的な失業手当の増額よりも、農村が困っている失業者を受け入れるぐらいの政治目標を掲げる政治家が現れないものか。苦しい過去には何回となく農村はその機能を果たしてきたのだから。(金右衛門)

 

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