農業協同組合新聞 JACOM
   

コラム 日系農協の底力を見た!(4)

大豆生産の先進地ラパス



 ラパス農協は、パラグアイの南東部イタプア県ラパス市に所在し、前回紹介したピラポ農協とは極めて近い広大な農業適地にあります。アルゼンチンとの国境にあるパラグアイ第2の都市エンカルナシオン市に隣接しているために、農産物の販売面で立地条件に恵まれている関係から、太平洋戦争終結後、戦争で中断されていた移住がはじめて再開されたのが、旧チャベス地区、現ラパス市でした。
 移住当初は、ピラポ農協と同様に、換金作物としてマテ茶、アブラギリ、とうもろこしを、当面の食用としてマンジョカ、大豆、野菜類などを栽培していました。
 この地方で、小麦の栽培を始めたのは、ロシア系の移民で、大豆は家畜の飼料としてドイツ系移民が栽培していました。ドイツの移民から大豆の種子を譲り受け、パラグアイの日系人として、最初に大豆を栽培したのがラパスの組合員でした。野菜、果物、マテ茶など何度も試行錯誤を繰り返しながら、畑作農業の経験の積み重ねと弛みない工夫が実り、今は、大豆と小麦の大産地として地歩を築きました。2000年10月に、合併ラパス農協として創立30周年を迎えて、組合員の二世、三世が占める割合が増加し、日系人の中でもスペイン語での意思疎通が日常的になってきました。

◆重厚なラパス農協の日本語看板

 赤レンガ建物の組合事務所の正面には、パラグアイ国旗が翩翻とひるがえり、玄関テラスの上には、ラパス農業協同組合とスペイン語の看板が白の下地に黒の大文字で彫りこまれています。玄関扉の右横に、ひと際、訪問者の目を惹くものがあります。嬉しいことに堂々たる書体で、墨痕淋漓、「ラパス農業協同組合」と日本文字で書かれた大きな立看板!誇り高い日系人農家の「心意気」と祖国への想いを強く感じます。
 ラパス農協の幹部から、ピラポ農協のカレンズ港湾施設の建設について、パラナ河に近いイグアス農協とともに協力したいという意欲を聞きました。3つの農協が力を合わせれば、10万トン以上の輸出量は確保できますから、非遺伝子組換え大豆供給の有力な拠点となるでしょう。

◆括目に価する農協幹部の活躍

 前組合長の田岡功さん(現日系農協中央会会長)は、ラパス市長(在職20年)や市議会議長を歴任し、パラグアイ国「国家功労賞」を授与されるなど代表的な日系人政治家です。駐日パラグアイ全権大使として日本に赴任される予定です。耕作面積350ヘクタール以上、飼養肉牛500頭の農業経営者で、当年60歳で、パラグアイに帰化した徳島県出身一世です。日本とパラグアイ両国の「架け橋」として今後の活躍が期待されます。
 現組合長の後藤吉雅さん(54歳、一世)は、幼年時代に両親と移住し、現在は大豆と小麦を大規模に栽培し、堅実な農業経営で知られています。長年農協の会計主任として活躍し、歴代の組合長の片腕として農協の発展に寄与してきました。総会でも、若い組合員のスペイン語の質問や意見に懇切丁寧に答え、組合員からの信頼は厚いものがあります。
 若手の経営陣には、農協きっての論客の総務理事の野中孝之さん(46歳、二世)をはじめ多士済々であり、将来発展を見据えた積極的な事業推進が図られています。小麦の付加価値増進のために、近代的な製粉工場を建設し、今年の春から本格的稼働に入りました。ラパス農協の重点課題に「小規模組合員への支援対策」が掲げられ、畜産など畑作との複合経営の導入拡大が計画的に進められています。高橋良美副組合長によれば「永続的農業を営む対策と共に、世代交代という時代の変化に対応するために、3年後には農協のすべての事業がスペイン語で行われるようにしたい」と語っています。そのためには、次世代に対する協同組合精神の徹底した普及教育が重要であると強調しています。
 ラパス農協は、後藤組合長を中心に活性化の道を着実に歩んでいます。
 
 (NPO法人 国際開発フロンティア機構会長 山内偉生)

(2004.8.2)


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