農業協同組合新聞 JACOM
   

コラム
つくば山麓 野良だより

桜前線の北上と共に、農作業も満開!
 3月中主役を演じてきた梅の季節に変わり、4月は桜の出番だ。各地で開花宣言が聞かれるようになり、いよいよ本格的な「春の訪れ」である。この時期は多くの人にとって、新学期や新年度を迎えて新たな旅立ちの季節でもある。一方、国では公的年金制度の見直しや、各種税制の改正?による大増税路線がスタートし、庶民の負担はますます強まるばかりだ。そして我が家では、水稲の種蒔き・育苗、野菜の定植・収穫が同時進行となり、何から手をつけて良いか分からないほど忙しい毎日が始まっている。

◆「野良坊の会」の話

 私の集落に“野良坊の会”ができたのは数年前のこと。JRや会社を定年退職した人、大工や石材業が不景気で仕事がなくなり、家でぶらぶらしていた65歳前後の人達、同好の志の集まりだ。彼らは以前から職業を持ちながら休日には田や畑仕事をこなす典型的な「日曜百姓」であった。ところが今では農協のインゲン部会に加入し、市場にほうれんそう等も出荷する立派な「専業農家」として毎日働いている。作業が終わると、地域でとれたイノシシやドジョウ、キノコ、自然薯、野菜等々の四季折々の食べ物を持ち寄っての自慢話に花が咲く。もちろん私もいつもその団らんに参加させていただいている。また昨年、近所に何人かの年輩の方達により、農産物直売所“ことぶき”が開設された。皆一人一人の個性が生かされ、この地域を支えていく上でなくてはならない存在である。

◆逆行する国の政策!

 先日、村で認定農家と農業委員会との懇談会が初めて開催され、さまざまな意見が交わされた。「10年以上認定農家になっているが、ほとんど集まりもなく、メリットがない」「他町村では色々な活動をしており、村の対応が遅れている」「限られた担い手だけで、地域農業を守っていくのは無理、地域崩壊につながる。兼業農家も含めた地域全体の取り組みが必要」。その他、今後の米価や転作奨励金に対する不安。株式会社等の農業参入に対する不安と規制の問題。農地の利用集積に関する農業委員会の役割。条件の悪い農地の利活用の問題。農業後継者の確保や女性の地位の問題等々…真剣な会話が交わされた。
 昨年政府は「農政改革」ということで、新しい担い手論を提示した。その特徴は担い手をごく少数に絞り込むとして、現在の300万戸の農家を40万戸の経営体に縮小・再編するという方向である。一方で2015年までにカロリーベースで45%まで自給率を引き上げることを決めているが、WTO協定による関税撤廃など今の政策を続けていけば、自給率の達成どころか生産農家の激減さえ招きかねない。昨年は米改革の初年度だったが、生産者価格の暴落で生産費もまかなえない水準まで落ち込み、農家の生産意欲を奪った。
 また、農業法人以外の株式会社の農地取得も大きな課題になっているが、これは農地制度そのものの解体につながりかねない。今、全国各地で取り組まれている“地域おこし”の動きを含め、いよいよ日本型農業のあり方が問われている。(茨城県大和村在住、農業 野沢 博)

(2005.4.11)



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