農業協同組合新聞 JACOM
   

コラム
つくば山麓 野良だより

稲刈り直前の大型台風!

 8月末、非常に強い大型台風16号が九州地方に上陸。その後、ほぼ日本列島を縦断しながら各地で大きな被害をもたらした。特に西日本では、強風や増水、高潮による災害など、深いつめ跡を残した。自然災害は当然のことながら、人的被害が真っ先に報告されるが、あまり表に出てこない農作物の被害も実に深刻である。収穫直前の稲や野菜の冠水、塩害、強風による果樹や野菜の落下やこすれ傷等々、ずっと作物の育成と共に生きてきたものにしかその落胆ぶりは解らない。毎年、冠水被害に見舞われる地域の河川改修事業がなかなか進まないことにも農家は強い不満を抱いている。台風の上陸は今年6回目で、8月まででは過去最多だという。7月の新潟・福島・福井豪雨などでは、1日降雨量が400ミリもの記録的な大雨となり、中小河川の氾濫や堤防決壊が同時に発生し、住宅地が広範囲に浸水する被害が出たが、この原因は地球温暖化やヒートアイランド現象だけではなく、都市部での降水流出条件の悪化や治水事業の遅れ等も密接に関係していると言われている。

◆野良の話題は、もっぱら米価の行方!

 「今年は1俵1万1000円〜1万2000円だと!」「何…1袋の値段じゃねえのか!」
 農機具や資材、燃料代は確実に値上がりしているのに、米価は前年度の半値近くになりそうだ。
 「もうやめろってことだな!」みんなの吐き捨てるようなやりとりが、あちこちで聞かれる。平年作よりも豊作が予想されるとはいえ、国や農水相の無責任極まりない農業政策や米価の価格操作には憤りを感じるばかりだ。「せめて自分の家族や親類の食う米くらいは自分で作りたい!」と願うのは当然のことであり、またそれが長い間、日本の農業を支え地域を守ってきたのだ。多くの兼業農家が農機具代のために給料をつぎ込んで“百姓を続けてきた”。農産物を国民に供給するという農の役割や、国土の保全・治山治水、定年のない農業の魅力等々…“農”を軽視すれば、必ずそのつけは自分たちに返ってくる。

◆子ども達の輝く瞳に感動!

 40日間も真夏日が続いた記録的な猛暑の夏休み、地元の女子中学生3人が「体験学習」のために元気にやってきた。汗が滴り落ちる暑い午後、カボチャの選別とピーマンの収穫・袋詰め等をしてもらった。そして次の日は朝早くから眠い目をこすりながら朝市の売り子とスーパーの出店に精を出してくれた。陳列棚に値段と生産地(者名)・日付の付いた商品のバーコードを貼りながら、一生懸命売れる方法を考えてくれた。最後に、子ども達の質問の中に、「専業農家が進むべき方向(道)は何ですか?」「日本農業がこれから取り組んでいく課題は何ですか?」「そして私たち、中学生が“食の安全”を手に入れるには何が重要なのか教えて下さい」とあった。食料自給の責任を放棄し、米価の大幅値下げで死活問題に苦しむ農家の気持ちも理解しない国の農政。両者はあまりにも対照的だ。
 体験学習のお礼に妻は「農業は最も身近にありながら、しかも遠い職業です。子ども達の輝く瞳に感動しました。色々な職業に関心を持つ機会は大切だと思います。この体験を是非将来に役立てて下さい」とメッセージを贈った!(茨城県大和村在住、農業) (2004.9.9)



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