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コラム
反射鏡

真夏の夜の夢

 酷暑である。寝苦しい夜が続く。夏の暑さは、稔り豊かな秋に期待を抱かせたものだが・・・。
 クーラーの涼をたよりに寝入ったのも束の間、気付いてみると、大会議場のオブザーバー席に座っている。議事はつつがなく進行し、まさにおごそかな最終調印の場である。ライトを浴びている2人。片や民営化なったと言われる郵政公社の総裁、此方は全国農協組織の代表である。

 金融庁の思惑通り金融再編が進行し、首都圏は無論、全国の大・中都市周辺は4つの巨大銀行グループに占拠されてしまった。貯金・貸付・保険の分野から、グループ外の中小金融機関は完全に締め出しをくったのである。また、景気低迷と税収が急減するなか、衆院議員選挙を経て郵政族の大幅な後退をもたらした。このため、拡大を図ろうとした郵政公社の機能は逆に大幅な縮小を余儀なくされてしまった。郵便事業でさえ、間隙をぬって予想外に民間業者が進出をみている。
 この間、いぜんとして太平楽をきめこんでいた農協も、気付いてみると4大金融グループと、これまた巨大化・チェーン化の進んだ流通グループの圧力の急激な高まりに、その存在を問われるにいたったのである。

 驚きあわてた両者は、政治力でと動いたが、最早そんな時代ではない。しからばと、巨大グループが、採算性から進出を見送ったテリトリーで、業務提携し共存を。また資金運用は政府保証を取り付け、共同して財政資金の原資に。との経過から、先の調印とあいなったようである。

 “冗談じゃない野合だ。やめろやめろ”と場外発言したが、声にならない。目が醒めたものの、不思議なことにさほど汗をかいてはいなかった。

 すぐ、眠りにおちたものの、またもや夢路をたどっているようだ。先程と同様、式典の傍聴席である。舞台の上には、テレビでよく見かける脂ぎった政府の要人連が着席している。舞台の下は3つの席に分かれている。左側には巨大漢が居並ぶ。右席には全国農協組織の面々である。中央席にはあまり見なれぬ人達が席を占めている。

 閉鎖体質にもかかわらず、外部から、プロレベルの有能人材導入がゼロに近い大相撲協会と農協への、善意ある政府介入の場であると言う。大相撲の衰退は万人の目に明らかである。その原因を根性不足などにのみ求め、根本問題にメスを入れきれぬ協会の構造改革に政府が腰を入れようとしているらしい。中央席の面々は両者の改革のための民間人とのことである。
 “民間組織に対する行政の不当介入だ”との声よりも、“官僚の天下りでなく、民間人による構造改革だ”と、政府のお節介を支持する声のほうが多いらしい。世論とはいい加減なものである。政府はその支持率アップにもプラスするとみて、本気である。かくて、その合同派遣式を派手に挙行し、パフォーマンスの効果度を一そう高めようとしている。

 “やめろ、農協は外務省じゃねえぞ”と拳を振り上げたが、声にはならない。目がさめたが、汗は先程よりも少なかった。

 真夏の夜の、愚にもつかぬ一瞬の悪夢であったが、翌朝の目覚めは、何故かさわやかであった。 (藤塚捨雄)


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