農業協同組合新聞 JACOM
   

コラム 日系農協の底力を見た!(3)

大豆大産地のピラポ農協
−南米各国の農業と暮らしから−
NPO法人 国際開発フロンティア機構会長 山内偉生



 ピラポ農協は、パラグアイの南東部イタプア県ピラポ市にあり、アルゼンチンとの国境を悠々と流れるパラナ河に接しています。管内の栽培面積は、おおよそ2万7000ヘクタールで、東京都23区面積の約半分という広大なものです。この地域は、移住当初は原生林地帯でしたが、日系人が艱難辛苦を重ねて開発して、現在は、パラグアイでも有数な多作物農業生産の適地としても知られています。
 畑作が主流ですが、ここで収穫される水稲は、ピラポの「こしひかり」として有名です。日系人に非常に人気があるばかりでなく、近年、増加した台湾や韓国からの移住者、パラグアイの市民にも好まれています。
 現在、ピラポ農協の組合員農家は栽培面積が大きく、パラグアイの日系農協のなかで最大の大豆販売量を誇っています。農協所有の約5ヘクタールの敷地内に大豆や小麦の大型サイロ、農業機械格納庫、給油所、宿泊所、独身寮など多くの関連施設があり、ブルドーザー、タンクローリー、コンバイン、トラクターなど大型農業機械を多数保有しています。
 大豆はイグアス農協と同様に、小粒ながら形状も良く、品質も優れているので市場から高く評価されています。大豆作と表裏の関係にある小麦も、国内外から商品価値を認められています。とうもろこし、ひまわりも量産しています。

◆空を見上げ、風の匂いを探る組合長

 組合長の山下年彦さん(53歳、一世)は、大豆・小麦作りの達人として尊敬されています。体躯は小柄で、非常に柔和な印象をうけますが、事を処するに果断であり、物に動じない気概を持つ人物で伝説的な逸話があります。
 大豆の収穫期のある日の早朝、山下さんは、一心に空を見上げ雲の動きを観察し、畑の土をいじり、そして風の匂いをかいでいました。そして、急いで圃場から家に立ち帰るなり、大声で収穫作業開始を指示し、家族とパラグアイ人農場従業員を総動員して、その日のうちに大豆を収穫し、農協のサイロに搬入しました。案の定、翌日から集中的な豪雨がピラポ移住地を襲い、多くの大豆生産者が打撃を受けたそうです。
 ほとんどの農家は、収穫最適な時期には、まだまだ早いと思っていたそうですが、山下さんは、雲、土、水、風など自然や気象の動きに長年親しんできた経験から、豪雨の襲来を予測し収穫作業に踏み切ったのです。日本でも、農村の篤農古老が雲を見てお天気を予測する、いわゆる「観天望気」がありますが、パラグアイの大地に懐かしい篤農家の姿を見る思いがします。

◆将来を見据えた港湾建設

 パラグアイは、南米大陸の中央部にある内陸国なので、ブラジルやアルゼンチンの港湾までの輸送経路が割高になるハンデを抱えています。このことが、大豆、木材、食肉など輸出関係者の深刻な悩みです。
 そこで、運賃が割安な河川を利用した水運に着目し、ピラポ移住地のパラナ河流域のカレンズ地区にある農協所有の土地に、穀物輸出のための港湾施設を建設する投資計画が総会で採択され、2003年度から実行に移されました。幸実総務理事は「当面は、大豆の積出しが目的ですが、将来的には農産物全般の付加価値を高めることを視野に入れています」と抱負を述べています。また、森貝アレハンドロ参事は、農地開発による規模拡大が限界にあるので、「小規模でも経営が成り立つ営農形態を確立することが課題だ」と将来目標を提起しています。この目標を達成するために、7つの実行組合や青年部、婦人部、畜産部、果樹グループなどの生産者組織と挙力して、複合経営の促進など積極的な指導事業を展開しています。
 世代交代が加速し、総会の議事は、日本語よりスペイン語を使用する方が円滑に進むという時代に入ったピラポ農協です。しかしながら、農協の基本的な組織運営方式は、祖国日本をお手本にしており、相互扶助の理念を忠実に実践している農協幹部の姿勢に頭が下がる思いがします。 (2004.7.26)



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