農業協同組合新聞 JACOM
   

コラム
つくば山麓 野良だより

桜前線真っただ中!

 しっとりとした雨の中で、季節はまさに春爛漫! 桜、れんぎょう、椿、ゆきやなぎ、はくもくれん、そして遅咲きの梅の花がいっせいに色合いを競い合っている。つい昨日まで嵐のような土ぼこりをいっぱいに受けた葉の緑も、すっかり洗い流されて輝いている。
 4月初旬、当地方では種籾蒔きのシーズンである。年に一度の大切な季節が始まる。あちこちの大きな田んぼや小さな田んぼが耕され、畦の草刈り、ビニール張り、地域共同の堀さらいが次々に進んでいくのを見ると、やっぱり米作りは“日本の文化”だと思う。そしてどんなに機械化されても、昔ながらの米作りの精神をかたくなに守り続けてきた農民の姿は、やすやすとなくならないと思う。

帰ってきた生き物たち!

 雨引の里と彫刻展が“わがむら”に帰ってきた。今年で10年・6回目を迎えた(2006年4月1日〜6月4日開催)。全国から集まった44名の彫刻家・芸術家の皆さんが、山の中や河川敷、そして田んぼの片隅や神社の中に、“思いの丈”を展開してくれる。私の大好きなイベントである。
 次々に大和橋(桜川)のたもとに、若い親子連れの車が立ち寄っている。そこには『七色の虹の服を着た飛行人』が澄みきった空に、今まさに、飛び立つ姿があるからだ(いしばしめぐみ作)。
 そして羽田山のユズ園も今、すっかり動物たちのオブジェの住処と化した。「いち早く行動を開始したたくさんの動物たち。ゆっくりと、でも確実に前へ前へと理想の地を想って森の奥深く、私たちの知らない新世界へ旅立つ。そこには平等な命がある。そしてともに生きるという意味の大切さがある。動物たちは私たちにそれを伝えようとしているのです」(『明日に向かって』グループ・RA佐治正大他)。
 『植物のかたち』はエンドウ豆が弾けて根を下ろすというイメージ(安田正子作)にぴったりの欅と桜を使った、とっても暖かい作品である。

雨を護る憑代

 「羽田山の南に向く斜面からは、遠く富士まで広がる関東平野の田や畑の景観の西に、赤く美しい夕日が沈む姿が印象的です。山々の縁(へり)、平野の始まるこの稲作の地に、雨を護る憑代(よりしろ)としての龍神の塔を作りたいと想います。私の彫刻にはいつも、目に見えない、大いなる何かが気配される願いを内包しています」(國安孝昌作雨引く里の龍神の塔より)。そしてその道の反対側には村上九十九氏の『龍神』が牙をむいた姿で立っている。人はその昔、まほろばの地にも真神の疾走を見たであろう。「遠い彼方で狼がとびまわっている。眼だけが闇の中で燃えている。両眼星の如く輝く青きガラスの眼で」。たぶん今でもこの先には姿の見えない送り狼がいるかもしれない。みんなで毎日、44の作品から、素敵な夢を見させてもらっている。どうぞお越し下さい。(茨城県桜川市 農業 野沢博)

(2006.4.13)



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