農業協同組合新聞 JACOM
   

コラム
反射鏡

「小泉強権・暴走解散」に思うこと
―それにしても自民の崩壊と野党のだらしなさ―

 全く理不尽な解散だと思う。これから9月中旬まで連日、総選挙と政権談義のニュースの垂れ流しが続くことになろう。売らんがため、視聴率アップを狙ったマスコミ、知名度を高めんがための評論家などの空虚な予測洪水があふれ出るであろう。いささかもその流れの片隅に加わる気はないが、解散直後(8月8日夜)の所感のみを述べておきたい。

◆理不尽な解散

 それにしても許されざる解散である。やれ「八つ当たり解散」だの「だだっ子解散」などと揶揄されているが、「強権・暴走解散」としか言い様がない。衆議院を僅差で通過したにもかかわらず、一切の修正に応じないとして、衆議院に付議したのである。このことからして異常である。何を目的に立法府に法案を提案しているのか、衆参を問わず、国会の機能をどう考えるかの基本問題である。

◆強権手法そのもの

 ついで、参議院で郵政法案反対者が多く見込まれるとなると、否決されれば衆議院解散とおどし、その方向に暴走する。さらに衆議院での反対投票者は党公認としないとくる。その論拠は単純に言えば、「農政改革は20年来の持論、郵政改革は改革路線の本丸、改革路線賛成だから俺(小泉)を総裁に選任した」、その総裁の言うことを聞かぬ奴は認めない、ということである。抽象的なスローガン段階では、それぞれの考えと期待が混合した賛成であって、これをもって踏絵扱いにされてはたまらない。為政者がとってはならぬ、危険な考えであり手法である。
 例えば、経済成長はどうかと問われれば、マイナス成長や停滞よりましだから、大多数は賛成と答えるであろう。重点分野、そのスピード、促進の手立てから弊害のリカバリーなど具体化段階で意見の相異を来たし、賛否が分かれてくるのである。簡単な道理であるが、これが今の自民党には通ぜず、暴君に追随する議員の多さには呆れる次第である。
 時あたかも、広島・長崎での原爆被爆、8月15日の敗戦放送など第2次世界大戦の結末を思い起こす夏の盛りである。昭和初期から敗戦にいたる軍部指導者の暴走と無定見な追随者については、諸々の立場から書かれた書物に共通して述べられている。今夏の国会劇は、まさにその再現そのものと危惧している。

◆だらしない野党、総辞職を求めるのが筋

 野党もだらしないと思う。民主党の一部にはこの解散は千載一遇のチャンスとはしゃいでいるように報ぜられているが、論外である。解散をそう手軽にもてあそぶべきではない。政府のいう最重要法案が否決されたのであるから、総辞職を迫るのが筋ではあるまいか。
 この1週間、野党党首がどのようにコメントしているか、各一般紙をめくってみた。驚いたことには、選挙対策についての談話等に小さくスペースが割かれているに過ぎない。自民参議院議員の賛否の動向と執行部の動きに大半の紙面が占められて、野党の存在は完全に埋没している。意図的か偶然なのか、小生にはわからない。
 参議院での否決直後に、何故、野党党首3人がうち揃い、行政府の責任者の小泉首相に面談しないのか不思議でならない。面談し「解散反対と内閣総辞職」を強く申し入れるべきである。総選挙後、僅か2年余、単に郵政問題を争点にした自民党内の意見相違とそこから生じた参院での行政提案案件の否決をもって、解散を強行するとは国民の軽視そのものである。野党もだらしなさ過ぎる、敵失による漁夫の利によりかかるのではなく、筋を通した姿を我々に示してもらいたいものである。(藤塚捨雄)

(2005.8.16)



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