農業協同組合新聞 JACOM
   

コラム 日系農協の底力を見た!(7)

鶏卵で絶大な信頼獲得!サン・ファン農協(ボリビア)
米を中心にして経営多角化も



 今回は、ボリビアの日系農協のすばらしい活動を紹介します。ボリビア共和国は、ちょうど南米の中心からやや西よりに位置し、周りをブラジル、パラグアイ、アルゼンチン、チリ、ペルーの5カ国に囲まれた内陸国です。政情は低迷する経済を反映し混乱しており、絶えず農民や労働者による道路封鎖やストが行われています。しかし、混迷する社会情勢にあっても、市民の生活には、貧しいが家族愛に溢れた南米人特有の楽天的な明るさがあります。
 国土面積は、日本の3倍の1億1000万ヘクタールと広大ですが、人口は796万人で日本の6%にすぎません。1人当たりの国民総生産は、1000ドル以下ですから、経済的には貧しい国です。
 錫や金銀、天然ガスなど鉱物資源もありますが、主な産業は、農業、畜産業、織物産業。主産物は、サトウキビ、コーヒー、大豆、牛肉などの第一次産品で、民族色豊かな織物が加わります。
 国土の4割以上をアンデスの高山地帯が占めるこの国で、唯一の平原地帯がサンタ・クルス州で、その面積はほぼ日本の国土面積に匹敵し、農畜産業が盛んです。この州に2つの日系農協があります。
 そのひとつが、サン・ファン農牧総合協同組合です。組合員が109人、管内耕作面積は約2万7000ヘクタールで、南北38kmに及びます。主な生産物は、鶏卵、米、大豆、かんきつ類で、鶏卵の出荷量は、ボリビア市場の35%を超える実績を誇っています。

◆ボリビア鶏卵市場の王者

 サン・ファン農協の主力産品は鶏卵。日産約60万個で、75戸の農家が約110万羽(うち成鶏は80万羽)を飼養しています。養鶏飼料は、全量を組合が取扱い、供給数量は、3万9500トン。採卵鶏用の飼料工場(加工能力は月産3000トン)を整備し、養鶏農家への配達用のトラック6台を保有しています。種鶏場鶏舎も6棟あり、それぞれで3000羽飼育し、孵化場(雌鳥年間孵化能力85万羽)もあり、生産販売の一貫体制を整備しています。
 もうひとつの大きな特徴は、ボリビア最大の水稲栽培でしょう。米の栽培面積は1万3000ヘクタールですが、このうち水田が4700ヘクタールを占め、毎年、農協融資による土地改良により水田が増えています。陸稲と水稲では、単位収量が格段に違うので水田志向が強くなりました。生産量は水陸稲合わせて、籾で4万3000トンですが、水稲が半分近くを占めています。
 大豆の栽培面積も1万ヘクタールあり、生産量は2万トン、農協直営の大豆搾油工場で、月産800トンを搾油製品化し、大豆粕は、すべて養鶏用の飼料として配合されます。かんきつ類は、入植当時からポンカンを栽培し、日系人のポンカンが市場を支配した時期が長く続きました。現在は、ポンカンとバレンシアの作付け面積は1100ヘクタールに減少しましたが、品質が優れているので、州外にも販売されています。最近では、周辺のボリビア人農家が日系人から指導を受け、5万ヘクタールのかんきつ大産地ができました。
 肉牛の生産販売も経営の柱です。飼育頭数が年々増加して、現在は35戸の組合員が、8000頭に及ぶ肉牛を飼育するに至りました。
 サンタ・クルス州サン・カルロス村にあるサン・ファン農協は、48名の組合員によって1957年創設されました(法人格取得1971年)。創立後半世紀を迎えようとしており、現在は組合員109人、出資金495万ドル(5億4450万円、1組合員当たり約500万円)の堅実な農協として発展しました。
 農協職員は、84名(うちボリビア人55名)、工場や諸施設のボリビア人従業員102名、支所は、サンタ・クルス支所とラパス支所があり、それぞれが農協の生産物販売のスーパーを設け、直接販売を展開しています。西沢組合長を中心に近藤支配人、組合長の子息の西沢支店長ら若い経営陣の活躍が大いに期待されます。
(NPO法人国際開発フロンティア機構会長 山内偉生)

(2004.9.15)


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