農業協同組合新聞 JACOM
   

コラム 今村奈良臣の「地域農業活性化塾」

改めて思う「地域の内発的発展力」

 山形県の最上地方を久しぶりに訪ねた。変わった、と痛感した。いや、まさにいま変わりつつある。
 新幹線ができたことだけではない。確かに新幹線が延伸されて山形から40分そこそこでいけるようになった。新庄駅はかつての面影をどこにも見出せないようなモダンな駅舎に一新された。また、新庄市の町並みの変わりようにも驚かされた。
 しかし、私がここで強調したいことは、最上地域の農業と林業が、日本の最前線をめざして変わりつつあるということである。
 過日、講演のために全く久しぶりに新庄を訪ねた。演題は「知恵とパワーで花形産業に―国際化の深化と農政改革の推進―」というものであったが、講演のことはさておき、この時出席された方々との懇談の中から非常に多くのことを学んだことについて述べてみたい。
 かつて、私は今をさかのぼる40年ほど前の昭和40年代初頭に、最上地域の農村の現場をたびたび訪ね、克明な調査と農民の皆さんとの話し合いを重ねたことがある。
 記憶に残っている村々を列記すれば、新庄市昭和開拓、鮭川、戸沢、大蔵、金山、尾花沢、大石田、真室川などである。当時の山形県知事であった安孫子藤吉氏が最北地域調査会を設置され、その調査団の一員として農業・農村問題を担当することとなり、若さにまかせて村々を歩き、夜遅くまで酒を酌み交わしつつ、農民の皆さん、色々の組織の指導者の方々と議論を重ねた。その折の調査報告には、最上地域のかかえる基本問題から当面する具体的改善策に至るまで色々と書いた記憶があるが、もっとも強調したかったことは、「地域の内発的発展力」の重要性ということと、「農業ほど人材を必要とする産業はない」ということであったと、いまなお昨日のことのように憶えている。この結論は、その後私が進めてきた各地での農民塾、村づくり塾運動の原点になっている。
 さて、講演の折にお会いした真室川の栗田幸太郎さんはたい肥発酵促進剤「ワーコム」を開発し、これを用いて栽培した米は「ワーコム米」として商標登録もしている。ワーコムはブナ林の腐葉土などの土着菌36種から抽出した酵素と微生物を混ぜて培養したものに木炭やゼオライトなどを加えた資材で、3人の子供の頭文字を取り命名した。その優れた脱臭能力も評価され、最近では山形大学工学部との共同開発でごみ処理機も開発し、全国から注目され引き合いもきているという。栗田さんはかつて私が真室川を訪ねた頃は新庄農業高校生か卒業したばかりの頃だったと思うが、農家の長男に甘んじることなく、足元は宝の山という発想にたち、着々と斬新な研究開発を行い、地域の発展に寄与している。
 いま一人、金山町長の松田貢さんの話に耳を傾けた。全国にその名を知られた金山杉の「地産地消」をめぐる展望豊かな問題提起である。私なりに表現すれば「地域林業の六次産業化」である。金山杉の生産を担う林家、加工する製材工場、住宅などを造る大工、家や街並みをデザインする建築士やデザイナー、地域景観にとけ込んだ家並み・街並み、そこを訪ねる観光客。この循環の中で金山杉に高い付加価値がつき、町内に新しい雇用の場が造られ、町内に活力がよみがえるという構想である。
 いま1つ、なけなしの僅かな時間を活用して鮭川村のバラ農園・熊谷園芸を訪ねた。同村京塚にある第2農場しか訪ねられなかったが、間口24メートル、奥行き99メートルの温室ハウスが5棟整然と並び、グラス・ウールのコンピュータ制御で15万1890本、品種数が43、うち新品種が実に23。同村曲川にある第1農場の7棟を合わせたハウス面積は個人では東日本1位、年間350万本の出荷を見込んでいる。熊谷さんも農家の長男で若い時の長野県茅野でのりんどう栽培の研修が出発点だとのことである。
 ここに取り上げた3つの事例が最上地域では特殊なのか、あるいは地域を革新する多様な動きの一端なのか、改めてじっくり訪ね、調査をしなければならないという衝動に駆り立てられている。 (2004.8.19)



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