農業協同組合新聞 JACOM
   

コラム
反射鏡

のし歩く米国の対日年次改革要望書
―農協共済もターゲットに―

 総選挙結果は自民党圧勝が強くクローズアップされているが、小生に野党のだらしなさと野党ボケというか平和ボケの印象の方が、何層倍も強烈であった。自民党は党の内外に対して危機感と戦う姿勢が充満していたと思う。小泉戦術や小選挙区などの選挙制度の問題などもあったが、そう言った議論を吹き飛ばす自民党のエネルギーというか勢いがあったと思う。
 それはその後の小泉政権と自民党の動きにも如実にあらわれ、憲法問題、基地・輸入牛問題等の対米追従、増税政策の強化など野党はおろか国民の存在など眼中になしといった感がある。それだけに野党の無気力と無責任に対し、小生の胸中は腹立たしさに煮えたぎる思いであり、筆を執ればエンドレスとなるほど憤懣が鬱積している。しかし、それを述べることが本稿の目的でないので、気持ちのみを記すに留めておきたい。

◆タイミングのずれた文春の対日改革要望書記事

 自民党圧勝要因のひとつに内外の新聞・テレビなどマスコミの自民支援が挙げられている。そのために、どこからか多額の資金が投入されたとの噂も流れている。その真偽のほどは、小生にはわからない。
 そういった状況のなかで目についたのが、今月10日に発売された月刊文藝春秋の12月号のトップ記事、警告レポート“奪われる日本”(関岡英之氏)である。その主旨は「米国の対日年次改革要望書に基づいて、小泉農政改革が押し進められた」の一言に尽きる。このことは知る人ぞ知るで、さほど目新しいことではないと思っていたが、そこが小生の甘さで、情報通の多い小生の友人の中でも、はじめて聞いたという人が意外に多いのである。蛇足ながら付記しておくと、関岡氏はすでに文春新書“拒否できない日本”(平成16年4月20日発行)で、年次改革要望書について詳しく述べているのである。その要望書なるものが、郵政法案成立後になって大きくクローズアップされたことになる。
 そこで小生の疑念が生ずる。それほどにニュース性の高い記事が、何故に法案の国会通過後に最もポピュラーな総合誌に公表されるのか、である。また、記事の中にも触れられているが、国会審議の中でも、郵政法案が対日改革要望書に沿うものであるとの指摘がなされていたのである。ところがそれがほとんど新聞やテレビで報道されなかったと、小生は記憶している。
 このテレビ・新聞の取扱い、郵政法案成立後に文藝春秋が取り上げたことをあわせて考えると、資金の流れの有無はともかく、マスコミが小泉自民よりの姿勢をとったといわざるを得まい。逆に野党があまりにも頼りないので、自民党の強権に頼って諸改革を本気に考えたのでは…。

◆農協共済にもせまる改革要望書の魔の手

 その要望書なるものの昨年版(05・10・14)には共済についても具体的な要望が明記されているのである。今年版はまだ入手していないので、昨年版で提起されている内容を要約して紹介しておきたい。「共済は民間と直接競合する各種の保険商品を提供し、日本の保険市場において相当の市場シェアを有している」と整理している。そしてその要因を、金融庁以外の省庁が共済を規制していることに求めている。また、ビジネス、規制、税の面で民間の競合会社に対して共済が大幅に有利であると断じている。
 その前提に立って、全ての共済に民間競合会社と同一の法律、税水準、セーフティネット負担条件などを適応し、同一の競合条件とするよう日本政府に求めているのである。郵政の次は医療問題が槍玉とされているが、共済分野も油断なるまい。総合農協からの信用・共済分離論をはじめとし、いろんな形で、小泉政権は米国の意向に沿った改革という名の暴政をふるってくると見ねばなるまい。何故にそこまで、米国追従をと思うのであるが、対日改革要望書なるものが日本政府にとってバイブル(聖書)化しているのが、現実なのである。(藤塚捨雄)

(2005.12.2)



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