農業協同組合新聞 JACOM
   

コラム
反射鏡

農の声を広く国民へ伝えよう
―同時に都市の声にも耳を―

 以前にも少し触れたが共済連OBの仲間で同人誌を発行して楽しんでいる。農業・農協・共済事業にややウエイトを置きつつも、広範囲にテーマを追求しようとの大雑把な方針で出発し、すでに発足後3年近くになる。政治・経済・社会問題を取り上げた投稿が思いのほか多い。内外の紀行文も毎号の紙面を賑わせてくれ、人物論や地方史も力作がひきをきらない。ともあれ多くの寄稿をいただき、次号に分割掲載しても各号が分厚いものとなり、毎回、編集者冥利を味わっている。
 そうは言っても、問題がないわけではない。肝心の農業・農協、さらには共済事業への論及が、予期に反して少ないことである。
 共済事業については、OBに退いた段階での厳しい問題点指摘は、どうもやりにくいといった気持ち、あるいは、抜本的な改革が必然であると予見しながらも、それへ着手せずに終わった想いなどが、筆を手にするのを躊躇させるのであろうか。いずれにしても敬して?遠ざけるといった感じである。

◆農を語ることの難しさ

 農業・農協となると事情が大きく異なるようである。論及したくとも問題が多く大きく、その手掛かりがつかみきれないという苦悶型。いまさら、個人が論じても何の益も展望も生じまいとする絶望派。われ関せずの全くの無関心グループ。原因はいろいろあれど、筆取る人が少ない現実は歴然としている。それでも、毎号若干の誌面を農業・農協に割いてはいるが、問題はその反応で、なかんずく地方に住み何らかの形で農業に関係する方々の受け取りである。掲載内容の水準にもよることが大きいと思うが、おしなべて芳しくなく手厳しい反響である。ていねいな言葉で戻ってきているが、率直な表現に置き換えると、“何かが欠けている、ピンとこない”“実態に疎い都市生活者のたわごとである”“農家はたくましく生きている、いらぬお節介である”ということらしい。

◆農もオープンマインドで

 しょせん、そういうことなのであろう。農業団体のOBといえども都市生活者そのものである。農業者と同じ認識と感情の水準には立ち得ないと思うし、それが当然だと思う。さはされど、都市生活者であれ農業関心派の声も大切なのではなかろうか。農外の声にも耳を傾けてこそ農の発展もとも思うのである。“農家はたくましく生きている”まさしくそうであろう。でも、その一方で農業が衰えてはどうにもならない。都市労働者も、商工業者も同じように厳しいなかを、たくましく生きているのである。農業が国が立ち行く基本と考えているが、他産業と協働してこそ、それが可能とされるのではと思うのである。

◆国全体にこだまさせるには?

 見直された「食料・農業・農村基本計画」が閣議決定された。今後の農政の基本方針であり、内閣総理大臣を本部長とする食料・農業・農村政策推進本部が中心となって政策を推進することとなっている。食料自給率目標を平成27年度45%とするなど、農業への認識と熱意を疑わせる計画ではあるが、国民の多くは計画そのものすらも知らないと思う。新聞などマスコミにも軽く取り扱われたにすぎない。農の重要さは農のサイドから強く叫ばねば国全体にこだましまい。そのためにも農自らの方針をオープンマインドの中で構築すべきでは。農協の課せられた役割は大きい。

(2005.4.15)

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