農業協同組合新聞 JACOM
   

コラム
JA共済 あれこれ

● 共済推進のコンプライアンス(続き) ●

 前回に引き続き、共済推進におけるコンプライアンスについて説明します。

7.不当(他社の信用失墜、比較広告)

 JA共済の良いところを強調するために、他の生損保や共済、簡保などのデメリットを並べたチラシを作って配ったりすることは、その内容に誤りがなくても禁止されています。例えば、契約実績とか、支払い能力を表すソルベンシー・マージン比率を比較した表を作って配るなどした場合も、各社の支払能力についての劣後性を強調することになり、他社の信用を失墜させることになってしまいます。
 生損保や共済、簡保など各社の商品を比較した資料配布も「景品表示法」の規制があります。この法律では比較表示する場合は4つの条件を満たすことが必要とされていますが、それは次のようなものです。
(1) 比較広告で主張する内容が客観的に実証されていること
(2) 実証されている数値や事実を正確かつ適正に引用すること
(3) 比較の方法が公正であること
(4) 中傷・誹謗にわたる比較広告でないこと
 この内容をすべてきちんと満たす適切なチラシとなると、実際問題としてほぼ不可能と考えられます。なお、週刊誌や保険関係の雑誌などに掲載された比較記事のコピーを配ったりした場合、責任は配布者となりますので、景品表示法上の責任はJAが負うこととなります。推進に携わる職員は共済・保険に関する幅広い知識と情報を持たなければなりません。そうしなければ組合員・利用者の皆様からの信頼と満足は得られませんが、このようなルールも守らなければなりません。
 
8.特別な利益の供与

 典型的なものとしては、第1回共済掛金の立替があります。「今月はお金がないから来月加入する」などといわれた時、推進担当者が目標達成のため今月中の契約にしたくて立て替えてしまうといった行為です。第1回共済掛金相当額の支払いは、共済契約の大事な成立要件であり、加入者の最終的な意思確認でもあります。立て替え払いは後々契約の取り消しや契約直後の共済事故発生による共済金支払いを巡るトラブルの原因ともなりかねません。保険業法でもこの「特別な利益の供与」を禁止しています。共済の場合は保険業法の適用は受けませんが、このことは同様です。その他「特別な利益の供与」には共済加入の見返りとして、国税庁の通知に基づいた契約者奨励の範囲を超えるような高価なプレゼントや饗応をすることも含まれる可能性があります。

9.本人確認

 最近はいろいろな所で本人確認を求められることが多くなっています。共済契約の場合も「本人確認法」に基づいて、本人確認書類の提出を求め、保存しなくてはなりません。本人確認には、何らかの公的証書を提示しますが、運転免許証、パスポートといった写真がついた物で行い、そのコピーが保存されます。

10.契約者以外の者への契約情報の漏洩

 最近、相次いで企業などから顧客情報が流出する不祥事が発生し、不信感が高まっています。総合事業を行っているJAの場合、まさに個人情報の宝庫ともいえますから、特に注意が必要です。例えば契約者の子供と名乗る人が電話で共済契約の内容を聞いて来た場合、まず、聞いてきた人が本当に契約者の子供なのか、さらには本当に子供であったとしても、契約者本人に契約内容を知らせて良いかどうかの確認を取らなくてはなりません。ただ、契約者が高齢で要を得ない場合などもあり、難しい問題もありますが、キチンと手続きは踏まなくてはなりません。確認の手続きを怠ったりしたままで、個人情報を漏らしてしまって、そのことが原因で、契約者に損害が生じた場合は、不法行為となり損害賠償を求められるケースも生じてしまいます。この場合JA自体の使用者責任も問われます。
 その他、直接聞かれるケースだけではなく、個人情報がわかる書類、伝票とか各種の帳票、台帳などを人目に触れるところに放置したり、置き忘れたりした場合、それが単純な過失によるものであっても「個人情報漏洩」になってしまいます。そのような資料・帳票の取り扱いは十分な注意と適切な管理が求められます。

11.共済の内容についての安易な解答

 共済の仕組み内容は多岐にわたりますし、細かい事項もたくさんあります。契約者は事細かに承知しているわけではありませんから、電話とか何かのついでに問い合わせてくる場合がままあります。その場合いいかげんに答えたり、間違った内容を説明すると、トラブルの原因となってしまいます。なかでも共済金の支払い可否に関する事項については、生命総合共済などの場合は告知事項との関係も発生しかねません。慎重な対応が必要です。

12.その他契約の解除や契約内容の変更

 契約解除や契約者、共済金受取人の変更といった契約内容の変更が、契約者の妻とか子供などによって申し込まれることがあります。このような代理行為は本人の意思と関わりなく行われることがあり、後々のトラブルの原因となるケースもありますので、必ず契約者本人の意思確認が必要です。

 以上、JA共済の推進上のコンプライアンスに関わる事項の主なものについて説明しましたが、推進に当たっているJ Aの担当者はこういった事柄を守らなければなりません。実際に共済に加入する場合、契約者の側から見て「なんでこんなに細かい事まで」とか「なんだかいちいち煩わしいな」とお感じになるケースもでてくるかも知れません。しかし、後々のトラブルの発生を防ぎ、適正な事務処理を実行するためには、契約して頂く皆様にもご協力頂かなくてはならないことがあることもご理解頂きたいのです。 (2004.2.19)

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