農業協同組合新聞 JACOM
   

コラム
反射鏡

選手本位が大原則
―オリンピック選手選考で思うこと―

◆すっきりしない選考結果

 テコンドーという知名度の高くない格闘技、そのなかにあって世界のトップ水準にある岡本選手、彼女のオリンピック派遣問題は大変な騒動に発展してしまった。一応の決着を得たようであるが、この間の彼女の精神的苦痛はいかほどのものであったろう。
 女子マラソンの高橋尚子選手のケースもどうもスッキリしない。いまだに週刊誌の紙面は選考経過に関する記事で賑わっている。何故、数回にわたる選考会を開催せねばならぬのか。マラソンはコース、当日の気候に強く左右されるスポーツであろう。それだけに数回にわたればわたるほど、出された結果についての評価・解釈は多岐に分かれ、いらざる憶測をも呼ぶこととなろう。かようなことを関係者は百も承知であろうに、どうして一回の選考大会で一発で決めないのか、これがその時点での強者を選ぶ公明正大、最も公平な方法である。それでも運不運は生じようが、これはもう止むを得ないことである。選手も納得するであろう。陸連などの派遣決定へのかかわりを、極力少なくすることこそ肝要なのではあるまいか。
 そう云えば、これはさほど話題になってはいないものの、事情を知らぬ部外者の感じに過ぎないが、柔道の派遣選手選考も納得がいかない。4月4日の選抜体重別選手権でも優勝者が即派遣選手とはならないらしい。また、100キロ級と100キロ超級については、4月下旬の全日本選手権の結果を踏まえて決定されるとのことである。“これで一本”と言ったスッキリした選考を期待している。

◆誰のための競技団体か

 今回のテコンドーやマラソンの動きを見るとき、競技団体のありかたに強い疑念を抱かずにはおれない。そこで、この際2点ほど所感を述べておきたい。
 第1に、やはりスポーツは、競技者たる選手本位の考えを貫いてもらいたい。○○協会と言った競技団体は選手のためにこそ存在するものである。社会の共感を集める優れた選手の育成により、そのスポーツの普及度は高まり、国民の心身の向上に寄与し得るのであろう。それに徹するのが団体の社会的役割である。
 第2に、競技団体が派遣選手の選考に、競技会の回数を重ね慎重を期すのは、勝たんがため、金メダルを取らんがためと素直に考えたい。競技に参加するなら勝つに越したことはない、それを否定する気はない。しかし、メダルにこだわり過ぎるのはいかがなものか。オリンピックは選手個人へ責を負わせた国威発揚の場ではないのである。

◆選手を枠にはめるべからず

 スポーツに話題を絞ったので、ついでにもう少々。大相撲春場所での横綱・朝青龍の充実ぶりは素晴らしいの一言で、国技発揚への尽力は大なるものがあった。だのにである。横綱審議会において、またしても横槍が入ったとのことである。
 一委員の意見と言うことではあるが、懸賞金は伝統にのっとり右手で手刀を切って受け取れと言うのである。小生からみると、利き手の左手による手刀は、彼の動作の流れの中で活き活きとした一コマと言える。所謂“サマ”になっているのである。伝統も大切であるが、それを超えた目も必要ではなかろうか。時代が選手を生み、選手が時代を作っていくのである。選手本位こそ大原則とすべきである。農協問題を論ずる場合もこの大原則に則るべしと自戒している。 (藤塚捨雄) (2004.4.16)

社団法人 農協協会
 
〒103-0013 東京都中央区日本橋人形町3-1-15 藤野ビル Tel. 03-3639-1121 Fax. 03-3639-1120 info@jacom.or.jp
Copyright ( C ) 2000-2004 Nokyokyokai All Rights Reserved. 当サイト上のすべてのコンテンツの無断転載を禁じます。