農業協同組合新聞 JACOM
   

コラム ―― ひとこと
貴乃花引退にひとこと

 平成の大横綱貴乃花が去る1月20日、春場所限りで引退した。優勝回数22回。794勝262敗。優勝を重ねた頃は「大相撲終わってみれば貴乃花」であった。仇敵ともいえる外国人力士曙、武蔵丸、小錦もいた。三役から横綱に駆け上がる頃、外国人大型力士に向かって行く細身の貴乃花の闘志が日本の相撲ファンを魅了した。非力と思われた兄の若乃花までが弟の貴乃花につられて連続優勝し、兄弟横綱になった。
 副賞コメ30俵を優勝力士へ贈る全農賞がある。もう30年を超える。コメ消費拡大運動のイベントとして長続きしている。大男、力持ち、大飯食い、JAのイメージが大相撲とマッチした時代であったからだろう。NHKのテレビ放映の効果は大きい。米俵を担ぐブロンズ力士像(25kg)を日本の伝統的な紋付袴(もんつき・はかま)を付けたJA全農会長が表彰状を読み上げた後、土俵の上で優勝力士へ渡す。重いブロンズ像を持ち上げ、よろよろと手渡そうとする、その時、力士は一歩前へ出て軽々と受け取るユーモアあふれる映像は永い間、ファンに親しまれてきている。これには裏方としての苦労がある。
 まず会長のサイズにあわせた紋付袴の用意であり、着替えのタイミング・そして国技館内の着替え場所探しである。次々と行われる表彰順番待ち、出番がくるまで土俵下で待機するのも気を使う。毎場所打ち上げ後、アナウンサー達とも慰労会を持っていた。
 大相撲を肴に議論した。こうして出来上がる全農賞も近頃はTVに映像が映らなくなってきている。全農賞の表彰時になると、三賞受賞力士のインタビューが入り意図的に映像を消す場面がある。公共放送網を利用して民間が商品PRするのはいかがなものかとの意見が放送局内部であったらしい。全農賞がそれに該当すると槍玉にあがったともいわれた。現場やアナウンサー達はJAびいき、長い間全農に好意的であった。映像は映らなくても、会長の声だけは聞こえるように流したり、コメ俵画面をバックに残し力士インタビューを続けたり、現場の好意的な知恵が垣間見えることがある。
 あるNHKアナウンサーが全農賞の副賞「温泉たまご1年分」を取り上げ、「たまごは白星に通じますから力士には縁起がいいですね」としゃべってくれたこともある。公共放送としてはぎりぎりのサービスだったろう。
 20歳頃の若・貴兄弟人気上昇時、チビリンピックのゲストに登場したことがある。親子マラソンのスタート台でヨーイドンのピストルを鳴らす役をした。終わった後、お土産に差し出した日本の農産物、野菜のどっさり詰まった全農の紙袋を「これはありがたい」とにっこりして車のトランクに積み込んで去っていった。アナウンサー達が「これから先10年は大相撲も大丈夫だ」と、貴乃花の横綱誕生を殊の外喜んでいた。リストラの折、JAグループは放送局とも相撲協会とも良好な関係を続けているだろうか。
 「もっと近くに」は、関係先との親密なコミュニケーションも含むはず。JAグループには人間くさい土俵周りの「営業努力」も必要かなと思う。(金右衛門)(2003.2.26)


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