農業協同組合新聞 JACOM
   
コラム ―― ひとこと
ミニトマト農家にひとこと 
菌耕農法にチャレンジする若者

 後継者難の理由の一つに親と同じ農業では後を継ぎたくないという若者が多い。親より進んだ農業がしたい。どうしたら親と違った農業ができるのか。千葉県にミニトマト栽培で成功している若者を取材した。東京農大を2年前卒業し、長男だし、いずれ家業を継ぐのであれば、就職よりもすぐ実践したいと農業を選んだ。しかし、親はまだ50代前半、園芸農家として働き盛り。
 試しに親は2棟あるミニトマトのハウス1棟を任せてくれた。そこでは何を作っても良い。大学で学んだ栽培技術を応用しても良い、好きなようにやれと親は言った。400坪1棟の施設全部、自動給水・施肥、暖房設備も整っている。親と少し違う有機農法でミニトマトを栽培したいと考えた。
 インターネットで無肥料の農法を探すうち炭素循環農法のブラジル人から日本でも「菌耕農法」があることを教えられ、インターネットのホームページを検索してメールした。電話番号を聞いて、詳しく教えをこうた。菌耕農法で栽培すると千葉の砂地でも根が深く入り病気に強い事も学んだ。
 “この農法だ”とぴんと来た。不安を感ずる前にすぐ実践するのが現在の若者らしい。7月ソルゴーの種を播いて腰高まで育ったところで8月緑肥として鋤き込むと同時に、生のモミガラ1トンと切りわら500kgを有機質として土壌改良用微生物資材アスカマンと一緒に土中に埋める。9月にミニトマトの苗の定植、縦一列220本横12列で2640本。チッソ施肥と追肥の自動点滴液肥は慣行施肥。12月から翌年5月まで収穫。受粉はマルハナバチをハウス内に放す。さらに5日に1回はトマトトーンを花芽にかけて受粉を促す。苗の生長に従い、芽掻きと誘引の仕事が入る。最終的には25段にもなるが、高くしないように電線を張り背丈ほどに抑えてある。
 冬でもハウス内は摂氏28度から30度。朝2時間収穫して農協に全量出荷する。取材時は冬場ご祝儀相場で1パック200g200円。東京のスーパーで売値を見たら350円〜400円がついていた。坪当たり粗利益2万円を見込む、1棟面積400坪だから年収800万円になる。20歳そこそこの青年が、生産経費半分と見積もってもネット・インカム400万円はサラリーマンよりはるかに良い。ハウス内での収穫作業は午前中で終了。午後は広い屋敷の親の路地畑の作業を手伝ったり、勉強時間に充てる。
 若い青年に仕事と金と遊ぶ時間があれば、周りの娘達も放っておかない。婚約者ができて近く結婚予定。彼女もミニトマト栽培の農業には理解があるという。お父さんは息子のハウス内には足を踏み込まない。お母さんが時々手伝いに来るだけ。従来農法のお父さんのミニトマトは、有機分が不足気味で息子の味が断然勝っていた。収穫量も息子のハウスが2割方上回る。さらなる栽培技術向上への思いも強く、将来はミニから普通のトマト生産に挑戦したいという。都市近郊という恵まれた地域に親のバックアップがあるとはいえ希望をもった若者が農業に定着するのは心強い。(金右衛門)

(2005.2.8)

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