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コラム
反射鏡

外部発信力の強化を

 経済財政諮問会議でペイオフ解禁の2年延長を決定し、与党もこれを了承する動きである。小泉首相は、“構造改革の推進に向けた政策強化の一環”と強弁し、政策転換を真っ向から否定している。解禁の是非は別にして、説明責任の一端も果たしていない。“株価には一喜一憂せず”と胸を張っていたが、ダラダラと下げ続け、バブル崩壊後の安値をも割り込み、日経ダウ8000円台の低迷である。このことの日本経済に及ぼす影響はあまりにも大きい。道路公団などの局部的な構造改革論議も、委員人事では話題を呼ぶが、内容の詰めはどうもとの疑問が強い。それでもこのテフロン首相は“構造改革は着実に進行中”と、単細胞回答を繰り返す。にもかかわらず内閣支持率は、なんと60%台を保っている。日朝問題の寄与を考慮しても、論外の高率である。

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 この現象を何と解すべきか、単純明快に例の“ぬるま湯の蛙”と見立てたい。経済(フラスコの湯)は熱湯を通り越し、沸騰点にも達しようとしているのに、ノホホンとしているのが、誰あろう我々国民(蛙)である。国の最高責任者の言葉は重みを持たねばならない。パフォーマンス首相の言はあまりにも軽いのである。軽いがゆえに我々の周りを、軽やかにサーと吹き抜けていくのである。気づかずにやり過ごし、後で臍(ほぞ)をかむのは我々国民をおいてない。国民は、もっともっと目を見張り、且つ強く叫ばねばならないのではないか。
 小泉首相のみの責任とは考えていない。高度成長に酔いしれ、ぬるま湯にひたりきった日本社会そのものに、問題が所在するのである。その世相を、彼が代表しながら、一方、鮮やかにそれを操り、得体の知れぬ高支持率を得ているに過ぎないとみるべきであろう。問題は考えない国民サイドにありである。
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 特に、農協・農業陣営には問題認識と雄叫びが必要と感じている。地方回帰の掛け声と別に進む中央集権化。大都市・中核都市中心の経済・産業構造のなかで、農業衰微と農村過疎の進行は今さら言うまでもない。地方経済の育成を軸とする地方振興にこそ、日本経済の将来を託さねばならぬこの時に、あろうことか農村・農業軽視は、さらにその度を高めようとしている。国会議員定数の再配分や区割り変更、公共投資の削減、高速道路建設の凍結、いずれも首都圏・都市地域との格差拡大そのものである。ところが、農協陣営の反対運動の動きは、世間にはほとんど伝えられないし、アピールもしていない。
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 また、農林水産省は「“食”と“農”の再生プラン」の中で農協改革の促進を表明している。なかでも、「農協のあり方研究会」の開催と「農協改革ボックス」の設置の動きをみる時、ここまで行政にやらせていいのかと、おおいなる疑問を感じざるを得ない。このことへの農協サイドの反応は、不勉強のせいか、小生の耳には聞こえてこない。
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 本紙もそうであるが、農協内部での論議の場はかなり設けられていると思う。問題は社会一般への発信である。これがあまりにも小さく、弱く、少ない。大きく、強く、頻繁にと変身せねば、都市住民は誰も耳を傾けてはくれまい。
 地域・全国それぞれでの、外部発信力の強化を祈ってやまないところである。(藤塚 捨雄)


農業協同組合新聞(社団法人農協協会)
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